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今月(10月1日~10月31日)

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シーモア島
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投稿レビュー
  • としのさ夫夫

    たつもとみお

    年の差、だけではない彼らの問題
    ネタバレ
    2025年10月1日
    このレビューはネタバレを含みます▼ もともとゲイではなく、甘いマスクで女性にモテるタイプの在宅ライター潤也(26)と、彼を養う、生真面目で面白味のない会社員でゲイの啓司(40)。

    基本ふたりのやりとりで切り取る1日単位のお話なので、付き合う前の生育歴や詳しい過去は分からない。
    年下彼氏への不安から拗れる感情と、不器用に生きる年上彼氏への愛と支配欲を、ただただ、静かに見ていく。

    家でも会社でも言葉足らずで、口にする言葉には思いやりが足りない啓司。自分に自信が持てなくて、養うことだけが潤也を繋ぎ止める術だと信じている。
    常に潤也を失う未来に怯え、その不安は啓司を不機嫌にする。
    なぜこれ程までに自信がないのか。啓司の過去は、いったいどれだけ彼を傷つけてきたのだろう。

    潤也は愛を伝えるけれども、自信のない啓司には伝わらない。ただ、そんな啓司を可愛くも思っている。
    捨てられた子猫のような年上男性を自分だけが可愛がり、自分だけが愛し、自分だけが言葉ひとつで全てを管理する。
    Sっ気のある静かな行為と、常に逸らさない視線。
    あー、めっちゃ閉じてる。

    啓司を愛し、愛で管理したいタイプの潤也。けれどまだ若いから、上手くいかない時もある。年の差に加え、啓司自身の問題点と潤也の愛し方の方向性が、絡んで爆発して、啓司が潤也と向き合うきっかけとなる。

    言ってはいけないセリフを度々潤也に投げかけていた啓司だけれど、会社での啓司は、そこまで周囲から嫌われてはいないんじゃないかな。ちゃんと部下は早退させてるし、仕事は一人で抱え気味だけど、長く休んでいた社員からの申し出には、助かるって相手に伝えてる。
    潤也へのモラハラ発言も、経済で支えることが唯一の方法と思ってしまっている故で、1・2話での印象は悪いものの、反省すべき点は反省し、のちに改善しようと心を改める。

    5年間何してきたのよとは思いつつ、潤也以外には分かりにくくて独りよがりで、可哀想なところが可愛い啓司。そんな風に思えたのは、潤也の目を通して彼を見ているから。
    潤也も面倒臭くて可哀想なところが可愛いな。そしてあの、指まわしプレイ…。分かってないの、啓司の才能では。

    拗れた愛と年の差夫夫それぞれの問題がリアルで、妙に読み返したくなる作品でした。
  • しましまのシネマ

    のきようこ

    ふらっと行きたくなる、円シネマ
    ネタバレ
    2025年9月21日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ずっと昔から街の片隅にある円シネマ。
    いつもちょっといい感じのラインナップを上映してて、若い眼鏡の支配人が出迎えてくれる。
    そんな小さな名画座が繋げる、少し運命みたいな恋の縁。

    短編形式で5話+最終話+アンコール。
    5話目と最終話は支配人たちのお話で、アンコールは描き下ろしの10ページ。これは4話目のふたり。
    各話、何気にタイトルが良い。
    どのお話も心と感情の描写がリアルで痛くて、状況に飲み込まれていく様は、さりげなくドラマティック。

    第1話目は、怖くて恋愛から逃げた先輩と、先輩の言葉に傷付き、必死にマイノリティの可能性から目を逸らしてきた後輩が再会するお話。高まって終わるラストの、七年越しで…の言葉が、熱い余韻を残す。後輩のわんこ味も好み…。

    第2話目は、高校生のお話。これすごい好き。クラスでは無反応でコミュ能力が低そうな山下の、ガードを下ろした後のギャップたるや。達尚と一緒に終始どっきんどっきん。ださいマークなにあれかわいい。

    第3話目は、別れた二人と運命のお話。先生の大人の余裕と、それを剥がした素の顔と涙ぼくろが色っぽかった。最初の電話の時は、どんな顔してたのよ先生…。
    第4話目は、ちょっと無神経な男と、どこか謎めいた男のお話。ハマっていく様と攻防が面白かった。
    第5話目と最終話は、支配人と社員くんたちのお話。意外性もあって、片想いが切ない。こういう噛み合ってない恋人関係で、ちょっとした言葉とかに想いが透けて見えるの、すごくいい。

    そして最後の最後、カバー下。とても粋で、素敵でした。
    ところで、タイトルのしましまってなんだろう?
    しましま…横断歩道…人々が交差する…人間交差点的な??

    フォローさせていただいている方のレビューで気になって、いつか買おうと思ってた作品。とても良い作品でした。
    それぞれのお話にあるという書けなかったエピソード、ぜひ何処かで披露してください!
  • ともだちが欲しい春生くん 【電子限定特典付き】

    碗島子

    純愛とエロと救いとキュン
    ネタバレ
    2025年9月19日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 友達が欲しくて31年努力中の春生と、気になる人(春生)との距離を縮めたい童貞秋充の、純愛すれ違いコメディ。
    独特な小ネタと空気感で負を包んで俯瞰して、人と違ってても変態でも許される、碗島子ワールドの懐の深さが好き。

    周囲から浮いてしまう春生の不安と孤独にヒリヒリしつつ、秋充のドキドキとエロに恋の始まりを見る。
    受け入れられた春生の期待は、ジャレからイチャへ。
    ちゃんと好きになる過程があって、ちゃんと純愛。
    変態度は比較的マイルドに、エロと救いを同時に味わう。

    ゆったりとした大人で優しい秋充。
    落ち着いていて控えめで、それでいてエロに忠実。
    経験が無い故に、抑えられない欲望は暴走する。
    長めの黒髪に黒いシャツ、恥じらう仕草と想いのこもった表情が、とてもえろ…魅力的。

    番外編など、諸々含めて全254ページ。
    うち、番外編は16+2ページ。めっちゃ気になってた登場人物のお話で、大サービス感あって嬉しい。
    描き下ろしは13ページ。これもたっぷりで嬉しい。
    電子おまけは描き下ろしの続きで、4ページ。
    カバー下に、あとがきとワイド四コマ。

    すっごく面白かったし、楽しかったです。
    もしキュンとツッコミの付箋本を作ったら、おびただしい数の付箋がつきそうなくらい、盛りだくさんでした。
  • イエスかノーか半分か 番外篇

    一穂ミチ/竹美家らら

    よりシリーズが好きになる、スピンオフ
    ネタバレ
    2025年9月18日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 番外篇1〜4は本編のスピンオフとのことで、取り敢えず読まないと先(総集篇)に進めないしな…くらいの軽い気持ちで手に取りましたが。これがもう、びっくりするくらい面白かった。
    番外篇1と2、3と4。それぞれ主役を変え、違ったテイストなので全く飽きない。むしろ深まる。

    仕事への情熱、悩み、努力、成長。同年代のアナウンサーとFDが、同じ番組で関わるうちに信頼して認め合う。
    番外篇1の中で進む若いふたり(竜起と深)の恋は、なんとも勢いがあって微笑ましい。

    明るくて人好きのする竜起のアプローチは、あっけらかんと真っ直ぐで、その攻め方は優しく落ち着いているのに押しが強い。普段とのギャップも、普段と変わらないそれも、嘘のない竜起らしいもので好ましい。
    番外篇1から2へ加速されていくお互いへの熱量も良く、経験の少ない深から漏れる関西弁は破壊力抜群。
    番外篇2で登場する竜起の旧友、コタも憎めない子で、仕事も恋も、展開にわくわくしたし、最後まで面白かった。

    強烈だったのが、お笑い番組ではADをする深の上司、栄。出来る男の拗れ具合が、主役じゃないのに最高にそそる。
    そんな栄の物語は番外篇3と4。
    疲れきった彼の目を手で覆うシーンは、番外篇1の中でも特に印象に残っていたので、俄然、彼の物語が気になった。

    渦巻く世の中の澱のようなものに疲弊していく栄に、どうかこれ以上傷つかないでと祈りながら読み進んだけれど、語られる社会問題も含め、全員が痛みを受ける内容は、とても辛いものだった。
    番外篇3の後半からは采配の小気味良さに夢中で読んで、大人の愛に痺れる。すごくすごく、面白かった。

    信念や情熱を持って働く全員が個性的かつ魅力的なので、最後はシリーズのみんなが大好き!ってなるし、絶妙な塩梅で顔を出してくるシリーズの面々にも心浮き立つ。しかも、自然で邪魔にならない、必要のある登場なのがすごい。

    コミカライズの方の竜起も好きなので、ユキムラ先生の絵で描く栄や深も見てみたい。
    とても読み応えのある番外篇でした。
  • ねこまた。

    琥狗ハヤテ

    5巻から涙止まらず。あとがきも毎回沁みる
    ネタバレ
    2025年9月2日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 江戸時代。おうちに憑くタイプのあやかし、ねこまた。
    家を守り、生活を見守るだけで悪さはしない。むしろ役に立とうとしてくれる。触れないし見えないし、努力の甲斐なく役に立つことはないけれど、本当に居たらきっと嬉しい。

    そんなねこまたが見える岡っ引きの仁兵衛と、仁兵衛に憑いた黒ねこまたのお話。基本四コマ。女性ジャンル。
    読み進めると四季折々の美しさ、京の人々の生活も見えてくる。岡っ引きが同心の私的な手先だとか、副業するとか知らなかった。
    ちなみに仁兵衛は手仕事としてつまみ細工をしていて、彼の作るかんざしは見事なもので女子(おなご)に人気。

    作者さまの『アタリ』を先に読んでいたので、黒ねこまたと仁兵衛の日常にはほっこり(そしてアタリを読み返し、絆に号泣)。他レビュアー様の仰る通り、健気なねこまた達は最上級の癒し。色々なねこまた達がいて、本当に可愛らしい。

    全6巻という巻数に怯みつつ、読み始めてみると、まるで長さを感じない。なのに長年、彼らと共に時を過ごしたような充足感が残る。
    印象的な言葉が多く、「人の怒りの底には、いつも悲しみがある」今の私にはこれがチクリ。
    きっとその時々で、響く言葉が違うんだろう。

    そして、巻が進むと登場する朱鞘の浪人と白ねこまた。
    その忠義と、ままならなさに涙する。
    心優しく穏やかな仁兵衛と、同心寺島や弟子の弥七、その他の登場人物も最後まで良かった。6巻最後はほんともう…。

    ほっこりするだけではなく、日常の愛おしさと寂しさ、それら全てを包む、愛のお話でした。
    その愛は、作者さまから読者へのプレゼントでもあるように感じます。
    疲れた心に安らぎを。矛盾と可能性からは勇気を。
    ねこまた達に癒されながら、のんびり読むのがおすすめです。
  • トーチ【コミックス版】

    ニャオスキー

    完成度の高い連作短編集
    ネタバレ
    2025年8月22日
    このレビューはネタバレを含みます▼ レビューを拝見して1話目を読み、ミニシアター作品のようなカッコ良さに短話買いしたのはつい先月のこと。
    早くも単行本でまとめて読めて嬉しい、ニャオスキー先生の連作短編。描き下ろしまで含めて完成度が非常に高い。
    朝食アンソロジー掲載の『COFFEE AND DONUTS』も収録。未読だったのでこれも嬉しい。

    タクシーにまつわる短編4話。
    それぞれにお題があって、誕生・怪物・結婚・失恋。
    踏まえて読み返すと味わい深い。

    移ろいゆく天気と時間の描写が秀逸な1話目。
    まるでそこにいるかのように物語を肌で感じ、タクシー内での会話劇と人生を絡め、強く印象づけられる。
    2話目は徐々にドタバタとする展開と着地に痺れた。
    繰り返しによる狂気はビ◯・マーレイの映画『恋はデ◯ャ・ブ』を彷彿させて面白い。

    感動と、後悔と、感情を揺さぶられてからの描き下ろしの衝撃。驚きつつも、そうきたかとニヤリとしてしまう。
    失うときは失うし、けれどもやり直すのに遅いことはなく、また1日と生きるのみ。でも、明日はあるのか?
    抱える灯火、受け取ったからには手渡したい。他の方のレビューも楽しみ。おすすめです。ぜひ。
  • ラブリーハイブリッド【コミックス版】

    灰崎めじろ

    とってもラブリー!
    ネタバレ
    2025年8月19日
    このレビューはネタバレを含みます▼ レビューに書かれた背中バッテン胸の謎紐に興味を惹かれて試し読み。確かにこれは何用だ…?と突っ込みたい衝動に駆られるも、読み進めるうちに、似合うからまあいいか、となる不思議な衣装。
    子供たちみんなのお父さん(お母さんでもいられるようにシスター服)の、ダディ神父の影響だろうか。

    ワームハンターのケモハーフ咲太郎と、町医者ナチュラル(人間)真七柄先生のお話。
    荒野に囲まれた王国でワームが主食。王様のいるセントラルと下町街があり、人間と半獣人が共に住む。
    ケモハーフが発情期を一緒に過ごすパートナーを番と呼び過去にはケモハーフをペットにする人間もいたような世界。

    なんだこれ、面白い…!
    貧しい者にも優しい真七柄先生。ゆったりとした口調がクセになる。
    下町街に住む人々や咲太郎の周りの年寄りたちなど、みんなが生き生きと生活しているのがわかる。
    そして咲太郎は素直でエロかわいい。愛する人の息子ちん(子供じゃないよ)に対する姿は何とも言えず愛あふれ、いい子だなあと撫でたくなる。
    耳に尻尾に胸圧に、新しい扉が開いてしまいそうだぁ。

    可愛らしい愛情がたっぷりの、とても楽しい作品でした。
    ふたりの蜜月は幸せいっぱいでいつまででも見ていたいし、読んでて強火ケモハーフ愛もわいちゃってるし、元傭兵のダディ神父ももっと見たい。
    スッキリまとまってて満足度も高く次巻も更に楽しみです!
    作者さまの他作品も読んでみようかな。レビューありがとうございました!!
  • ロマンティック

    西田ヒガシ

    一読では到底、咀嚼しきれない
    ネタバレ
    2025年8月15日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 何度読んでも読み終えたという気持ちになれず、言葉と眼差しの意味を探りながら、幾度となく読み返す。
    生と死と性と、ほんの少しのファンタジー。
    舞台は戦場。愚劣で醜悪で愛を持つ人間が戦う場所。

    動け、生きろの呼びかけに導かれて戦ったジョンは、洞窟でマエダに「歩け、生きろ」と言い、最後はマエダの「生きろ、動け」の叫びと救いに愛と奇跡を見る。
    先生の描く男たちは、情けないところも、どうしようもないところも、それでも立ち向かうところも、全部まとめたかっこよさがある。そしてどの作品も、どこかロマンティック。

    全力で描かれたものは全力で読みたい。が、何となくで生きてきたツケがこんなところにも回ってくるようで、自分の思考力の無さがとても歯痒い。
    何を信じて生きるのかと問われているようでもある。

    マエダがどんどん魅力的になっていき、掴んだ武器を撃たずに放るシーンにグッときた。「命を守る美しい武器はやがて怒りと憎しみの武器になる」ジョンの言葉が刺さる。
  • センチネルバース 水底の虹【イラストあり】

    安西リカ/松基羊

    警察庁特殊部、シリーズ化して欲しい!
    ネタバレ
    2025年8月11日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 警察庁特殊部鑑識課に所属する視覚特化型センチネルの蓮と、そのガイドに選ばれた警察官の吉積。
    高校時代に一度だけ話したことがある先輩後輩のふたりが再会し、共に行動していくことで絆を築く。

    警察組織と、五感が異常発達したセンチネルの特殊能力。これがもうかなり相性の良い設定で、特殊能力を使った捜査過程がそれだけで既に面白い。欲を言えばもっとじっくり読みたいくらい。
    難治性神経疾患として知られ研究が進み、ケアや訓練を受けるセンチネルと、逆に自覚のないガイドの説明も自然かつ過不足なく、予備知識が無くても無問題。
    過敏すぎる五感を持つが故の生い立ちは厳しく、国から保護されている立場からの自己犠牲感は根が深い。そして、そんな彼らを繋ぎ止め助けることができる唯一無二な存在、ガイド。
    タイトルの「水底」が表す怖さ、恐ろしさが、相性の良いガイドを持つことの大切さをより強く感じさせる。

