夏を焼きつけて
」のレビュー

夏を焼きつけて

金田力金男

「陽炎がゆれている」と同じ世界線

ネタバレ
2025年3月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ ネタバレしています。

「陽炎〜」で出てきた熱海くんと鴨宮くんの高校がまた舞台の今作。「陽炎〜」では事故で足に後遺症が残り、ヘルプマークを付けて転入してきた熱海くんが主人公でしたが、そのあとがきでは作者のお母様の事故とヘルプマークの事が記されていました。今までの生活から事故後の変わられたお母様の生活を思うと、あの作品に込められた作者の想いを想像しました。そしてこの物語の冒頭に、この本を亡き母へ感謝を込めて捧げます、の言葉にあぁ亡くなられて…と。言葉にしてしまうとそれだけですが、大事な人の死というのは自身の死でもあるのかなと。

陽炎〜の鴨宮くんも三島くんも、身内を早くに亡くしている家庭環境。鴨宮くんは熱海くんがいたから乗り越えたのかなと思いましたが、三島くんの場合は亡くなった母と、会う事が出来なかった弟、自分の為にもと言う父のそれぞれの家族の想いが重なった一瞬が三島くんに伝わって、乗り越える事が出来たのかなと。乗り越えた直後の三島くんを、興奮して良い写真が撮れたと、形に残してくれたのが幼馴染のよっちゃん…という(この萌えよ…)
前触れもなく突然人生が終わった母の、残してしまった家族、特に息子への想いは、わが子が家に籠る姿を見続けて何度抱きしめただろうかと。やっと神社のお祭りで、神様の力を借りて家族のそれぞれの想いを三島くんに伝える事が出来たのかなと思ったら、その案内役は会う事が出来なかった弟だったのかなと思って、ジーンとしました。

作中でも鴨宮くん熱海くんが出てきて、仲良くしている。さらに仲が進展している様な描写を感じて幸せでした。三島くんよっちゃんもそうですが、特別な友達+それ以上…なのだろうかの空気は、エロは全くないんだけど何かを感じて尊いなと思ってしまいます。その何かを言葉にできたら凄いなと思うのですが、三島くんよっちゃんなのか、よっちゃん三島くんと書いた方が良いのか、熱海鴨宮くんなのか、鴨宮熱海くんと書いた方…どちらだったら2人の未来の気持ちにリスペクト出来るのだろうと、悩む感じです。良かったです。
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