このレビューはネタバレを含みます▼
多くの若者が体験する高校・大学受験という戦いを物語の中心に据え、次郎の憧れと恋を通し少年が青年へと成長し始めていく様が見応えのある作品。自立への移行期間入口で出会った受験戦争の覇者は、次郎の前に燦然と輝く。
無知故の無敵を手放し、己の欲望を猿だと非難する次郎。信じていた「自分」が覆され、模索しながら再構築していくこの年代の揺らぎを、丁寧に表現されています。自分の弱さをストレートに突き付ける手厳しいまでの若さ。本質を見抜いてくるような、冷えた視線を感じて好きです。
腹を括った次郎に腹を立てるアキは、人間らしくてとってもキュート。けれど天才なので揺るがない。正直で、何ものからも逃げない、無敵なアキ。かっこよくて男らしくて、かわいい。憧れてしまうのも無理はない。
久方ぶりに読み返してみたのですが、やっぱり先生の作品が好きだし、こんな風に想われるなんて、なんて素敵なんだろうって思います。もっともっと、読みたいなあ。