    情緒面の発達が遅いセンチネルの、吉積に対する蓮の変化もいじらしく良かった。結末を辿る寂しく優しい眼差しと、虹の向こうに夢をみる姿と絆には感涙。

    魅力的な設定と人物描写、ストーリー。是非シリーズ化して追わせて欲しい作品です。
  • 葬思相愛

    日尾ねり

    分つまで、互いを愛して生きていく
    ネタバレ
    2025年8月3日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 小さな葬儀社の跡取り史人と、あることから一緒に働くようになる恋人太陽のお話。史人はしっかり者で思慮深く、太陽はその名の通り明るい太陽みたいな人。
    故人を送る彼らのお仕事がメインのお話で、穏やかな葬儀もあれば、そうではない葬儀もある。仕事としてそれらの葬儀に関わる中で、彼らの愛と思いやりを感じていきます。

    1巻では残された家族と故人の絆、大事な人を送るそれぞれの気持ちに寄り添います。ふたりの出会いもいい話…。

    2巻は未来への思いと、生きている者にできるのは何かということを、確執を通して考えさせられます。
    後半の亮平さんと雪弥さんの話は本当に心が痛く、本当にショッキングで。ただ、そこから太陽が前を向き、安心できる人として隣にいようとする姿に救われました。

    避けては通れない、でも普段は忘れていることを、彼らの話を読むことで考える。
  • ルームメイト

    佐藤アキヒト

    鳥籠の中の小鳥みたいに。
    ネタバレ
    2025年7月30日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 脅かさないよう丁寧に、そっと扱わないと逃してしまいそうな、少年たちの繊細な恋。
    パブリックスクールの4年生でルームメイトのノアとカイ。格式と伝統のある寄宿学校に通う、裕福な子弟。
    品があり優秀で、両者ともビジュアルがめちゃくちゃに良い。その上、問題児と優等生の同室設定。
    これはもう、絶対に好きなヤツ…

    次巻へ続くからと自分に待てをしていましたが、もっと早く読んでいても良かったかもしれない。
    時間を掛けて1巻を味わい、雑誌購入の誘惑と戦い、いっそ負けて買い始めてしまうのも良かったかもしれない。

    大人になったら絶対に色気美人確定なノア。俯き加減な、美しい者にしか許されない仕草と髪型(個人の見解)が、どことなく儚さとミステリアスさを醸し出す。
    対するカイは、無口で口数が少ない分、視線で語る。

    知りたい、頼られたい、自分だけという優越感。
    そしてふたりに共通する、特別な存在への期待。
    腹を割って、からのシーンは、真っ直ぐさと危うさのバランス加減にやられた。

    監督生アレックスが頼りになる上級生として描かれているので、ノアへの接し方など、カイの少年っぽさがより際立っているように感じます。
    しかし、カイ・エヴァンス。
    彼はきっと一年ごとに目覚ましい成長をみせてくるタイプ。
    パンのあれや、浴室でのあれ、触れるほど近い指先も、全部分かっててやってるよね!?
    さすが、フォークが転がってもエロいお年頃。

    大きなコマでの魅せ方も素敵で、馬まで美しい。
    クレー射撃にフェンシングなど、美しい絵で描かれた細かいパブリックスクールぶりがたまりません。
    次巻も楽しみにしています!
  • 【単話売】おまえの吐息を奪っていった

    早寝電灯

    インビジブル・ラブ、とな
    ネタバレ
    2025年7月25日
    このレビューはネタバレを含みます▼ お待ちしておりました新連載。なんと1話無料配信ということで。手に取りやすいですね。ありがたい…。

    私事にはなりますが、怖いとトイレに行けなくなるタイプです。家で独りで寝る時は、もちろん電気をつけたまま。いい大人がとは思いますが、怖いものは怖いのです。

    本作は幽霊が見える依良(いら)と、見えていた玲志のお話。当然それらの描写が多々あります。
    全然ホラーではないと先生もおっしゃっているように、1話では怖い幽霊、というより動くとちょっと怖い黒い影。見える依良は、“あの人たち”と呼び、通り過ぎていくだけだと語ります。

    早寝電灯先生は、幽霊というものへの眼差しも、どこか慈しみのようなものがあり、ひと味違う。
    ふたりのことも気になりますが(当たり前)、幽霊が見える人の世界をどう見せ、どう捉えさせてくれるのか。
    そこにも、すっごく興味がわいています。

    同じものが見えていたことに特別な繋がりを感じていた玲志。要領は良さそうだけど、時おり眼差しが暗く、その笑みもどことなくニヒル。
    対する依良は人当たりが良く、そもそも幽霊に負の感情を抱いていなそう。1話の最後も、なるほどねという展開でしたが、2話以降どうなっていくのでしょう。楽しみです。
  • 彼女と彼女の猫

    新海誠/山口つばさ

    詩的な描写が美しい
    ネタバレ
    2025年7月24日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 山口つばさ先生作画の青年漫画。諸々含めて166ページ。原作は新海誠氏の短編アニメーション。
    猫の目を通して彼女を見つめ、その孤独に少し触れる。

    空気の詰まりと雨の湿度を感じながら、彼女と彼女の猫との一年を眺める。一生懸命に生きる彼女の姿は、きっとどこかで読み手と重なる。

    アニメーションと違うのは、友人や同僚、母親とのことがもう少し詳しく加わること。より痛みの描写が強く、救いの場面も用意されている。どちらもそれぞれ、素晴らしい。
  • 君は春までぼくのいぬ 【電子限定特典付き】

    劣情

    青く匂い立つ紅色の熱情
    ネタバレ
    2025年7月24日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 激しい情熱の青さが眩しい、高校生のオメガバース。
    パワーバランスが絶妙で、なんとも可愛らしくて推せるふたりです。

    生まれ持ったものに振り回されながら、自分を受け入れ成長していく思春期。そこにαやΩが条件として加われば、問題は更にデリケートなものとなり、周囲の対応はより慎重さが必要となる。
    御園家のそれも、藤波家のそれも、故意ではなくとも少年の心に影を落とし、大きく影響を与えてしまった。

    変わらずにいたかったという言葉に込められた藤波の複雑な心情は、たとえ賢く強い彼だとしても少年が抱えるには少々重い。バースからは逃げられない事実と、兄妹の手を引いて逃げた母のことを思えば、きっと尚更。
    消えかけた藤波の身体も心も救ったのが、運命であり犬となってもなぜか品を損なわない御園の人間性。上に立つ者ゆえの傲慢さはあるが常識を持ち、強引だけど待てもできる。育ちが良く素直で忠実、そして実行力を持つ男。

    感情の狭間を惑う不安定さと、それに足掻く青さが、会話と仕草からひしひしと伝わってきます。彼らの放つ真っ直ぐな言葉と、本能と欲望と恋の入り混じった熱情の魅せ方がとにかく印象的。

    お互いがお互いを変え、後半は二人の魅力が倍増。ツンなところもダサいところも全部が可愛くて、かっこいいと可愛いが交互に顔を出してきます。
    情熱的な絡みやお決まり事のアレコレも、どこか可愛らしいのは彼らならでは。重い部分も重くなり過ぎず、その辺りのバランスもお見事。

    ラストもとても綺麗で、紅雄の涙が可愛すぎる。青の姿も美しい。その数年、どうか何処かで見せていただけないでしょうか…。
  • ゴンドワナの眠り

    青井秋

    とても美しくて、とてもきれい
    ネタバレ
    2025年7月21日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 博物館で出会った、宙を泳ぐ一匹の魚。
    不思議な、運命のような出会いに導かれ進むふたりの物語。

    透明感があって落ち着いていて、絵もお話もとてもきれい。
    優しい直樹の魂は宝石のように美しく、基の想いは一途な強さが美しい。少年たちの恋は淡く、泳ぐ魚の願いを探すことで、その距離を縮めていく。

    化石の話がとても素敵。強く求める気持ちが肉体を失っても残るとしたら、そしていつまでも隣り合い眠れるのだとしたら、とてもロマンがあるし、憧れる。
    基を不可思議なモノから守る眼鏡を通しても見えるそれらは、きっと強い記憶だからこそ、ふたりを結びつけ、基の心も救われた(眼鏡越しのホクロに、涙を拭う指が触れるのたまらない)。

    泳ぐ魚の描かれ方が、本当にきれいなんです。直樹のそばを泳ぐそれも、存在に全く違和感がなくて、時に印象的で。読み終えてからまた表紙を見ると、その美しさの意味に感動します。とても素敵なお話でした。
  • 「彗星少年」番外編集【電子限定版】

    ツブキ

    ああ、これこれ!
    ネタバレ
    2025年7月18日
    このレビューはネタバレを含みます▼ お久しぶりの司郎さんと耀(アカル)くん。めちゃくちゃ面白くって勢いがすごい!一気に作品世界に戻りました。

    過去の全員サービス小冊子(8ページ)
    過去の特典ペーパー(ア◯メイト1枚、共通店舗1枚)
    過去のコ◯コミスタジオのリーフレット(2ページ)
    今回の新作描き下ろし(9ページ)

    宇宙人っぷりも年齢差も笑わせていただきました。描き下ろしは「第二のライバル」。嫉妬に笑い、強いワードに二人の絶対的な結びつきを感じました。第二のってことは、第一のは本編描き下ろしで妬いてたあの人のことかな?
    いやあ楽しかった。ツブキ先生と編集部さま、配信ありがとうございます!!司郎さんの小説が読みたい欲までまた湧いてきちゃいました!
  • 「主人公にはなれないけど」番外編【電子限定版】

    桃子すいか

    諸々含めた35ページ。大満足!
    ネタバレ
    2025年7月18日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 番外編ということで、ネタバレ増し増しレビューです!本編結末を知らない方はご注意を…。

    描き下ろしの冒頭にでてきた、お揃いマグの購入エピソードから始まる恋人編。こんなに早く続きのアレコレが読めるとか、本当に嬉しい。文哉の◯攻め、幼馴染っぽい!笑

    一花ちゃんのアドバイスから海斗が実行したあること。文哉の本音を聞きたくて…。海斗の気持ちが大きくて、経験豊富な彼の方が必死感と初めて感を出すの、すごく良い。
    とても可愛い番外編です。有島さんがまた、いいタイミングでいいことを言う。有島さん好きだなぁ。その落ち着きに癒される。いつかとびきり、幸せになって!
  • くちべたとさえずり【電子限定描き下ろし付き】

    髙木綿

    なんて優しくて、可愛いお話
    ネタバレ
    2025年7月18日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 頭の上にインコを乗せて、背中を丸める大柄男子の後ろ姿と、そちらに耳を傾けるキュートな男性。
    そのとても可愛らしい第1話目の表紙と、年下インコ攻めという何とも気になる言葉に興味を持ちつつ購入。買ってよかった。インコも二人も、すっごくかわいい。

    バイトの後輩有川くんに、近ごろ避けられているようだと気にしている槙野さん。ふんわりとした、キュートで優しい男性です。困っている人がいたら、至極自然に手を差し伸べる人。そんな槙野さんが好き過ぎて不自然な態度をとってしまう有川くん。不器用で純朴で、そんなところがすっごく可愛い。無口で大柄で温厚で、優しい眼差しを持った人。

    有川くんの飼っているインコを槙野さんが預かることになるのですが、このリップちゃん、全編通してなかなかのご活躍ぶり。無口な主人に代わり「マキノサンスキダ」とか言っちゃうし、二人の仲を深めていく様はまるで幸せの青い鳥。

    距離が縮まってはまた離れていく有川くんは、何だか本当に小鳥みたい。槙野さんの優しい手に触れられ、包まれていく幸せな姿には、こちらまで心が温かくなります。槙野さんに比べて大きな有川くんの手も、ぎこちなさが色っぽい。悲しい場面も幸せな場面も、様々なシーンで二人の手が感情を語っています。
    キュンも甘々もたっぷりで、とくに後半は身体の大きな有川くんの良さがめちゃめちゃ発揮されます。
    腹筋はもちろん、逞しい腕の筋肉と上半身。肩の厚みと肩甲骨と、背中の色気が素晴らしい。そしてご立派(槙野さんの両手で受ける重量感よい…)。
    絵が本当にお上手だあ。

    リップちゃんのいる各話の表紙が素敵なんです。描き下ろしは6ページ。そして電子限定特典3ページ、リップちゃんが二人を見ている笑。他の言葉を覚える日も近いのでは…笑笑
    作者さまの醸し出す、人柄の良い、優しい雰囲気がとても好き。今後も楽しみな作者さまです。
  • マナビノクニ

    四宮しの

    すくすく学んでいく男の子たち
    ネタバレ
    2025年7月16日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 四宮先生の繊細な絵と作風が大好きです。
    読み始めは分かり辛く感じる部分もありますが、これは誰で、それはどういうことかな?と読んでいくと、弱い糸がいつの間にかしっかりと織り込まれていくかのように、やがてそれぞれの物語が見えてくる。分かりやすさと説明を求めると壊れてしまうものもあると思うので、行きつ戻りつ読んでいます。

    少しのんびりした男の子・シゲルが人違いで連れて行かれた場所は、自分とそっくりな男の子がいる一軒家。そこは個性豊かな男の子たちと、優しい先生のいる塾で…。
    私塾に通う男の子たちのオムニバス。
    小宮山先生の人柄もあり、学ぶのは勉強だけではなく、他者との向き合い方や自分との向き合い方だったり。先生が直接教えるというわけではなく、彼らの成長を守るための大切な場所を提供している、という印象。

    シゲルとミオの小さな恋は可愛らしく、幼馴染たちの変わりゆく関係性と変わらない関係はとても優しい。
    日常の中の、ちょっとした成長の兆しや、何かに気が付くその瞬間に魅力を感じます。二見くんと小宮山先生の過去のエピソードや、大人の都合に振り回される子供の姿にはハッとする部分も。

    描き下ろしは少し大人になった彼らの、とある1日。みんな元気なようで嬉しい。
  • 春のデジャヴに踊れ

    おどる

    パートナーがいることの幸せと奇跡
    ネタバレ
    2025年7月13日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 手を取り合い、相手と向き合い、未知の方へと一歩を踏み出し、進んでいく。ダンスも恋愛も。

    話を聞いてもらい教えを乞うても、どう生きていくのかを決めるのは大人である自分自身な訳で。けれど導いてくれる人がいるからこそ、1人では行けないところまで行くこともできる。同性との恋愛がもたらす問題と、相手の未来を誠実に考え、覚悟と責任を持とうとする二人がとてもかっこよかったです。

    大人がちゃんと大人だと本当に安心する。
    謝る晃介に向けた父親の咄嗟の一言は、親として目指す姿の最高峰。晃介は両親の愛情を身体いっぱい浴びて育ったんでしょうね。先立たれていても、当たり前のように「母さんも」と口にする。この二人も、とても素敵なパートナー。
  • 主人公にはなれないけど

    桃子すいか

    絡みあった恋愛群像劇
    ネタバレ
    2025年7月11日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 諸々含めて300ページ超えの、登場人物5人を巡る片想い。
    桃子すいか先生のやわらかいタッチで、しんどい恋が優しく誠実に語られていきます。
    誰と誰がどうなるかのネタバレは、知らない方が断然、結末の温かさに感動すると思います。

    祖父の喫茶店を手伝う大学生の文哉くんには、人生の宝物のような幼馴染が二人いる。可愛くて聡明でパキパキとした女の子の一花ちゃんと、身体だけの相手が絶えなかったイケメンモテ男、海斗。文哉くんは人のことをよく見て、よく気が付くタイプの優しい男の子。三人とも、相手との関係を大切にしてきたことがよく分かる、とても素敵な幼馴染。
    そこへ加わるのは、海斗が大学で知り合った明るくて気のいい先輩の諒くんと、喫茶店常連で建築士の有島さん。有島さんは学生たちと比べて少し大人な分、言葉掛けが優しく、分別と良識のある頼れる男性。いつでも文哉くんのことを気にかけてくれる、心の大きなひと。

    胸がぐちゃぐちゃになるような恋愛は、物語として読むのにもエネルギーがいる。でも読み始めたらあっという間。一花ちゃんの視点回では各々の人物像がその解像度をぐんとあげ、また、有島さんの立ち位置的な切なさと想いを感じる場面では、グッと物語に深みが帯びた。それぞれの片想いが絡み合うさまに、ぐんぐんと引き込まれていってしまった。ひとりひとりの感情がとても丁寧に描かれているので、それはもう、表紙の三人の、誰が主人公でもおかしくないと思えるほどに。

    育ってきた環境が与える影響は誰にとっても大きく、愛にまつわるそれらは時に呪いのように纏わりついてくる。優しいだけではない恋愛の側面と、しんどい内容にたまらず涙する場面もありましたが、後味が優しく爽やかなのは、この作者さまならでは。
    読み応えのある、温かい、愛のあふれる作品です。そしてあのカットから始まる、描き下ろしが秀逸。おすすめ!

    ※番外編読切が7/18に配信。こんなに早くその後が見られて、とても嬉しい!
  • トーチ

    ニャオスキー

    連作短編 ※追記
    ネタバレ
    2025年7月8日
    このレビューはネタバレを含みます▼ レビュアーさま方のオススメを受け、連作短編の第一弾を拝読。オススメありがとうございます!

    同級生と再会したタクシーの中で進む会話劇。
    変わっていく天気が小さな音を立て、現在と過去の時間の流れを肌で感じさせる。
    読み終え、タクシーのテールランプを呆然と見つめる。
    様々な感情が静かに渦巻き、心地良く感傷に浸る。

    これはまとまるのを待っていられない。
    今すぐ他の話も読まなくては。

    夜のタクシーとバックミラー。視線に痺れる。
    表紙かっこよすぎるでしょ!

    ※ってことで単話を購入。舞台は様々。四話が連作の最終回だそうて。めちゃくちゃカッコいい、後味に痺れる良作短編ばかりでした。[追記終]
  • 死神

    ヤマシタトモコ

    煙が漂う先にある死
    ネタバレ
    2025年7月8日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ヤマシタトモコ先生の女性ジャンル。読み切り前後編。
    幾つかの死のまわりを彷徨いながら読み進む、自分の目線も死神のようだと思ったり。断片的で暗いうえに答えもなく、暴力的描写もあるので読む側によって好みは分かれそう。

    いなくなった夫を探し続け、死神と呼ばれる女。
    眠りと死の境目があやふやな疲れきった男。
    怒り?衝動?を秘める女。
    見ぬフリをしている自業自得な男。

    皆すぐに忘れる。疲れてるし、隠し持ってるし、見ないフリもする。でも忘れないこともある。
    不安定さが読んでいて辛い。

    祈る人と、翻訳できないと言った彼の言葉にどんな意味があるのだろう。むずかしいっす。でも好き。暗いし辛いけど。
    長編の前ふりだったらすごくカッコいいなとも思う。

    表紙など抜くと前編32ページ、後編44ページ。
  • Qの婚姻

    小石川あお

    愛蔵版を出して欲しくなる
    ネタバレ
    2025年6月29日
    このレビューはネタバレを含みます▼ きっと豪華な装丁と装飾が映え、愛おしい一冊になると思うから。でも電子でも充分愛おしく、泣いちゃってなかなか読み返せない。

    描き込みが細やかで美しく、世界観が確立されている。
    なによりキャラクターが魅力的。一途な勇者とキュートな魔王の、恋は乙女のように清らかでいじらしい。賑やかす魔王軍たちも見ていて飽きない。

    若くて優しい勇者には、フルールドリスの紋章があしらわれた小粋な衣装が良く似合う。宝探しの旅には心が躍り、待つ身の魔王のあれこれには自然と頬が緩む。

    やがてある出来事に焦点があたり、ひとつの結末へと物語は加速していく。少しずつ近付くそれを前に、ただただ息をひそめ、ページをめくる。

    物語に身をおき没頭する時間の、なんと幸せなこと。
    皆様のレビューを読んで、またじわり。
    登場人物のあの人もこの人も。物語のあの時のそれもこの時のそれも。全てが愛おしい、そんな作品です。
  • スイートハプニング【ペーパー付】【電子限定ペーパー付】

    kanipan

    あららら。これはなんと…かわいい…
    ネタバレ
    2025年6月26日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙が可愛くて目に留まり、kanipan先生だしどんな感じだろう、と試し読み。え、高校生めっちゃ可愛い…。想像以上に軽やかで、気負ってなさげなところがいい感じ。飼い犬のノリノリドッグ(いちたろう2才)も春日くんも可愛いすぎて、そのまま購入させていただきました。

    落ち着いていて優等生っぽいけど、何ごとにも柔軟に対応できる柊木くん。程よい軽さも持ち合わせつつ、間違えないよう慎重に考えながら、一目惚れ相手の春日くんとの距離を詰めていきます。中高一貫から外部受験して進学高校に入る辺り、周囲の子たちよりも自立をしていそう。
    派手な見た目の春日くんは、意外とのんびりとしたマイペースくん。積極的に勉強するし、あまり落ちこぼれ感はありません。人見知りだけど仲良くなると距離感近くて、ノリノリドッグのこと言えないじゃんってくらいに人懐こい。不器用で無防備で、なんとかしてあげたくなるような可愛らしさがある。先生のXに載っている設定資料の、お昼寝用ひつじの持ち運び方も、ぽくて可愛い。

    高校生らしいイベントが続く中、柊木くんの気持ちを知っている春日くんは自分の立ち位置に迷いを感じ始めます。友達なのか、違うのか。それは下心のある柊木くんも同じで。友達としての距離感と下心が、それはもう悩ましく、ふたりの前に立ちはだかる。

    学校のこと、家のこと、お互いのこと。上手くいかない時もあるけど、ちょっと踏み出せば違う景色が見えてくる。印象的だったのは家庭教師の先生に相談した時の会話。この時の先生の言葉は、すごくストーリーに効いてくる。相談する相手を選び、相談した上で考え行動するのも、ひとつの才能のようなもの。高校生の柊木くんは、きっと大人になっても頼もしい。

    感情の揺れが初々しいのは、ほんの少し前まで中学生だったから。けれど、大人になりつつある高校生らしさも、きちんとある。この微妙な加減が大変上手だなあと思いました。描き下ろしもそんな目でみると、付き合い始めの距離感が非常に微笑ましい。番外編とか出ないかな(願)。

    少しずつ近付いていく二人の、とても素直で眩しい恋でした。
  • 緑の風に君をひらく

    青井秋

    作品の中を、緑の風が吹いている
    ネタバレ
    2025年6月25日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 作者さまの素敵な短編集を読んだ勢いで、発売後すぐに(心のこもった熱いレビューを参考に)購入しておきながら、いつまでも読めずにいたこちらも読破。

    うっわ、すっご……。めちゃくちゃ絵が美しい。他のレビュアーさまも書かれていますが、素晴らしいとしか言い表せない。人物もお庭も、細部まで丁寧に描かれている。魂や命が宿ってしまいそうなほどに。
    そして庭師の錦木さん。逞しい身体と精悍なお顔付きでありながら、その鼻の上には可愛らしいそばかすが。え、好き…。本来は色白なのかしら?それとも紫外線を多く浴びるから?どちらにしても、チャーミング。お仕事ぶりも細やかで優しくて丁寧。木や鳥を語るその知識、いつまででも聞いていたい。

    家主で児童文学の小説家である倉岡さんは、錦木さんの話を聞くうちに彼自身にも惹かれているように見える。知りたいという気持ちは、倉岡さんにとって好ましく思うもの、というか。繊細だけれど思い切りがよくて、ミステリアスだけれど何処か可愛らしい。ちょっとしたすれ違いがあるのですが、その時の取り消したスタンプ?も可愛すぎて…。錦木さんも倉岡さんも、好きだなあ。

    ふたりで話すシーンが、とにかくゆったりとしていて、すてきなんです。特に好きなのは、倉岡さんの作品を読んだ錦木さんが感想を伝えるところ。一連のやり取りとふたりの言葉が本当に良くて。素晴らしい作品を読んだ時の気持ちって、こんな感じですよね。

    絵も素晴らしいけれど、言葉も素晴らしく、美しい。錦木さんと言葉を交わすうちに少しずつ変化していく倉岡さんが書き上げた灯台守と旅人の物語。それはハッピーエンドだけど切ない終わり方のものではなくて。うわー、すっごいすてき。

    ふたりのやり取りがとても丁寧に描かれているので(胡桃とガラスペンとか、すてき)こわばらなくなったら、のその先も見てみたい。きっと、情熱的で美しいだろうから。
    ですが、幸せなキスシーンと可愛らしい赤面で、こちらの胸もいっぱいです。とても素敵な作品でした。おすすめ。
  • 百草の裏庭

    青井秋

    とても素敵な短編集
    ネタバレ
    2025年6月25日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 美しい絵から、静かな言葉と行間から、深い孤独と相手を思いやる心がじわじわと滲み出ている。
    BL感は、ほんのりと。優しさで孤独が解けていくような、とても心地の良い作品集。

    特に表題作は好みの世界観。異形の男と黒い森。彼の庭に生える薬草と書庫にある沢山の本たち。独りで過ごす長い時間が、微笑みの気配で塗り替えられていく。誰かの言葉を見るだけではなく、知りに行くことで自分の正解が見えてくるんですね。兄妹のそばかすも、めちゃくちゃ可愛いかった。

    短いながら『stalks』のふたりも印象深い。最後のページに描かれたカンナの種や、言葉の意味を考えながら読み返すと、静かな中に切ない衝動と激しさを感じて、なんとも言えない気持ちになりました。

    ページ数に添えられた草花も、ほんとに素敵。レビューに惹かれて購入していた作品です。色々な方のレビューを読んで、より深く作品を読み返せたように思います。本棚の中で随分寝かせて季節が変わってしまいましたが、夏の元気な植物を前にして読むのも良いものでした。
  • ズタズタの腕にキス 【コミックス版】

    サノアサヒ

    2回くらいならやりなおせる
    ネタバレ
    2025年6月21日
    このレビューはネタバレを含みます▼ そうか、人生はあの野菜だったのか。なんだか勇気が湧いてきた。

    オーキャンで見かけた高校生に一目惚れをしてしまった人見くんと、無事入学してきた新入生の茅ヶ崎くん。入れ替わりに卒業していた就職浪人の人見くんは、お金を払って新歓に潜り込むという荒技で茅ヶ崎くんの近くをウロつきます。始まって数ページから既に様子がおかしいという、私がサノアサヒ先生に求める面白さが全開で嬉しくなってくる。

    容姿にコンプレックスを持つ人見くんの両腕にはリスか跡があり、無難を目指している茅ヶ崎くんにはキューアグ性癖がある(キュートアグレッション、知らなくて検索しました。猫の耳を甘噛みしたくなるような衝動と同じだろうか?実際には噛まないけど)。こういった闇になりうる部分を、先生の作品はいつも最終的に全部ひっくるめて個性として扱ってくれる。弱い部分と戦う努力を認めて、弱いままでも救ってくれる。

    化粧をした人見くんの見た目は、たゆまない(少し依存気味なくらいの)努力の賜物で、それは「生きていこう」という人見くんの強い意思。その中身は弱くて強くて、とても綺麗。自分の本性に不安を抱く茅ヶ崎くんも、それらを否定し抑え込む努力をしてきた。なのに理不尽な目に遭う人見くんの姿を見て「普通」のコスプレ剥がしちゃう茅ヶ崎くんはすごくカッコいい。
    こうして信頼関係が出来上がっていくんだな。心を開いていける相手になっていくんだな。そして、信頼した上での営みは最高すぎる。

    化粧をすると理想の自分に近付くし、こうだったらいいなって思う容姿にはやっぱりなりたい。だけど人見くんが見せてくれたすっぴん笑顔の破壊力は格別。化粧をした可愛さとは別枠の、それは解放の証だから。全てを肯定する描き下ろしが美しくて、素晴らしかった。

    脆くて不器用でただかわいいだけの存在。だけどタフで一生懸命で頼もしい。大切な人の傷跡を見るのは非常に苦しいものですが、見える傷も見えない傷も否定しない。先生のあとがきがすてきだし、傷付いてきた過去にキスをしようと読めるタイトルも、とてもすてきだと感じました。
  • 北山くんと南谷くん【電子書籍特装版】

    砂藤シュガー

    さみしいけれども、祝!最終巻
    ネタバレ
    2025年6月18日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ほんとうにほんとうにさみしいけれども!大好きなふたりを最終巻まで見守ることができて嬉しいです。祝!最終巻!!先生、たくさんの楽しい時間をありがとうございました。

    同じ大学、同じバイト、同じバンドファン(トリモトズのグッズがまたカッコよくて、いっぱい買っちゃう北山くんと案外セーブする堅実な南谷くんの図式とか、すきっ)な北山くんと南谷くん。最初は爽やか北山くんのえっちな顔が見たくてなスタートでしたが、仲良くお付き合いを続けて親にも挨拶、ついには同棲をするまでに。
    段階を踏みたいからと、えっちをするまで慎重だった北山くんの誠実さは素敵だし(でも性欲強そうな感じは最初からしてたよー)、嫌がることはしたくないから、毎回南谷くんに聞いてからするところとか北山くんらしくてすごく良かった。だからこそ、余裕のない時のちょっとの違いにドキッとしたし、色気もすごかった(通常版のとこの5話ダッシュも大好き)。えっちに興味津々な南谷くんもいい子だし、ずっと敬語なところも可愛かったなあ。

    ふたりとも意外と…ってところがあって、それがリアルというか、無理のない人物像で好きでした。バイト先や大学、家族と、全てにおいてそんな感じで自然にリアル(南谷くんのお父さんは…ちょっとしたスパイス笑。シリーズが終わり、顔出しは…残念!)。ふたりのことを知りすぎて、もう終わってしまったと思うと喪失感がすごい。

    北山くんの方が年上なので、最終巻では新社会人と学生、しかも同棲スタート。まだまだ続くと私も思っていましたが、この度ひと区切りということで。
    未来への足場固めもされつつの、とてもいい最終巻でした。バイト先の面々も沢山見れたし(南谷くん、解釈一緒!)、思い出いっぱい胸いっぱい。それでもやっぱりふたりのことが大好きだから、まだまだ描きたいエピソードがあるとの先生の言葉を支えに、またどこかで会える日を楽しみに待ってます。

    9月に連載スタートの西湖くんと東川くん。まさかあの西湖くんの連載が始まるなんて。キャラも濃いし、先生の他作品のように特別出演的なことも期待しつつ、少し大人なこちらのカップルも楽しみです!

    ※追記 西湖くん、8/15スタートだそうで。楽しみ!!
  • 吉祥寺少年歌劇

    町田粥

    うわ、嬉しい。3巻出てた!
    ネタバレ
    2025年6月15日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 女性ジャンル。男子のみで構成される吉祥寺歌劇団と、その音楽学校に入学した少年たちのお話。

    少年たちの夢と努力と友情を入学から退団まで一気に描いた第1巻。時には傷付き焦り嫉妬しながら、それでも互いに高め合い成長していく少年たちの姿に、とても胸が高鳴り感動しました。2巻は1巻で語られた物語の「幕間」。駆け足感のあった1巻を補足したり、また違う角度から掘り下げてあったりで面白かった。でもでも、まだ足りない!

    そして3巻は、1巻で首席を目指した白井寿の父・彬の学生時代から。見てはいけない夢を追った父と子の関係はとても気になるものだったし、明るい神田雅路(神楽一路)と陰のある彬がどんなペアだったのか知りたくて、即購入。
    いや、つら…。予想外のエピソードで…。だからこそ、寿を後押ししたのかと思うと…。中途半端ほど辛いものはないですね。この友情も尊い。

    幕間8-11は白井彬。幕間12-15は瑞穂や寿たち81期生のエピソードでした。久々に彼らに会えてとても嬉しい!サワもカジも、みんな大好きだよ〜!
    最後の降誕劇とても素敵でした。願わくば彼らの舞台をもっと見たい。特に髪長姫!!
    毎巻BONUS TRACKがいいんだよなぁ。次巻も楽しみです。
  • そんな激情で殴られたい【単行本版】

    紫比呂

    尾を引く作品 ※追記
    ネタバレ
    2025年6月13日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 気味の悪さを星5で語るレビューと、虫に関する注意喚起をありがたく受け取めて拝読。一気に読んで、もう二週間は経つのに表紙とタイトルが頭から離れない。ちらりと読み返しては、仄暗く閉じた関係にゾクゾクとする。

    ツンギレ受けの七瀬が押さえ込んでいる欲望を、玄野は上手に意識させる。コンプレックスを刺激して七瀬の激情を引き出し、自分の情欲を見せつけることで七瀬の欲望を捕まえる(しかもその間、ずっと玄野は気味が悪い)。
    七瀬の怒りが虚勢なら玄野の怒りは防御だろう。多感な思春期に、何もしていないのに拒絶されてしまう自分を少なくとも怒りは守ってくれる。次第に防御は玄野を攻撃する者への性を帯びた仕返しへと姿を変え、彼なりのコミュニケーション方法となってきた(この辺の歪みに玄野の闇深さを感じるのと、挑発的に食す・じ慰する行為に走るのがもう…。やばいね、本当に頭から離れてくれない)。その奇行が七瀬の激情の中に弱さと欲望を見つけた瞬間、歪んだ繋がりを生み出し、寂しさと大きな穴を埋める激情に変化する。これはもう、どうしたって逃れられないやつ。
    蝉の鳴き声に追い立てられた焦燥感と相まって、濡れ場のじっとり感がひたすらいん猥。可笑しさも含め、玄野のいやらしさと気味の悪さはクセになる。

    レビューに惹かれて購入した作品なので、他レビュアー様たちの解釈を読むのも楽しい。そういう意味でも、とても尾を引く作品。

    キャラクター紹介にある玄野の趣味・休日の過ごし方は、自立する以前の劣悪な環境(現在も大概だけど)からの脱却とその意思を意味してるのかな?なんかもう、玄野が知りたくてたまらん!

    ※アニメイト20P小冊子。七瀬の恐怖の夜
    そのセンス好きすぎる。
    恥ずかしがりながら慄きながら、丁寧に洗ってもらって!
  • 妄想猫観察

    迷子

    愛くるしい毛玉生物を観察する本
    ネタバレ
    2025年6月12日
    このレビューはネタバレを含みます▼ もちもちSF「プリンタニア・ニッポン」迷子先生の少し不思議な猫エッセイ。短い漫画と落ち着いた文体で記されていく猫の観察と先生の妄想。あらゆるものへの視点がおもしろくて、猫の観察をする先生の観察をしてみたくなる。記された事柄は猫好きならばふむふむ言えるものばかり。猫と先生の距離感も好ましい。

    冒頭『猫駅』では村上春樹氏の「ふしぎな図書館」へ足を踏み入れた時のような、無意識世界の空間に迷う。日常から半歩外れた心許なさが心地よい。飼い方の常識についての回では、アインシュタイン「常識とは18歳までに身に付けた偏見」が耳に痛し。先生の文章とても好き。これからもこんな仕事をしてほしい。できれば文庫とかで持ち運んで公園とかで読んでいたい。そんな人間を遠目で観察する猫がいたら、ちょっと嬉しい。
  • わかりやすいね翡翠さん【分冊版】

    おがえり芽生

    めちゃくちゃ可愛いよ翡翠さん!3話追記
    ネタバレ
    2025年6月6日
    このレビューはネタバレを含みます▼ どこか品があってキュートな作品を描くおがえり芽生先生の新連載。とっても楽しみにしていました!

    伏目がちでセリフとポーズもキリリときまる個性派占い師の翡翠さん。見た目はクールな美人ですが、中身の円くんは素直でウブくてキュートな男性。恋愛相談にはたくさんアドバイスをしているものの、自分は中学時代の初恋を引きずり誰とも上手くいきません。そんな彼が、ミックスバーの占いナイトで初恋相手の凪くんと偶然再会して…。

    翡翠さんキャラも雰囲気があって魅力的なのですが、素朴な円くんがめちゃくちゃ可愛いです。占い師を始めたきっかけも素敵だし、凪くんにドキドキしちゃう姿なんて可愛いやら色っぽいやら。
    配信をいつも見ているという積極的な凪くんに、元同級生だとは明かせない円くん。「初恋が動き始めた」という言葉のうしろには、タロットカードのFOOLが描かれています。無邪気で自由な、新しいステップを踏み出す良いカードだけど、足元の崖は大丈夫かな?

    掴みはバッチリな第一話。真面目なのに笑えてくる独特な面白さも健在です。猫のタロくんも可愛いし、凪くんもスマートでカッコいい。なにより円くんの初恋がどうなっていくのか、あんなにドキドキしちゃってるのに、進展していっても大丈夫なのか?!
    配信の手伝いをしてくれている友達が言うように、諦めきれない初恋なんて呪いのようなもの。タイトルも気になるし、続きがとても楽しみです!

    ※3話追記
    めっちゃ面白かった!
    翡翠さんがわかりやすい分、凪くんの行動が意図的なのか天然なのかわからなくって、これからどうなっていくのだろうかと、えむちゃんと共に心配していたけれども。凪くん、こんな一面のある男性だったなんて!
    えむちゃんも、しっかりしているようでそうでもなくて、円くんの友達だなぁって感じがすごく好き。
    もう作品が大好きすぎて、続きが楽しみすぎる!
  • 御伽

    琥狗ハヤテ

    常か咎か
    ネタバレ
    2025年6月3日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 読み放題(6月末までの期間限定)にて。これは買って本棚に入れたい。買う決定。
    妖と人が出会い惹かれ合う五つのお伽話。悲喜こもごも、じっくり読ませるオムニバス。どれも面白くてレベルたかっ!

    ◇山を護る天狗と陶芸師…出会って惹かれて、見守る。切なくて優しくて、冒頭にふさわしい作品。さっそくもう、咎ではないと思いたくなる。
    ◇海の番人不知火と漁師…サメの姿形をとる不知火と戦う銛の名手ナギ。海中シーンの迫力すごい。戦いながら徐々に境界をなくしていくさまがなんとも言えない。雄々しい裸体もかっこいい!
    ◇うどん屋の妖狐と豆腐売り…かわいいかわいい!こんなにかわいかったら優しくしたくなっちゃうね。とってもほっこり。きつねうどん食べたーい。
    ◇妖刀燕丸と刀を継いだ武士…切ない。落武者狩りの展開にハラハラ。結末の瞬間、表現にブワッときた。お手入れシーンにはムフフ。
    ◇龍神と士(さむらい)…帝の命令で龍神を尋ねた士。龍神が意外と?ムンムン。身分では計れない、人の価値を説く龍神の怒りが神々しい。常ではないけど、咎でもない。これまたラストにふさわしい作品。

    ワイド四コマ「ちみっこおまけまんが」めちゃくちゃかわいいです。あとがきの解説も嬉しい。どの作品も感動するし心に残る。とっても素敵なオムニバスでした。
  • 1945シリーズ

    尾上与一/

    蒼穹のローレライ 心だけでも、側に。
    ネタバレ
    2025年6月1日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 戦後十数年。連絡を絶っていた友人城戸の遺言で三上に渡された一通の古い手紙。物資が不足する終戦間際のラバウルで苦心しながら作られたその古い紙に指が触れた瞬間、時間という大きな波が三上に強く押し寄せてきて…。「蒼穹のローレライ」航空隊整備員三上と零戦搭乗員塁のお話。

    ー以下、ネタバレありありですー
    特殊な加工をした零戦に乗り、命をなげうってでも戦果をあげたい塁には塁の孤独と目的がある。搭乗員が生還できるよう技術を尽くして機体を組んで、あとは見送ることしか出来ない三上には三上の決意と祈りがある。異質な見た目と戦い方から周囲も手を焼き孤立していた塁と、どこか飄々として世話焼きな三上。信念のもとにぶつかり合いながらも、どうか生きてほしいと互いに願い、心だけでも側にと契るまでに絆を深めていく姿には、作品ジャンルの枠を越え大きく心が揺さぶられました。
    戦況が悪化するなか、防空壕の一角で三上の故郷について話すシーンには涙が溢れます。身体を繋げる行為が尊いと、知らずに死んだら寂しかっただろうと無防備な行為を重ねる熱情には、若い命から奪われていく戦争の悲しみとそんな世界への怒りを覚えます。

    戦争が話題にのぼることはあっても、過去について深く話し合う機会はなかなかありません。だからこそフィクションの中に史実を扱う作品は大切で、それらには心を動かされます。小説は物語の中に入り込み、その時代に身を置くことができる。後半は特に読み進めるのが辛く、シリーズ全てを読みきるには、まだまだ時間が掛かりそうです。

    掌編「面影」は新装版のための書き下ろしでしょうか。あるものを欲しがる塁の、とても可愛らしいお話です。塁が年相応に見えてきて心が温かくなります。ホクロ…のくだりも微笑ましい。牧先生のイラストもとても素敵でした。
  • ぼくらのへんたい

    ふみふみこ

    思春期の、きれいなへんたい
    ネタバレ
    2025年5月27日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 女性ジャンル。お姫様になりたいまりか。死んだ姉のフリをするユイ。先輩に求められ女装を続けるパロウ。男子中学生三人の、成長過程においての性と自我。

    心と身体がバラバラに成長していく思春期。不確かで脆くて柔らかい内側を、ぞりっと撫でてくる得体の知れない怖いモノ。ふわふわとした可愛らしい絵柄で隠すように伝えてくるのは、もがく彼らの弱さと強さ。同級生や下級生、大人たち。他者と関わる中で芽生えるものと、失っていくもの。成長した彼らは、とても強くて眩しい。
    思春期の息苦しさと、傷と痛みの表現が圧巻です。
  • 恋をするならひれ伏して

    ハルモト紺

    ハルモト先生にひれ伏したい!祝・続編決定
    ネタバレ
    2025年5月23日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 地方大出身の平サラリーマンとハイスペック御曹司のライバル関係からの恋。出尽くしたのではと思う程の王道であるのに、真正面から正攻法で満点を出されてしまった。読みきった充足感と高揚感。まさにこれが読みたかったんだと、私の全細胞が言っている…!

    家族のために無理をして頑張る早瀬と、家族でいるために言葉を飲み込んできた時藤。家庭環境は違えど我儘を言えずに育った二人が、距離を縮めるごとにお互いを知り、特別を期待していく。大人だから言えなかったこと、大人なのに諦められなかったこと。自分に重ねることでそれらに気付き、相手を想って手を差し伸べる。

    早瀬がとにかく前向きでいい子。なにごとにも潔くて明るくて、周囲にも愛されてるのがよく分かる。裏表がなく、誰の前でも変わらないだろう部分に救われてるのは、きっと時藤だけではないはず。「早瀬らしいな」ってセリフが要所要所で効いてくる。関係を持った後は時藤のことを意識してしまったり、お祝いしてもらったケーキのロウソクを大事にしてたり。そんな所もいじらしくてとてもかわいい。小1の息子を見ているようだと言った女性社員の言葉にも頷ける。
    時藤は御曹司だけに冷静で余裕そうな顔をしていますが、足フェチだとか尽くしたがるとか、早瀬の手を取り確認させるとか(!)、色事が絡むと別の顔を出してきてそれがたまらん。会社でも早瀬のことをよく見てるし、しかも激甘。子供っぽい素の顔が、いたずらっぽくて可愛くすらある。

    人となりを丁寧に見せてくるので、二人の気持ちが痛いほど伝わってきます。欲しいものが欲しいと言えなくなっていた時藤が、願いを口にした瞬間のカタルシスたるや。
    それでもその言葉を自分からは言えないとか。ほんともう。ほんともーう!

    お勧めしたい作品は数あれど、これは万人にお勧めできる間違いのない作品です。一緒に買おう!とレジまで連れて行きたくなる作品。まず表紙からしていいですよね。シンプルかつインパクト抜群。中身で勝負と、売り手の本気が見えてきて震える。
    家庭の問題もこれからが本番だし、その先の二人をもっと知りたい。というか続きが出ると信じて疑わない自分がいる。いつか描いていただきたいです。平伏!

    追記・秋からの続編連載決定だそうですね!やったー!早瀬のお誕生日に嬉しい発表のプレゼントありがたすぎる。おめでとうございます🎉
  • 成仏させたい私の萌え BLコミックエッセイアンソロジー

    CIEL編集部

    宝の山ですねこの本は
    ネタバレ
    2025年5月20日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 各先生方の叶えられなかった萌え。という名の没。こんな素敵な萌えが没?!理由はそれぞれ、仕方なしですが。あああ、すっごく読みたいネタばかりなんですけれども!以下、気になった先生方のエッセイ。

    ◇吉井ハルアキ先生4ページ。確かにそのテーマで先生の作品は想像出来ない。でも、だからこそ!という期待。
    ◇志々藤からり先生6ページ。厨二ファンタジー、しかも朧げな詳細・笑。先生のこういうところ本当に好き!
    ◇鯛野ニッケ先生9ページ。これは…大作(ゴクリ)。描きたいという誘惑に負け、いつか挑んでいただきたい。先生の手にかかれば難しい説明も読める気がする。
    ◇梅田みそ先生8ページ。試し読みしたら絶対に買う自信があります。そういう店で育った純愛コメディ、すごく読みたい。でも至高なら…仕方なし(でも読みたい)。
    ◇未散ソノオ先生8ページ。ネタの多さに脱帽。え、温泉!先生曰くの、死体から花が咲いたということですか!?
    ◇らくたしょうこ先生2ページ。瓶詰めという、なかなかのインパクト設定。可愛く描かれていますが本当に可愛いままなのか。なにか抉ってこられそうな気も…。
    ◇山田ノノノ先生2ページ。これだけでもう、面白いという。心を掴まれてしまった。大好き作品決定。
    ◇あがた愛先生12ページ。萌える…。倫理観や全ての読み手に不快感を与えないように。プロは本当に色々なことを考えて作品を描かれているのですね。いつも楽しく読ませていただき感謝。
    ◇波真田かもめ先生8ページ。箱庭。スモークブルーの元ネタとのことですが、雰囲気がエモくて読後はしんみり。

    ほか先生方の作品も読みたい萌えが沢山!エッセイの中でチラッと読めるせいか、本当にそんな作品が存在するような気までしてきました(他の作品で活かされたりもしているのでしょうね)。とはいえ、たったの数ページで世界を伝えてくるんだもの、作家さんってほんとにすごいです。とても面白い企画でした。
  • ふたりの夜のすごしかた【単行本版】

    村上左知

    作者さま応援購入
    2025年5月19日
    中学の時に絵を見せてと言ってきたモテイケメン(現在は少女漫画家)相良くんと、ヲタサラリーマンで萌え系絵師をしている蛍くんの再会もの。下巻の後半三話はアシスタントの桃真くんと、陽キャオタクで同居人の陽平くんのお話。

    随分前にも読んだことがあって、今回は上下巻を購入しての読み直し。一気読み!の方と内容は同じですが、上下巻では下記がそれぞれ付いてます。

    上巻「ある夜のふたり」6P
    下巻「ある夜のふたりとふたり」5P
    上下巻ともシーモア限定特典マンガ1Pずつ

    サラッと読めてキュンとする作風です。描き下ろしがあると余韻に浸れる気がして好きなので私も上下巻を。とても楽しい時間を過ごせました。

    紹介された作品は高確率でツボらせていただいている方のレビューを拝見して購入。ほんの少しですが作者さまの応援が出来て嬉しいです。回復お待ちしています!
  • 悪魔はゆりかごを唄う

    うめーち

    解錠シーンがめちゃくちゃカッコいい!
    ネタバレ
    2025年5月17日
    このレビューはネタバレを含みます▼ うめーち先生の青年ジャンル。青騎士で連載中の作品。是非とも応援していきたい。

    未知のウィルス・通称悪魔。人から人へと寄生し、宿主の魂を喰らい死に至らしめる。そしてまた、その死体を見て恐怖や嫌悪を抱いた者へ寄生する。死してなお灰にも宿る悪魔。聖職者であっても、人の手で祓うことはできない。

    弟に憑いた悪魔を眠らせ鍵をかけ、悪魔憑きと出会った時にだけ解錠を行うエクソシストのチッチ兄弟。悪魔憑き同士が対面すると、弱い方の悪魔は強い方へ吸収される。だから、強い悪魔を求めて依頼を受ける。

    正義感が強くて他の悪魔憑きを助けたいと思う弟。冷静に振る舞いながらも尋常ではない量のアルコール摂取で精神の均衡を保つ兄。司祭団、バチカンの思惑。兄弟を心配するローザと、昔馴染みのシーカ神父。そして謎の少年アダム。

    いやいや、設定が面白すぎるし絵も上手すぎる!解錠シーンなどもう圧巻。2巻で明らかになる事実が非常に辛く、物語にも広がりを見せていくのですが、これから兄弟はどう乗り越え、どうなっていくのか。弟の鍵が背中っていうのがまたね…。まだ読み込みも足りないし、読み返しながら読みたいから3巻に向けて紙でも購入。ハルタ、青騎士の本はほんといい。
    1巻巻末のパニモン悪意のくだりも、何か意味があったりするのかな。
  • ステノグラフィカ

    一穂ミチ/青石ももこ

    シリーズ三作目にして作品世界に没入
    ネタバレ
    2025年5月13日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 言葉の断片を採集し保存する速記者の碧(ヘキ)と、出来事を言葉に印画する新聞記者の西口。控えめで思慮深い碧と男らしい魅力に溢れながら何処か寂し気な西口とのやり取りが面白くて、静かに盛り上がっていく物語に一気に引き込まれてしまった。言葉を生業とする者たちを、シリーズ一作目から見ていたからか。

    新聞社シリーズの第三弾。参考にさせていただいたレビュアーさまのおすすめ通り、本編読んで番外編を読んで。そしていま、ここ。

    香港での再会を書いた瑞々しさのある一作目、絡まる三者の生き方に人生のままならさと絆を感じる二作目、愛すべき男のプライドと寂しさを書いたこの三作目と進むことで、シリーズの魅力がグッと上がった。様々な人の言葉をそっと集め心に記録していく碧を通し、触れる西口の魅力にこちらまでもが溺れてしまう。

    書き留めなきゃ、と重ねられた手が本能的に動きそうになるシーンが、とても良かった。

    男も色々。女も色々。そんな当たり前の中での物語たち。完結したシリーズの、まだ途中を読んでいることがとても幸せ。国会議事堂の見学へ、久しぶりに行ってみたい。小学生の頃より絶対に楽しい気がする…
  • 300回の告白愛~執着幼なじみの好きが重い【単行本版/電子特装版小冊子付き】

    おがえり芽生

    圭都くんが可愛くてクセになる!
    ネタバレ
    2025年5月10日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ぞう組さんの頃から小中高大と告白し続ける一途なイケメン諒と、ウブくてのんびりな圭都くんの、とっても可愛くて平和な幼馴染執着求愛ストーリー。

    諒の告白はオープンなので、友人たちにも周知の事実。ダメと返事をされても、粘り強く圭都くんへの気持ちを言葉にします。関係を変えたくなかった圭都くんも、あることをきっかけに気持ちに変化が現れて…。

    一歩間違えればあざとく見えてしまう場面でも、無垢な圭都くんはそうじゃない。可愛くておぼこくて純粋で、ほのかに、ほのかに色っぽい。無意識に煽るとこなんて、もはや魔性まである。諒もそりゃあ強い気持ちで、諦めないわけだ。

    なにより諒の一途は本物。常に圭都くんの隣をキープし、その目は圭都くんだけを見つめている。二人ともどこか少しズレていて、そんな所も面白い。学生寮マンションやサークルの友人たちとの距離感も良く、いいアドバイスをしたりされたりしています。

    短編「猪突猛進!ふかみくん」でファンになり、これからも応援したい!と思った作者さま。絵から伝わってくるものが多くて、独特な間も面白くて大好きです。

    Xで紹介されている新連載も面白そうで、シーモアで追えるのとても嬉しい。連載追いつつ、単行本化も諒のように気長に待ちます!
  • アタリ

    琥狗ハヤテ

    その三つ目を通して。
    2025年5月6日
    女性ジャンル。優しくて悲しい、不思議なお話。

    現(うつつ)の理(ことわり)を探す守り神(なんか頭巾被っててかわいい)と、彼らを生みだすアタリと呼ばれる三つ目が、現の心を見るために現世へ降り立つ。

    それぞれの生を歩む人間たちの心が痛む瞬間、見えないはずのアタリの言葉が、彼らの何かを後押ししていく。

    サラッと読めますが、後味がとてもしっとり。あとがきもとても良かった。派生先だという作品は未読でしたが、それでもとても良かった。

    追記。2巻買いました。人の心は矛盾していて、永遠に定まることがないのなら。アタリのような存在になりたいし、そっと傍にいて欲しい。次巻も楽しみにしています。
  • あやし道連れ 分冊版

    はなぶさ数字

    凪の洞門、海辺の因習ロマンス 追二話
    ネタバレ
    2025年5月5日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 第二話。過去パートがだいぶ不穏になってきましたね。幸也とナギの結びつき方に胸が苦しくなる。イカ推し…もとい依田くん。どんな立場で絡んでくるのか。現在パートとの対比も面白い。[追記終]

    はなぶさ数字先生の新連載。一話で既に引き込まれ、久々にきた、面白い漫画が始まった時の高揚感。

    ギザ歯の人外、タイトル等から怪しさ満点な印象を抱きつつ、読み始めてみれば青年二人の訳あり風な関係性と、穏やかな空気感。

    しかも体格差、めちゃくちゃいい…。

    その後、運命的な出会いの回想から語られる、幼い幸也が抱えた家庭の事情。閉鎖的、排他的な町の人々と、凪の洞門に現れるという因習のバケモノ。そして、バケモノと呼ぶには優しく無垢なナギ(大きさを変えたシーンすごく好き)。

    なんで幸也だったのか。イカ推しの子も結構いい奴に見えるけど、追い返したナギにはどう見えたのか。重さと仄暗さと無垢さの加減が何とも絶妙。どんな物語が語られるんだろう。続き、楽しみにしています!
  • 夢喰い獏とお天道様【単行本版】

    noji

    辛さは人それぞれ。ほんとそう。
    ネタバレ
    2025年5月2日
    このレビューはネタバレを含みます▼ noji先生の、ふふふと笑える優しいセリフやお話運びが大好きなので、流れるように新刊購入。タイトルからファンタジー寄りを想像していたのですが、何でかなと思う不思議な所がありつつも、割と現実的なお話でした。

    編集者でグルメ記事も手掛ける七星天道さんが、お米が食べられなくなってしまったとあるトラウマ。これは…よく分かる。というか玄米で経験がある。デリケートな人なら尚更だし、漫画でも無理な人はちょっと無理かも(イラストがゆるめだから大丈夫かな?むしろモザイクのが怖い)。

    トラウマの記憶を消せるという隣に住む夢若くんは、どこか捉えどころのない、ふわっとした印象の人。彼にも抱えるものがあるのですが、七星さんに寄り添う姿勢からは優しさが滲み出ています。
    一緒にトラウマ克服を頑張っていくうちに、相手を知り好意を持つ。やっぱりこの、noji先生のふんわりした優しい雰囲気が大好き。二人ともちょっとタレ目なのも好き。ちゃんとした大人なのも好き。

    ちょっとずつトラウマを克服してくのも、夢若くんの抱えたものが少し楽になるのも良かったです。
    なんだかずっと、子どもがお母さんに頭を撫でてもらってるような、優しさが漂っている気がする。可愛いなあとか、面白いなあとか、ふふふと笑いながら最後まで読みました。進展はキスまで。夢若くん割と積極的だし、七星さんうぶくて可愛いです。二人とも目元の表情が良くて色っぽい。カバー下?のイチャイチャも可愛いなあ。ふふふふふふふ。

    描き下ろしは「初心者さま×2」11ページ。二人でお料理して…。×2ってのが良いですね。

    最後の番外編はCanna100号記念番外編特集のスペシャルショートと同じものでした。6ページ。探偵事務所の二人も出てきます。
  • マッチ売り

    草間さかえ

    絡まる人間模様と、恋文
    ネタバレ
    2025年4月30日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 宛名のない恋文を返すため、友人を待つ廣瀬清高。お人好しな廣瀬に惹かれ、彼ならとあることを期待する燐寸売り花城青司。惹かれ合う二人に苛立つ澤と、恋文を書いた有原も加わった、四角関係の始まり。

    恋文に何かしら人生を変えられている四人が、どうなっていくのか読めなくて面白い。続きは、やぎさん郵便全3巻。あああ、一緒に買っておけば良かった。

    花城を贔屓にしているあの人も大概歪んでますね。キャラがこう、やはり濃い。そしてそれぞれが魅力的。
  • アンバランス・バランス

    上野ポテト

    この魅力は何なんだ
    ネタバレ
    2025年4月26日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 抉り具合に容赦がないといった印象のある作者様。今作は同級生の再会からの、クズとエリートのヒモ契約。といっても勿論、一筋縄ではいきません。あれよあれよと、話は意外な方向へ…。

    語られない園山の感情が、表紙帯下の瀬田じゃないけど知りたくて知りたくて。一歩引いた立ち位置からの優しさと、交わっているようで交わらない無関心さ。なかなかのクズな生活を送るようになるまでの、園山の思春期は見た過ぎる。

    わかりやすさに合わせ生きてきた園山に、わからない返答をする瀬田はどう映ったのか。大抵のことは軽くいなし、面倒臭くなったら離れていくのだろう園山が、イラつき、感情を乱しながらも瀬田のことを考える。かなり拗れた思考の園山に、瀬田の一途が届いた…のか?

    本心なんて分からないと言った彼の、揺らぐ本心が知りたすぎて。園山の不安定さに、とても沼る作品でした。

    そんな訳で描き下ろし最高。しがみ付く瀬田も大変可愛らしかったです。Mかどうかは未知だけど、興奮の元は園山の眼差しってことで。どうしようもない二人とのことですが、結構いいバランスなんじゃないかな。

    田村さんや事務所の人たち。彼らの存在とリアルさで物語の印象がだいぶ変わると思います。やっぱり不思議な吸引力のある先生だなと、再認識。
  • 銀のくつ

    四宮しの

    愛…愛が…
    ネタバレ
    2025年4月24日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ああもう、すごく好きです。愛にあふれた優しい世界。憧れてしまう。

    ジュンくんのおうちにいるのは、やさしいお父さんと、鳥の着ぐるみを着ているお母さん。中身は若い男性なんだけど、六歳のジュンくんにはまだナイショ…。

    花が咲く庭と、つる薔薇のアーチが素敵な一軒家。子どもを見守る大人たちと、そのエピソードひとつひとつに感動します。登場人物が繋がっていたり、悲しい思い出があったり(だからこそ、胸が痛むほどの優しさと寂しさがある)、少し不思議なお話もあったりして、とても四宮先生らしいお話です。細かい説明はなくても、読んで、感じて、考えることで、魅力を味わえる作品。

    銀の靴を履いて帰りたい場所は、愛する人たちの居るところ。何も思いつかなかった少年が、いまでは大切にして、大切にされている温かい場所。いつか打ち明ける時が来ても、きっと壊れたりはしない。ドロシーはバカだと言ったお姉さんは、何を追いかけているのかな。強くないと、生きていけなかったのかな。とても素敵な作品でした。
  • 俺がおまえに恋してやんよ

    ARUKU

    きゃわきゃわ
    ネタバレ
    2025年4月23日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ホタルくんの生態がめちゃくちゃきゃわわです。ラップで包んだ塩むすびとお菓子が主食で、サメ型の寝袋兼部屋着で暖をとる。やることなすこといちいち可愛くて、人が良すぎる正直者。他人からの攻撃にも自分を責め、優しさと共感で返すような、弱くて自己犠牲が強い人。
    恋してやろうかの刑部君も、一途な男のきゃわわです。努力家で、なんでも出来てカッコよくて、ホタルくんをずっと優しく見守っている。今日の雨は綺麗だねと言うホタルくんに、勝てないなと思うような心の持ち主。二人の関係は、とても綺麗で甘い。

    かわいらしくて明るい語り口だけど、若者の寂しさがひしひしと伝わってきます。ルッキズム、他力本願、自己肯定感の低さ。優しい性根が更に自分を責めたて、追い討ちをかけてくる家庭の事情。疲弊していく彼を心配してくれる人はいても、踏み込んでまでくる人はそうそういない。何だかとても、足元に転がっていそうなリアル。

    ぽっかり空いた人生の落とし穴を淵から覗いているようなホタルくんですが、頑張っていてもその方向が間違っていては落ちる未来もあったはず。傷に向き合い努力を始めることで好転しますが、やはり自己犠牲の性分が出てきてしまうのはとても悲しい。

    弱さも含め、ありのままを受け止めてくれる刑部君はホタルくんのヒーローで、窮屈な世界で戦っていた刑部君にとっても穢れのない笑顔で全肯定してきたホタルくんはヒーローだった。拗れてしまったとしても無敵だった頃の記憶は温かく、鮭の川上りになぞらえた人生の語りがとても心に残りました。

    刑部君の無償の愛がとにかく深くて純情で、読後の心の大半を持っていかれてしまった。物語に出てくるボサツファイブよのうに、最後まで傷や痛みを見せずに戦うかっこいいヒーロー。ホタルくんを愛し、助け、笑顔が見たいからと奔走する、智慧のある純情な男。不安だからと彼女を欲しがったホタルくんに、ちゃんと愛して欲しかった一途な男。
    結局おちんをどうにかすることはありませんが、ドアから覗く二人が可愛かったからいいかな。とても綺麗な終わり方でした。

    ちょっと、他の方のレビューで張り紙に気付いたら泣いてしまった。家族も、枷なだけではない。うん。感謝のいいねポチ連打(気持ちの上で)。
  • ウサギの王国

    松雪奈々/元ハルヒラ

    面白くってシリーズ一気読み
    ネタバレ
    2025年4月22日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ウサ耳族の島に迷い込んだ主人公イナバ。彼が味わう文化的衝撃の面白さに読む手が止まらずシリーズ一気読み。ウサ耳族からの神へのもてなし(神じゃないけど)では何がどう伝わってそうなった?の連続で、ナス・キュウリを読み終える頃にはカルチャーショックの瞬間を今か今かと待ち望むまでに。焦がれすれ違う切なさからの溺愛も毎巻堪能。シュールで大変えろーすな作品達でした。

    時折り本気か?正気か?と誌面に問い掛けたくなるも、とても真面目に反応をしているウサ耳族たち。ブレない設定たまらなしい、斜め上な発想をしながら時には血を流す(鼻からだけど)ウサ耳族たちが愛おしい。一族の成り立ちが意外な歴史からで、それがファンタジーすぎないような、良い塩梅にしている気もしました。
  • きみは尻尾を隠せない【デジタル特装版】

    榮田m.

    楽しかった!
    ネタバレ
    2025年4月20日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ちょっと怪しい?パリピ風ワンコ椿くんと、真面目な警察官柊護さんのお話。作者様の間合いがとても好みで、椿くんの一連の怪しさが笑えました。警察官ネタも面白かった!

    柊護さんみたいな善い人が警察官だと、漫画とはいえ安心します。飾り気がなく、職務以外でも人に優しい正直者。臆病で逃げ足が速いのも、人間らしくて面白かった。好きが信じられなくなった過去も、優しさと臆病さ故。
    対する椿くんは、見た目に反してなかなかの純情くん。真っ直ぐな好意と粘り強い姿勢は正に忠犬。尻尾もブンブン、一途でとっても可愛いです(全ての挙動が可愛いで済ませられる範囲なのかは私も疑問笑)。柊護さんを好きになった理由も素敵でした。

    積極的な柊護さんも、全部に「いいよ」って言っちゃう柊護さんも、ご褒美考えちゃう柊護さんも意外性があって良かったです。制服は…多分またやると私も思う笑笑
  • 青春を呪うな

    はやりやまい

    思春期特有の混乱と、鮮やかな青春
    ネタバレ
    2025年4月16日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 多くの若者が体験する高校・大学受験という戦いを物語の中心に据え、次郎の憧れと恋を通し少年が青年へと成長し始めていく様が見応えのある作品。自立への移行期間入口で出会った受験戦争の覇者は、次郎の前に燦然と輝く。

    無知故の無敵を手放し、己の欲望を猿だと非難する次郎。信じていた「自分」が覆され、模索しながら再構築していくこの年代の揺らぎを、丁寧に表現されています。自分の弱さをストレートに突き付ける手厳しいまでの若さ。本質を見抜いてくるような、冷えた視線を感じて好きです。

    腹を括った次郎に腹を立てるアキは、人間らしくてとってもキュート。けれど天才なので揺るがない。正直で、何ものからも逃げない、無敵なアキ。かっこよくて男らしくて、かわいい。憧れてしまうのも無理はない。

    久方ぶりに読み返してみたのですが、やっぱり先生の作品が好きだし、こんな風に想われるなんて、なんて素敵なんだろうって思います。もっともっと、読みたいなあ。
  • さよなら、ナナシのバイオリン

    うめーち

    すごいすごい、音が音楽への愛を奏でてる!
    ネタバレ
    2025年4月15日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 奇想天外、圧倒的描写、独特な世界観にドキドキが止まらない冒頭に確信する。これ絶対面白いやつ!

    楽器の持ち方には、楽器への愛が表れる。名前を付けることで物に命が宿る不思議な世界で、名持ち楽器は持てないと自戒する程に愛を持つ主人公と、近いうちにナナシに戻るから自分を買えとのたまう人型楽器。大切にしていても物を壊しがちな主人公の辛さを受け入れ、全力で向かう彼の行動全てが愛らしくいじらしい。

    面白さもツボだし、名前にまつわる物語の展開も熱い。何より描写が凄くて、コスモ達の変身なんてもう圧巻。音楽の喜びを漫画で体感できる。Codaで終わらすのもカッコよかった。素晴らしい!
  • ホストと社畜

    河尻みつる

    私からも、ありがとう世界!
    ネタバレ
    2025年4月10日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 早朝の牛丼屋さんで、会えば毎朝並んで食べる、名前も知らないふたりのほっこり朝ごはん時間。異なる時間軸を生きる二人が、まるで惑星同士の接近みたいに朝ごはんのひと時だけを共にする。ハードワークな日常の中で、そこだけぽっかり優しい時間。

    青年ジャンルなので、仲が良くともあらぬ想像をしてはならない。というか、しなくても面白いです。一話毎にちょっといい話が読めて、何だか少し元気になれる。2巻も冒頭からわかりみが過ぎて面白かった!あの勉強のやり方を目の当たりにした時は本当に驚いた。よくあるジェネレーションギャップも、こんな風にまったりのんびり、温かく読める。ゲームの話といい、登場人物を通して感じられる作者様の視点がとても好みです。

    優しくて努力家なレンくん。不器用で分かりにくいけれど縁の下の力持ちな直人さん(ぬいぐるみ抱いて天井見つめてる姿を同じ職場で見ていたい)。人となりやその背景、周囲や環境も段々と見えてきた2巻。仲を深めていく過程を見るのはとても楽しいので、1巻で語られた店員さんの業は私の業でもあります。

    この作品を教えてくださったレビュアー様にも、タッチの感謝と握手を。レンくんの名前のくだりだけでも、ほっこり幸せ。こんなルーティンなら永遠に見ていられる。ありがとう、世界と作者様。
  • ゴッド・ブレス・ユー

    かれい煮太郎

    短編の良さにあふれた作品
    ネタバレ
    2025年4月8日
    このレビューはネタバレを含みます▼ サーフショップが開く海の家。
    ウクレレ片手の店長カイリ、下の名前(ダイゴロー)で呼ぶと怒るスミちゃん、よく働く夏季限定学生バイトのジュード(柔道部)。三人三様、それぞれが魅力的な、とても雰囲気のある素敵な短編。

    居場所を見失った若いジュードに、カイリの言葉はいつでも温かい。この人の言葉をもっと聞きたい。海を背景に見る二人の背中と、流れる音楽に、何とも言えない味わいがある。ハッとした終わり方とタイトルがカッコよくて、心を掴まれたまま終わってしまった。とても心地の良い未練。
  • スリーピングデッド

    朝田ねむい

    とてもかわいそうでとても惹かれた
    ネタバレ
    2025年4月5日
    このレビューはネタバレを含みます▼ Canna100号収録の番外編単話配信【2】購入にあたり(ちなみにスリーピングデッドは16ページ「遭難」。置いていくな、か…。)、本編の復習とレビューを。

    一体全体どうするのこれと思いながら恐々と読み進め、嫌悪が魅力へと、恐ろしさが憐みへと変わる頃には夢中で物語のラストまで食らっていた。ねむい先生は天才だと語る方が多いけれど、完全に同意。この作品で完全に確信。

    庭でサルの手綱を引く彼を見て、美しいと感じた。その姿はどこか宗教的ですらあり、間宮もまた悲しい存在だと。物語が進むにつれその時の印象が正しかったと理解していくのだが、車中でひとりセリフの復唱をする間宮には言葉にならない程の庇護欲が沸いた。彼にとって、今回の事件はこんなにも悲しい始まりだったのか。

    知りたくない程のグロさでありながら、目が離せない。辛さと同時に、ひどく高揚してしまう。とてもかわいそうでとても惹かれる。これはどんな感情なんだろう。

    天才にして狂人にしか見えなかった間宮が、いつの間にか可愛くみえて仕方がない。物語が上手すぎて何かの扉が開いてしまう。このラストは、多分ずっと忘れられない。

    くらやみにポメラニアンも…読んでみたい…。
  • モテる男の圧が強い

    うめーち

    泣いてしまった
    ネタバレ
    2025年4月2日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 王道なストーリーに一貫した個性の強さと胸熱な展開を絡め、圧がクセになる勢いで読ませてきます。キャラクターが魅力的で、特にお姉ちゃんとQちゃんと道志と、女たちの個性がカッコよかった。色々なタイプが共存してて誰も否定されないとこも好き。

    どうかと思うとこもあるけれど、反省からの過程で更に感動。割と号泣。圧も強いが愛も強かった。デートがポンコツなのとか瞳孔開ききってるのとか、あとは小ネタも面白くて好きでした。

    先人たちのレビューで好みだと確信して購入。とても楽しかったです。ナナシのバイオリンも俄然読みたくなってきた!
  • 宵のきみにキス

    水玉ミズ

    後宮ファンタジー!
    ネタバレ
    2025年4月1日
    このレビューはネタバレを含みます▼ すっごく良かった!すっごく可愛かった!!すっごく面白かったー!!!もう夢中で読んでしまった。肌の一族、種の者、当ての者って何ですか!?からの、寡黙従者と奔放美人王子が仲睦まじ過ぎて麗しすぎる!

    笑顔の眩しい王子ユイと、ユイを見守る瞳が優しい真面目な従者ヨリ。身分は違えど幼き頃から親友だった二人が、子を成し王の後継者となる「肌の君」と、その発情を促す「当ての者」として夜伽の練習を命じられることから物語は動き出します。発情をしたことがないユイの、清らかな身体と可愛らしい反応。表情を崩さず丁寧に発情を促すヨリの、瞳の奥に宿る熱情。互いを想い合う二人が、もどかしくて微笑ましくて最高です!

    お話も表現も分かりやすくて、物語にスッと入っていけました。気になるポイントもしっかり押さえてあるので、文句なしの満足感。二人の表情が本当に良くて、すごく感情が伝わってきます。想いを隠さなくてよくなったヨリの愛しさがあふれた顔も、普段とのギャップのある余裕のない顔も、すごく良かった!私の力では面白さが全然伝えきれない!

    薔薇の花のあれこれとか、城下町でのデートとか、どのシチュエーションもエピソードも好きすぎます。絵が美しく、登場人物も見目が良く、風景も素敵。出番は少ないですが種の者候補たちまでかっこよかった。日が落ちていく中でのキスシーンも、切なくてとてもきれいでした。とにかく全部いいので、ぜひぜひ読んでみてください!おすすめ!
  • 俺がお前に恋なんて【単行本版】

    まちば

    これで新人作家さまとは、恐れ入る!
    ネタバレ
    2025年3月30日
    このレビューはネタバレを含みます▼ すっごく面白かったです!楽しかったし、それだけには留まらない、作者さまの奥深さを感じました。物の使い方や感情の例え方、セリフの言い回しも秀逸!

    一話毎に引きが強くて、主人公二人の魅力が次々と見えてきます。ひかげさんの可愛いツンと素直な捻くれ方は最高にキュートだし、輝々の真面目さが透けて見えるクズ性も魅力的。無神経だけど頼り甲斐があり、自分の考えをしっかりと持ち努力もしている。むしろ正直さには魅力を感じるし、昔からの友達が今でも周りにいるのは、そういうところが理解されているからなはず。ひかげさんの可愛さと相まって本当にカッコいい。医者の卵がってところ、キュンとした〜

    身体の描き方も眼福もので、ひかげさんの素直な乱れ方、輝々の余裕ある巧みさが揺らぐ瞬間、気持ちが乗ることで徐々に変化してくる内容、想いを認めてからの初々しい可愛らしさと、最初から最後までたまらーん!

    ただの悪役では無かった彼の人生も知りたい。BLでも、そうでなくても。(でもメガネ先生にはBLで会いたい…)

    フォローさせていただいている方のレビューから試し読みをして即購入。こんな風にして出会った素晴らしい作品がほんとうに沢山あります。先駆者たちと、レビューを書く全ての同志たちに感謝。
  • 君によせるブルー

    青井秋

    とてもきれいな作品たち
    ネタバレ
    2025年3月25日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 表題作3話含めて4作品。どのお話も雰囲気があって、落ち着いた美しさが素敵な短編集でした。

    夏の海が光っているような眩しさのある表題作。空と、見えないはずの島の空気までもがとてもきれいで、高校生の恋の痛みが美しかった。2作目の、片想い相手の結婚式でかつての先輩と再会する話はひたすら切なくてときめいた。3作目の狐となまぐさ坊主、4作目の人生の脚本家のお話もとても好き。ラストの脚本家仲間が渋くてカッコよかった。

    静かで、とてもきれいな短編集。
  • わたしは壁になりたい

    白野ほなみ

    人生のあり方としての自由
    ネタバレ
    2025年3月25日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 女性ジャンル。アセクシャルのゆり子さんとゲイの岳朗太さんが偽装結婚したところから始まるお話。ゆり子さんは腐女子だし岳朗太さんの片想い相手は幼馴染のイケメン庭師だし、作者さまの他作品も素晴らしかったので何となくの思い付きで買った本を棚から引っ張り出し(画面ポチポチして)読み始めたのですが、想像以上に様々な立場からの、人生と自由についてのお話でした。

    すごいな、この作品でもまた、めちゃくちゃ考えさせられた。アセクシャルにもゲイにもバイにもヘテロにも、自分はフラットな人間であると、無神経にも思い上がっていたのではないだろうか、理解のある振りをして型にはめて見ていたのではないだろうかと。そう考えるととても恐ろしい。

    岳朗太さんの生き方はそれでいいのか。ゆり子さんの生き方はそれでいいのか。

    いいも悪いも、決まった答えなんて無いんでしょうね。誰かの正解は誰かの不正解で、自分の正解は自分のものなのだから。ゆり子さんの言う命綱の話と、ゆり子さんの友人・桃くんとの会話は全ての言葉が刺さりました。家のことについても、二人が二人らしく生きる選択をしたのですね。

    ここ数日なんだか作品に集中出来なかったのですが、すごくのめり込んで読めました。描き下ろし「桃くんの英国滞在記」は、とても素敵な6ページ。癒されました。好きぃぃ。
  • さよなら、嘘つきアパートメント【単話】

    柴田文

    シーモアでの配信、待ってました!追
    ネタバレ
    2025年3月22日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 温かい人柄が伺える柴田文先生の新作BL、シーモアさんでもスタートです!一般・BL問わず先生の作品は描写がとても優しくて、読んでいると私たちがストレスを抱えながらも生きている生活そのものが愛おしくなってきます。出てくる食べ物もとっても美味しそうなんですよー。

    今作はアラサーバツイチで明るいつぐみと、口もとの縦ぼくろが読者の心を惑わすおっとり律くんのがっつりBL。幼馴染の長年かけた片想い、半年前に離婚したつぐみが押しかけ始まるほのぼの同居生活(結構すぐに手を出すぞ!)、律くんの後輩からのアプローチよけにつぐみから提案される恋人ごっこと設定も盛り沢山!
    つぐみを想う気持ちに名前を付けられずにいた律くんも関係が進んでみればなんとも言えずに可愛いし、つぐみも律くんへの感情が変化してきてるのがよく分かる。これから二人どうなっていくのかな。後輩の乙野くんも良い子なので、当て馬と呼ぶには心が痛いです。

    先生の作品は登場人物がそれぞれ学んで働いてご飯を食べて恋をして、優しいだけじゃなく辛いだけじゃない生活を温かく描いているところにすごく癒されます。今のところ単行本化の予定は無いそうですが、沢山読んでもらえれば可能性もあるかも?とのこと。単話を追えるだけでも嬉しいけれど、単行本化も期待しながら二人の恋を応援したいです!

    追加
    気付かんかったー!2話にちょっぴり出てくる可愛い君ら、お弁当の子らか!仲良くしてんのめっちゃ和む!後ろのアザラシさんと同じ顔してしまうわ〜
  • スキスキよしよし

    黒木えぬこ

    いやなんだこれ可愛いすぎるよー
    ネタバレ
    2025年3月16日
    このレビューはネタバレを含みます▼ なんかもうほんとに可愛いのですよ、福田(花ちゃんの実家で飼ってるシベリアンハスキー6才脱走癖アリ)と基くん(ワンコ系攻めくん)。似てる似てると出される表情が本当に似ていて、ワンコ系男子としての説得力がハンパない。昔ご近所さんが飼ってた元気な犬くんたちと某獣医さん漫画のやる気に満ちた犬くんたちを思い出してしまった。ハスキーすきすきー。

    強引なところもあるっちゃあるのですが、作品の可愛さと面白さの方が上回っています。他レビュアーさまも書かれている通り(いつも参考にさせていただいてます!)、畳み掛けてくる勘違いと、勘違いしかねないと思えるキャラの設定が至極自然。微妙な塩梅が上手なんでしょうね。

    基くんも花ちゃんもめちゃくちゃかわいくて、帰り道に遠回りした先の公園でチュウするとことか胸キュンものですよ。二人以外のキャラたちも良くて、安心して切なくなれる楽しい作品でした。好き!
  • 目眩はまどいのつがい

    早寝電灯

    まどって、生きる。たまんないな
    ネタバレ
    2025年3月14日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 早寝電灯先生が描く作品の、正しく生きようと真摯に努める主人公たちが大好きです。静かに己と向き合うその姿には、どの作品を読んでいても憧れます。

    本作は年齢が少し離れた二人の穏やかで優しいオメガバース。アルファで年上の和巳さんは自制心の強い大人な男性。欲を律し、アルファとして優位であることに抗います。オメガの波止くんは大切に育てられてきたキュートな男性。おっとりだけど芯が強く、つがい=アルファの保護と考えることに違和感を持っています。そんな二人が地震という非日常の中で出会い、相性の良さからなる身体共鳴を起こしながらも敢えてゆっくりと関係を築いていく。

    和巳さんの穏やかな物腰の奥からうっすら覗く独占欲と囲い欲がたまりません。それに結構前から波止くんのことを気にしてるっぽいのがまた…。ほんのりワイルドな顎鬚もさることながら、落ち着いた態度と頼もしい身体付き。そして眼鏡をかけては外す仕草と色気。先生の作品では登場人物の考え方や行動に感動するのが常なのですが、今回はそれに加え二人の組み合わせそのものに萌え散らかしています。大人になろうと一生懸命な波止くんと、独占欲と執着に戸惑う和巳さん(しかも10コも下の可愛いらしい子に!)。二人の性格がよく表れている、相手を思い遣ったヒートの場面にも感動しました。大丈夫かとか大丈夫じゃないとか、ほんとにもうなんて健気なの波止くん!一生大切にされていてほしい。お兄さんとスウさんに混じって、二人の穏やかな日々を見守りたいです。

    誰かに「大丈夫ですか」と声を掛ける時、そこにあるのは相手への思いやりと気遣いです。アルファだからとかオメガだからとかではなく、ただ困っている時に手を差し伸べてくれる人。運命のような時間をやり過ごし、時間をかけて作った居場所で好きだと気が付いていく。「同じ船に乗った」二人の、守り守られる関係がとても素敵でした。
    早寝電灯先生の描く作品が大好きです。先生の優しくて強い世界が、どうか多くの人に伝わりますように。
  • 兄弟失格【完全版】【電子限定描き下ろし付き】

    りんごの実

    同人版でも購入済みです
    ネタバレ
    2025年3月13日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 同じように購入済みの方のレビューを読んで、やはり私も完全版を買おう!と決めました。既に沢山の方が書いてくださっていますが、完全版で増えていたのは下記

    描き下ろし「八尋」5P
    電子限定「第9話インハイ出発の前夜」4P
    ヤヒロとキハチのイラストが1Pずつ
    作者様コミックス用あとがき

    白抜き輪郭が同人版より少しだけぼんやりしているのと、キハチが風呂場から戻り電気を消した場面辺りのページの色合いが明るめに描かれています(同人版のあの暗さ好き)。その辺りから二人の表情が微妙に書き換えられているところもあって、ほんの少しの違いですがファン心理がくすぐられます。逆に減っていたのは下記。

    右京さんとキハチおまけの「詫び濡れ場」5P
    作者様同人版あとがき
    お料理などの紹介カラー→モノクロ
    X投稿の1Pマンガ「兄の誕生日にカレー作りました」

    プロな右京さんは、すごく気になる逸材…。

    何回読んでも、魅力のある作品です。結ばれても手放しでは喜べない胸の苦しさ。兄弟の幸せってほんとなんなんでしょうね。苦しみが終わる事はないのだとしても、幸せを願わずにはいられない作品です。後押しされた形での購入でしたが、やはり少しでも新しい何かが見られると嬉しいものですね。作者様とレビュアー様たちに感謝です。
  • はじめての春のうた【単行本版】

    イシノアヤ

    青春がここにあります
    ネタバレ
    2025年3月10日
    このレビューはネタバレを含みます▼ なんでもないようでいて大切な日々を送っている高校生の戸上一(トガミハジメ)と箕野詩(ミノウタ)。仲の良い友達の中でも特別にしっくりとくる、自分のことを分かっていてくれる人。

    上下巻を通してゆっくりと、名前の付かない何かが育っていくのを見ていく感じ。日常生活とエピソードが丁寧に積み重なっていくので、まるで現実世界の彼らがそこで息をしているかのよう。体育祭、テスト、文化祭、修学旅行と、こちらまで同じ青春を過ごしているような気がしてきて、あれ?もしかしてわたし、同級生だったかな…(存在しない記憶)

    二人が過ごす世界の日常と、ほんのり芽生えた「特別」の余韻を、じっくりと味わっていくような作品です。とても読み応えがありました。読み込む程に、どのエピソードも自然で好ましい。それぞれの家族の雰囲気や、家族の中での振る舞い方もすごく好きです。水族館のお土産も、いつか一緒に買いに行けるといいな。
    表紙裏の小テスト、最後の問題…、ああ!
  • グッモーニン グッナイ

    糸井のぞ

    食べることと生きること
    ネタバレ
    2025年3月9日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 記憶を失った謎の青年リネアと、恋人に去られた傷を抱える面倒見の良い料理人アヤのお話。

    リネアもアヤも、アヤの元を去った恋人のサイラスも、全員が苦しみ悲しんでいる。誰かが幸せを感じれば感じるほどに、まとわり付く不穏な空気に不安を覚えます。

    アヤの辛さを思うと胸が痛くなりますが、サイラスもリネアも、アヤと出会えたことで救われています。温かいスープや美味しそうな食事、そして爽やかな香りがしてきそうなブラッドオレンジ。食べることで生きることを選んだその瞬間に感動するし、たとえ悲しみや怒りを抱えたまま生きていかなくてはならないとしても、そこに包み込むような愛が確かにあると感じました。
  • つまさきの紫陽花

    aioiuo

    エプロン似合いすぎ…
    ネタバレ
    2025年3月6日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 趣のある一軒家で共に暮らす、あおと想。その仲睦まじい暮らしぶりが描かれた短編3本と、前日譚にあたる出会いを描いた本編。鉢植えの紫陽花と恋の予感が美しい、まだまだ物語の序盤で1巻は終わります。次巻はいつですか…。

    案外背が高くて男の子らしい想くんの美青年っぷりにも目が奪われますが、堅実で器も身体も大きいあおの男らしさが素晴らしい。割を食う生き方にも動じない人間性。なのに酔うとなんでも連れて帰るというお茶目な可愛らしさ。そして逞しい上半身のハダカエプロン。ハダカエプロン!

    もちろん裸でないエプロン姿も素敵です。その広い背中、ぜひ想くんに飛びついてもらいたい。
    祖父を亡くしたばかりの想くんの胸に空いた大きな穴を、あおの血を沸かせた恋の予感がこれから埋めていくのでしょうか。短編の二人のように、仲睦まじくなるのが今からとても楽しみです。

    フォローさせていただいている方のレビューで気になり購入しました。ありがとうございます。
  • プリンタニア・ニッポン

    迷子

    のんびりもちもち
    2025年2月26日
    ふしぎ生物と暮らすSFショートコミック。青年ジャンル。たまにキリッとするの(してるのか?)たまらん。ほのぼの日常系の中で小出しにされる世界観と背景に期待が膨らむ。登場人物(人物以外も)サラッとしつつ奥が深い。最新刊まで購入したけど紙でも買ってしまうかも。面白かったし、なにより表紙を飾りたい…!
  • 風の色まで憶えてる

    すごく素敵な作品!
    2025年2月23日
    春雷のような衝撃から始まる高校生の恋と青春を、そよ吹く風のように優しく穏やかに描かれています。丁寧で落ち着いた作風からは、爽やかな風の色まで見えてきそう(タイトルすてき!)。高校生らしく感情が素直な二人なので、表情もとても豊かです。森くんの優しい笑顔と、道音くんの澄んだ瞳が印象的でした。描き下ろしでは森くんの対応力が素晴らしすぎて涙腺が。なんて素敵なふたりなの。すっかりファンになってしまいました。大好きな作家さんに出会えて嬉しいです。おすすめ!
  • インターネット・ラヴ!【単話】

    売野機子

    きっと出来るよ!!と、叫びたくなる番外編
    ネタバレ
    2025年2月23日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ネイルサロンのオーナー達に彼氏としてウノくんを紹介して、羽田へ戻るまでのほんのひと時。大人になると辛い時間も上手くやり過ごせたりもするけど、幸せを掴みに行く自由だってある。あっという間に読み終えてしまう10ページのその先に、明るい未来が見えました。国境も柵みも全部超えて、新しい世界に自由な未来を!
  • 40までにしたい10のこと

    マミタ

    会いたかったよ雀ちゃん!すず子!慶司!
    ネタバレ
    2025年2月19日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 最高!最高!最高!やばいキュンが止まらない!そして心臓止まりそう!ちょっとしたリアルが上手なんですよね。付き合っていくルールを作るにしても、あんま見ないとか。そうそうそう見ちゃうよねってなる。だって好きだから!お腹のお肉だってつまんじゃう。だって幸せだから!出だしから最高超えてきて最高でした。続編とかご褒美でしかないのに、面白くて楽しくて愛しくて嬉しくて。本当にありがとうございます!物語にも厚みがあって読み応えありました。いつもカッコいい慶司が余裕綽々でカッコいい訳ではなくて(そんな慶司もカッコいい!)、そして雀ちゃんにも、上司の顔と恋人の顔と、それとは別に分けきれない顔があったりして。頼れる大人な雀ちゃんがすごくカッコよかったです。可愛い部分も尊敬できる部分も魅力的で、これはもう人間として惚れてしまう!付き合い始めてから見えてくる自分の姿に不安を感じながらも、気持ちをきっちり伝え合う二人が本当に尊かったです。眼鏡の使い方も上手かった!ずれ落ちる眼鏡がこんなにも感情をリアルに伝えてくるなんて。年下彼氏が完璧すぎて愛しいです。40を前にして人生楽しむチャレンジを慶司としてきた雀ちゃん。慶司の存在はとんでもなく大きかった。そしてこれからの人生にもお互いがいて、もっと経験してもっと幸せになっていくんですね。最高!いやほんと読み返してもコマごとにキュンが止まらない!キュンの供給過多で心臓は止まりそう!幸せ〜!
  • アフターアクト

    rasu

    二人の舞台、観劇したい!
    ネタバレ
    2025年2月16日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 素直で向上心あるモデルの千尋と、実力があり舞台で活躍している俳優の伊吹さん。初めての舞台で共演することとなり素人同然の千尋が伊吹さんの指導を受けるのですが、若い才能が伸びていく時の貧欲さが凄くいい!尊敬する人の懐に潜り込みながらも挑んでいく意欲と魅力があって、けれども甘える姿はまるでやんちゃな仔犬ちゃん。
    対する伊吹さんも、大人な男らしい色気と包容力を持ちながら、時おりなんだかすんごくキュート。そしてそれらが全然違和感ない!
    惚れた弱みか困りながらも受け入れちゃう感じとか、尊敬する人への信頼と若さから真っ直ぐグイグイ行く感じとか、肉感と質感のある絵もすごく良かったです。

    レビューが修正18/禁祭りになるのも当然な素晴らしい描写で、その先の展開にもより感情が乗って引き込まれました。ぜひぜひその目で確かめて欲しい!配信とその返事も、臨場感あって最高です。恋に愛に走るの素敵だし、そこからの言葉も、曝け出し方も人間くさくて良かったです。

    終わり方も描き下ろしもペーパーも、雑誌のような表紙もすごく好き。二人の舞台、観に行きたかった!中央席、最前列、後方双眼鏡席と最低3回は観に行きたい。すっごく面白かったです。おすすめ!
  • レンタルタマちゃん

    らくたしょうこ

    何もできない。なんてそんなこと絶対ない!
    ネタバレ
    2025年2月14日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 町を人を捨てられず、社会の流れに抗い弱者に寄り添う主人公・矢澤が求めた、ささやかな「いいこと」。そこでも騙されマジ猫演じるタマを相手に奮闘する滑稽さと、親切心から突き付けられる現実世界の虚しさ寂しさ。猫と、猫に愛情を傾ける人間としての絆が、二人にとってかけがえの無い救いになればなるほど、纏わりつく不幸が怖くなります。

    ネタバレレビューをチラチラと薄目で読みながら、購入するまで何度も機会を見送った作品でした。個人的にはハピエン厨だしヤクザは嫌いだし、食い物にされる弱さも、そうならざるを得ない不幸な境遇も苦手です。
    この作品の結末も辛すぎるものでしたが、でも実際に自分の目で読み、受け取ることが出来て良かった。救いのない現実に救いを与えられるのが物語だと思うし、物語を読むからには何かしらの救いを求めたい。だからこそ、沈澱する黒い粒が空から降る光の粒になる瞬間、そこに読者は奇跡を見ると思うのです。

    抜け殻となった主人公を立ち直るまで見捨てない、優しくて強かな周囲を見せてくれた最後も良かったです。いやしかし、なんつー物語を作ったんでしょう。やられました。ぐわー(取り乱し失礼)
  • 「となりのメタラーさん」番外編集【電子限定版】

    マミタ

    ファン必読!!
    2025年2月14日
    雪国で寒そうなのに、温かくて優しい気持ちになれたメタラーさん本編。そんな本編を補うような、楽しいお話沢山のほっこり優しい日常番外編集です。それぞれ内容がしっかりあるので、ページ数以上の大満足感!壮志さんのいじらしさにはキュンとしちゃいます。本編ファンの方は、ぜひぜひ読んでください!
  • 今日、俺がこっちシてもいい?

    みーち

    いついかなる時も菊池は菊池!
    2025年2月10日
    番外編同人誌!注意書き通りリバありです。ノベルティ小冊子「今日、お前んち泊まっていい?」付きの、諸々含んだ全51ページ。あとがきを読んでいて、やはり好きな作品の先生は好きだと実感。平和にお付き合い中の二人が行くのは、本編でも菊池の切り返しが印象深かった温泉旅行。色々考えてしまう瀬戸と、余り考えてないけど揺るぎのない菊池。お互いを大切にする二人らしい、二人ならではのリバでした。それにしても菊池、ほんといい彼氏!瀬戸にはこのまま幸せでいて欲しいです。
  • 受験生

    奏島ゆこ

    番外同人誌!
    2025年2月8日
    シーモアでの販売めちゃくちゃ嬉しい!読めると思っていなかったのでありがたく即買い即読み。奏島ゆこ先生大好きです。受験生の夏、家族のいない家でのお泊まり勉強会。嬉しさとやましさと期待が入り乱れ、大事なものなのに激しく求めてしまう衝動のもどかしさ。二人の表情から全身からそれはもう画面中からひしひしと伝わってきて、いやいや、そりゃ豪もおかしくなるって!本編では辛い場面が辛くて過ちも悔しくて、でもやっぱり繊細な心の機微の描写が素晴らしかったこの作品。番外編は受験生、そして誰もいない家の夜というほんのり背徳感のある、好き合う二人の濃い1日でした。また明日…も読み返してこようかな。先生の作品、もっと読みたい病の再発です。
  • 愛しものに蓋

    ヲリコリコ

    すごく良かった!私も続編待ちます!
    ネタバレ
    2025年2月5日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 恋愛を諦め、好きなものに蓋をして自身を変える努力をしてきた眞白。中学高校と感受性豊かな時期に親から受ける心の傷は、身体への影響として大きな悲鳴をあげています。そんな彼の前に冴えない転校生として現れたのが、昔のゲーム友達でかつての眞白を知る時鷹。以前のように仲を深め想いを通い合わせるのですが、初々しい二人の切羽詰まった高校生らしい恋愛がとにかく良い!トラウマを抱えながらも前向きな眞白は、時鷹への大好きが溢れていてこれでもかというほどに可愛いし、他人に無関心に見える時鷹も彼なりに大人になった経験からで、眞白には大きな感情を持っていてすごく優しい表情をしたりして。好きな相手に触れる緊張感と期待が伝わってきて、読んでるこちらまでトキメキ浴びて若返りそう。悩みを持ち苦しむ眞白に寄り添う時鷹の、誠実で落ち着いた態度も素敵でした。彼の言葉にはすごく救われたと思うし、眞白を見守る表情がまたカッコいいったらもう!頼り甲斐ありすぎて、眞白のことをよろしくと私からも彼に言いたい(お母さんとお父さんも、もうちょっとな…とは思ってしまいますが)。描き下ろしの二人もすごく良かったです。最後のその別なお話、すんごく読みたい。続編、続編をなにとぞ!

    本作は、以前一話だけ読んでいて続きが気になっていた作品でした。続き、めちゃくちゃ良かったです。フォローさせていただいている方のレビューで発売を知り購入しました。作者様とレビュアー様に感謝です。
  • ベリーベリードドドドストライク♂ 【電子限定特典付き】

    ウジチャンマン

    ドドドドストライク!
    2025年1月30日
    勢いがあって面白くって、めちゃくちゃ楽しいお話でした!キレイで色っぽい大吉くんと、優しくて良い人でかっこいい清影さん(涙ボクロ!)。何より二人とも素直なところが可愛くて、何度読み返しても笑えちゃう。シリアスにもなりそうな設定なのに、二人の性格がそうさせません。お似合い過ぎる二人には、ずっとドタバタイチャイチャしてて欲しい。そんな二人を、やれやれだわぁ、とか言いながら見守りたい。ネタバレは無しがオススメです。楽しかったー!
  • 午後の光線

    南寝

    すごかった
    ネタバレ
    2025年1月27日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 何十年経っても胸に刺さった痛みと衝撃が抜けない作品があることを、人生折り返しを過ぎた自分は身をもって知っています。読み終えてから表紙を見ると、午後の光線を受けたその横顔と表情に、胸が詰まって苦しいです。あの頃にしかなかった種類の痛みと、ある意味歳を重ねた今より身近で神聖にすらみえた死。どうしようもないことたちへ怒りをぶつけようにも、水中で振り上げる手足のように手応えがありません。達観した淀井の言葉と、飯田と柿沼の友情。すんなりとは表に出ないけれど村瀬の中にある沢山の言葉たち。美しくて残酷で儚い瞬間の、とても心に残る作品でした。
  • やさしいあなた…

    西田ヒガシ

    恋の苦悩と喜びに、酔ってしまいそうになる
    2025年1月25日
    汚れたヤクザ者が恋に落ちていく瞬間。モナ・リザの甘く切ないメロディに、いつか観た気がする映画のシーンを思い出す。胸が痛いのは、二人の恋があまりにも綺麗だからでしょうか。罪が罪として描かれる中での純愛は、どこか滑稽で優しいものでした。出会いは宝、作者様とレビュアー様に感謝です。
  • 【電子限定】翼なき彼ら

    西田ヒガシ

    翼なき彼らの願いと生き方
    ネタバレ
    2025年1月24日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 翼がもたらす不思議なお話。面白いので読めちゃいますが、すっごく難しいです。出現が意味するものは何なのか。子供の命は。彼の命は。そもそも翼だけに見えるそれは何を暗示するものなのか。それまでの人生を会話から感じさせつつ挟み込まれる少年時代。木田が大事なものを持たない生き方をしてきたこと、睦が頑張って父親になり努力しながら生きてきたことの理由が見えてきます。後悔の涙を流した木田の人生、睦の人生に、新しい道が示されたようなラスト。通行止めの解除に、しょうがねえ行くかと独りごちるシーンは得もいわれぬ解放感がありました。分からないものは分からないまま受け止めましたが、またいつか意味を知ったり知った気になったりするのでしょうか。おじさんたちの魅力を味わいながら、クスッと笑いズシンと腹にくる作品でした。校長先生は今も昔もカッコよかったなぁ。「やさしいあなた…」も絶対読みます!
  • 【電子限定】アフターファイブ&ファイブ

    西田ヒガシ

    ジョナサン登場が毎度カッコよくて痺れる!
    ネタバレ
    2025年1月23日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ふざけているようにもみえる軽々しい態度の裏には寂しさと優しさを、仮面の下には純情と可愛らしさを隠してアフターファイブに踊るジョナサン。店にやって来たのは奥さんに逃げられ愛に傷付く堅物上司。だけど笑顔の優しい男。
    会社と店で進む気持ちの変化が全然単純じゃないのに、面白くてどんどん読めちゃいます。けれども読み返すごとに味が沁みてくる。そうきたか、なるほどなどと唸るばかり。ああもう最高!
  • リハーサル

    ARUKU

    変わっていくものと、変わらないもの
    ネタバレ
    2025年1月10日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ※2016年発売アンソロジー掲載の読み切り作品を個人出版にて電子書籍化したものだそうです。重複注意※

    自分のお葬式をリハーサルして欲しいと頼むのは、優彦の幼馴染で隣の家に住む紡。夏の明るさと若い汗が最も似合わないその儀式を、こうして欲しいと可愛らしい笑顔で伝えてきます。短編ならではのスピード感で押し寄せてくる感情がとても繊細で美しいので、あまりネタバレはせずにそのまま作品を受け止めて欲しいです。そんな訳で、以下からがネタバレ感想。

    散りばめられた言葉と眼差しが語るのは、控えめにきらめく恋と純粋で宝物のようなものたち。旅立つ側が長い時間をかけて出した結論と覚悟は、残される者への優しさと愛が込められています。真っ直ぐに向けられたその想いは、まるで向日葵のように力強く美しい。はなむけにとねだる言葉は優彦の苦しみと傷を露わにしますが、残された者がなるべく泣いて暮らさないようになんて到底無理な話。壁に飾られた写真が雄弁に語るように、忘れないし、全てを抱えて生きていく。それでも願うのは、愛しい君が悲しみに飲み込まれてしまうことのないように。こんなのもう、ARUKU先生の言葉と世界で語られたら泣いてしまうに決まってる!年月が流れ何かが変わってしまっても、想う心が変わらなければ自由自在に出現できる。なんて哀しくて、美しいんでしょう。とても慰められました。
  • イルカの耳骨

    素晴らしくて、胸がいっぱい
    ネタバレ
    2025年1月7日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 無欲だと言われる千晃と、常に誰かのために何かしらしている浅見。イルカの耳骨探しという印象的な冒頭からの、見えているようでなかなか見えて来ない、二人の関係。

    幸運のお守りだという耳骨探しはバイト先の少年・宝のためで、その宝を含めた千晃と浅見の物語です。何だかとてもきれいなものを見ていたような気分。もっと味わいたくて読み返しても、ページをめくる手が止まってしまう。きっと、ゆっくり咀嚼した方がよい作品なのでしょう。

    口数が多いとはいえない千晃の、印象に残る言葉たち。行き過ぎた奉仕は不健全な面があるもので、ありのままでいることへの否定にも繋がります。欲がないと言われる千晃が浅見から受け取るものは、いつでも「役に立つもの」ではなく「嬉しい」もの。痛みすらも心地良いような、不思議な魅力のある作品です。

    終盤の海で二人が語るシーンは、美しくて切なくて、何だかもう胸がいっぱい。とても素敵な作品です。おすすめ!
  • 165185

    野良おばけ

    意外性と、その人の本質
    ネタバレ
    2025年1月6日
    このレビューはネタバレを含みます▼ タイトル通り身長差カップルのお話。とはいえそこは野良おばけ先生。人と人が好き合い、付き合っていくことの本質を抉ってきます。

    人気者でいつも人の輪の中心にいる聖と、そんな彼に告白をした真面目で地味にも見える誠。外見は全く違う二人ですが、相手の本質へ目を向ける魂の在り方が似ています。そして時折り見せる意外性には、こちらまでドキドキ。

    相手に興味を持ち、知りたい気持ちを募らせ、共に過ごし共通の記憶や言葉を持っていく。沈黙すら楽しめる自然体での付き合いと、少しずつ相手を知っていく幸せな時間の進め方に、何故だか読んでいて泣けてきます。
    そしてそんな彼らを見守る友人も、やはり何処か似たところのある人たち。周りを大事にする仲間の輪が広がっていくのも微笑ましいです。

    どんどんお互いに惹かれていき、気持ちも高まる花火の夜。これからこの二人が、どう付き合いを進めてどう相手の核心へと触れていくのか。
    親切を一方通行にしない行動をする聖の人間性も、それに気付いて恋に誠実であろうとする誠の男らしさも本当に魅力的。だからこそ、卒業式の告白で聖が付き合いを受け入れた理由も気になります。二巻の発売は春とのこと。今からすごく楽しみです。
  • ぬいパパ 成人男子がぬいぐるみのパパになる話

    灯乃モト

    知っているようで知らなかった世界
    ネタバレ
    2025年1月6日
    このレビューはネタバレを含みます▼ めちゃくちゃ可愛かったです!
    同僚のぬいママ田邉さんや、写真が趣味の本庄くんなど、ぬい活から広がる人間関係。みんな好きな活動をしながら充実した生活を送っています。

    ほんのりファンタジーなBL?三角関係?も絡めつつ、最後は丸く収まり大団円。ぬいは好きだけど何となくしか知らなかったぬい活の世界。作者様とレビュアー様のおかげで楽しい時間が過ごせました。
  • TOMOI

    秋里和国

    忘れられない、衝撃を受けた作品
    ネタバレ
    2024年12月30日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 小学館クーポンで絶対に購入しようと思っていた秋里和国先生の作品。『眠れる森の美男』友井久嗣の帰国後からのお話。冒頭は大学生時代の後輩で教師の雪弘と、その恋人である女子生徒や友人を加えたドタバタな恋のひと騒動。今読み返すと思うところはあるけれど、煮え切らない雪弘がにえきったのは良かった。そして舞台は再びアメリカへと移り、同僚マーヴィンと友井の穏やかで儚い束の間の愛。とても美しくてとても悲しい。ここからの内容は当時も凄く衝撃と影響を受けていて、確実に血となり肉となっています。今読んでも胸が苦しく、友井という人間に思いを馳せずにいられません。作中のセリフ『神が、もう死んでもいいというまで』は今まで何度も思い出してきたし、今後も絶対忘れません。秋里和国先生の作品は性癖や性別を超えたところがあって、今の世でいう多様性を学ばせてくれたと思っています。その中でも本作は特に大切な作品。電子書籍に感謝です。
  • 眠れる森の美男

    秋里和国

    忘れられない、大好きな作品
    ネタバレ
    2024年12月30日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 小学館クーポンで絶対に購入しようと思っていた秋里和国先生の作品。引越しの度に読み返しては片付けていたのに、誤って処分してしまった過去の本。電子書籍で読み返せて本当に嬉しいです。なんと言っても、久々の友井久嗣に痺れる。ひねくれていて正直者、意地悪だけど素直で憎めない、ちょっと抜けてて飛び切りカッコいい男、友井。アメリカの病院へ赴任し、駆け引きじみたやり取りから始まるステイン先生との関係。少しずつ変わっていく友井に、ああ、こうして彼が形成されていくのねと感慨深いです。大人なステイン先生と、友井。カッコいい、本当にカッコいい。最後のシーンまでカッコいいです。おすすめ!
  • 万物は原子より成るということを

    秋里和国

    忘れられなかった作品
    ネタバレ
    2024年12月30日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 小学館クーポンで絶対に購入しようと思っていた秋里和国先生の作品ひとつ目。馬術選手の氷川秋夜とフランスのオリンピック選手シュヴァリエのお話。大昔に何度も読んでいた時は気にならなかったけど、今読み返すと自分から一歩を踏み出さない秋夜にひとこと言いたくなってしまうのは年がもたらす悪い面か。時代背景や過去のことから、なかなか切ない展開です。けれどもその二人より鮮明に覚えていたのが、高校生時代の同級生樋山と秋夜のエピソード。おまえの全てを見たいからと、万物を構成する原子ごと見ようとした瞳と立ち去る背中が忘れられなかった。昔の作品もこうして気軽に読み返せる電子書籍に感謝です。
  • ごちそうΩはチュウと鳴く【コミックス版】

    はなさわ浪雄

    3巻も面白かった!
    ネタバレ
    2024年12月28日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ネズミΩで漫画家の胡桃沢さちお先生とキツネαで編集者の宇迦野さんのお話。1巻からの勢いが落ちることなく小冊子含め3巻までずっと面白いです。今回は結婚に向けた両家ご挨拶問題がメイン。両家各々のキャラが期待以上で、特に胡桃沢家は妹も弟もおばあちゃんもとっても可愛い!種族体での家族会議は眼福ものです。知恵者な宇迦野さんの誠意と観察眼と口のうまさが毎回お見事なのですが、次巻に続く実家問題をどうこなすのか。友人乾に見せるタメ口宇迦野さんが新鮮だったのもあり俄然楽しみになってきました。そして今回いちばん印象に残ったのは、温泉旅館で夕陽を見る二人。問題を一つ乗り越えた恋人同士の、落ち着いた甘さのある会話と雰囲気が素敵でした。胡桃沢家の面々もまだ出番がありそうだし、一癖も二癖もある古狐だという宇迦野父の動向も楽しみ。特にさちおの弟なつきくん、ビジュアルも中身も好きなのでもっと見たい!あとがきで先生も早めにと仰ってくれている4巻、楽しみに待ってます!
  • 極東追憶博物館

    ARUKU

    やっぱり好き。余韻で生きれる。
    2024年12月24日
    淡々と進む物語たち。その一つ一つが心の何処かをギュッと掴んで離しません。『役に立たない人』Nさんの控え目で優しい心と、キノドクなヒトを回想する主人公の眼差し。本質を捉えて織り込むARUKU先生の手腕がキラリ。順番違っちゃいましたが俳句の二人にもまた会えて嬉しい。
  • 雪と松【シーモア限定特典付き】

    高橋秀武

    たまらん!
    ネタバレ
    2024年12月22日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 渋くて格好良くて色気があって、人情味に溢れた作品。夢中になって読み終える頃には脳内の口調が変わっています。世情に通じる粋な松庵先生が、雪さんのこととなるとしつこくて情けないのがまた良い。雪さんの肝の座り方も実に男らしい。佐吉の寂しさと生き様も憎みきれず、どの登場人物も血が通っています。そしてとにかく絵が素晴らしい!3巻通して世界に浸り、最後にあんな風景を見せられたらもう降参。この充足感に続く第二部があるのでしょうか。震えて待ちたい。
  • 惡い男【デジタルエディション】

    中村明日美子

    痺れる
    2024年12月19日
    余す所なく繰り広げられる、匂い立つような明日美子先生の世界。張り詰めた空気と絹のような肌触り。惡い男たちのその目に、こちら側まで魅了されてしまう。吸引されているのか侵食されているのか。もうため息しか出ません。ああああ。格好良い。悪くてかわいい男たち。すべて美味しく頂きました。
  • スティグマタ―聖痕捜査―

    高橋秀武

    静かに深まっていく信頼関係
    ネタバレ
    2024年12月18日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 青年ジャンル作品。すっごく面白かった。被害者の残留思念を聖痕として再現する朝子君。犯行現場で同化する度に苦しみ、血を流し、様々な死を体験する。捜査参考のためにしては負担が大き過ぎるけど、それを存在意義としてしまう孤独な人生。第六係が大切な居場所となるのも頷けます。5話6話の事件では現場に居合わせたことから常に発動。事件の内容も描写も特に壮絶で、最後に同化した命が朝子君の過去とリンクし読み終えてからもかなりキツかったです。黒岩さんとずっと手を繋いでくれてなかったら辛くて読み返せなかったかも。次作の上下巻・愛痕も素晴らしいけど、本作のように事件を解決する話がもっと読みたい!そして映像でも観たい!
  • 病める時も、健やかなる時も、【コミックシーモア限定特典付き】

    野良おばけ

    常に脳裏をよぎるのはタイトル
    ネタバレ
    2024年12月14日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 祖父の残した喫茶店を継いだ泰生と国内外と駆け回るカメラマンの遼輔。付き合いは長く、言葉は飾らなくとも行動が相手の大事さを物語る。それぞれが人生を背負い自分を相手を幸せにと生きる二人の未来が、とある出来事から根底にある問題を露わにする。共に生きる覚悟と現実的な難しさ。未来への重荷が一遍に押し寄せる負担と恐怖。そして必ず訪れる死の別れ。相手のために何ができるかと問いながら、相手を思いやり生きていくことしかできない事実。ずっと一緒には無理だと知っているからこそ、分つ時まで少しでも。二人の出した答えと贈り合う愛情が素敵でした。これが最後かもと日常を過ごす怖さは個人的に分かりすぎて、挑む二人の姿は慰めであり祈りでもありました。終盤に持ってきた愛の行為も素晴らしかった!覚悟で誓いで大切な方法。良い作品に出会えました。
  • 星の降る教室

    サノアサヒ

    愛が美しい
    ネタバレ
    2024年12月11日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 読んで良かった。刺さりまくるし打ちのめされるし胸が締め付けられもするけれど、都会の夜空で見る星のように、弱くて強くて綺麗な光を見せてもらいました。

    人生ハードモードだった元ホストの志津香さんと、周囲との隔たりに孤独を感じる高校生の柊星くんが出会うのは夜。志津香さんは学が無くても人に親切で、貧しい中でも親に感謝できるような得難い人。そしてそうせざるを得なかったのだろう、優しい人。己も傷付いた過去があるからこそ柊星くんの辛さが分かり、掛ける言葉も心に響く。

    いつでも目の前にあるはずの選択肢は世間の空気がそれを選ばせなくて、自分の心も邪魔をする。それでも選択肢が欲しいと一歩を踏み出す姿には勇気をもらうし、しんどかった二人が愛を見つけて本当に良かった。

    志津香さんの明るい性格と柊星くんの真っ直ぐな個性、夜間学校の仲間がそれぞれ良い味を出していて、辛い内容ですが楽しく読めます。この星では生きられないとまで言わせた柊星くんの辛さも、直接の描写が無いからかキツ過ぎず、二人の心に集中できたように思います。両親が良い人そうなのも良かった。

    そしてかつての志津香を救った薫さん。めちゃくちゃいい男!切なくて愛おしくて、これはもう全員好きになっちゃうやつ。もっと会いたくなる余韻のある人なので、私も彼の物語を是非に所望。

    描き下ろしは星の軌道と原子元素によせた柊星くんのお話。彼だからこその言葉で心が満たされます。沁みる。そして美しい。サノアサヒ先生の作品はどれも好き。生きてっていうか、生きようよって言って貰えてる気がする。笑えるし感動するし美しい。おすすめ!
  • 日なたとたんぽぽ

    柴田文

    あったかいもの詰まってます
    ネタバレ
    2024年12月10日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 柴田文先生の青年ジャンル作品。京都の古い家屋と喫茶店。美味しそうな食べ物や心地良い音に囲まれた、日々の生活。東京では周囲に気を遣い窮屈な思いをしてきた慧くんは、たまたま京都に来て、たまたま潤くんと出会って、大丈夫じゃなくても手を引いてくれる人がいることに気付く。人懐こいけど深い付き合いをしてこなかった潤くんは、何が必要かではなく何をしたいのかを選んで生きていこうとする慧くんを見て、昔の夢を叶えるための努力を始める。身の回りにある幸せを大事に優しく描く作者様の、大人として成長していく二人のお話です。豆大福の日は命日なのかな。途中であまり可愛くない虫が登場しますが、優秀らしい。とは言えなので慧くん同様なんとかして欲しかったけど、再び見かけた後の潤くんのシーンが良いので許す!
  • 俺は性格が悪い。

    四宮しの

    犬ちゃんのひねくれ方が可愛い
    ネタバレ
    2024年12月8日
    このレビューはネタバレを含みます▼ とあることから友人以上の関係に進む、いじられキャラの大学生犬ちゃんと友人森田。その後は描写が無いので治ったのかな?たびたび性格が悪いと口にするけど、表紙の子たち含め飛び切り良くも悪くもない普通の学生。メインの子たち以外の話もそれぞれ濃くて面白いです。古賀先輩の話では酔って塩田の話をする彼に涙。妹ちゃんが良い子で良かった。犬ちゃんは中学生時代の回想でもひねてて鈍くて、あぁ、もう犬ちゃん!ってなります。いつの間にか女の子と仲良くなってるのもなんか分かる。四宮先生のラフな線で描かれた絵がすごく好みです。カラーも素敵で、お家に飾りたい!
  • 夜明けがいちばん暗い

    山田ノノノ

    めちゃくちゃ感動した!
    ネタバレ
    2024年12月3日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 山田ノノノ先生の作品からはいつもこういう種類の感動をもらってる。痛みも包括して明るい方へ向かうキレイなものというか、純粋で素直で美しいもの。幸せを感じることすら苦しむ斉藤さんの後悔と罪悪感が、タカヤの光で夜明けを迎え朝が来る。無垢で優しい心の存在が結局は一番強い。かつて母親へ掛けた言葉の、本質を疑わない真っ直ぐな救い。もうほんと凄いのをこれでもかと畳み掛けてきて、最後まで涙腺やばいです。メガネを外した本気の斉藤さんもやばかった!読み終えてから見るタイトルと表紙、最後の文章もめちゃくちゃ良かったです。ともすれば忘れがちになる命の大切さと現実を、いま一度考えました。若い子達も、身体を大切にして欲しいな。感動するし面白いし、おすすめ!
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