メロンの味
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メロンの味

絵津鼓

人に寄り添うということ

ネタバレ
2025年4月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「頑張れ」も「頑張るな」もいらない時ってある。薬だって何言われたって飲めない時もある。人がその時求めているものを知るのはとても難しい。相手に求めず大げさに気遣わずただ寄り添うことがどれだけ難しくて大切なことか考えてしまいました。それを自然にできてしまうナカジョーくんはすごいし、心の病を抱えている木内くんと自然体で関わることで自分が抱えている痛みも和らげていけたのだから、2人はお互いに寄り添えあえる奇跡に近い関係だったともいえます。

そもそも相手のことを傷つけずに一緒に生きることなんてほぼ不可能だと思うんです。他者の心はどれだけ考えても正確にはわからないし、傷つけないようにっていう考え自体が上からでおこがましいのかもしれない。相手の人生に関わるなら、ある程度傷つき傷つけられる覚悟は必要なのかもしれません。しかも踏み込んだその先が光か闇かもわからない。だから悩むんですよね。不用意に聞いていいのか関わっていいことなのか。なのであえて距離を置くことも相手を想う優しさからくるのだと思います。

このお話のナカジョーくんと木内くんは理屈ではなく感覚で一緒にいることを選択できる相手だったのだろうな。人はいいなって思う相手を本能的に嗅覚や味覚の一致で選ぶというし、木内くんの成分分析の行為って無意識に本能的な部分を磨いていたのかも。だから直感でナカジョーが好き!必要!ってすぐにわかっていたのかもしれないです。

心の病を経験したことがある人やまわりにいた人はこのお話正直途中辛いと思う。でもこの2人には穏やかな光が待っていて幸せな読後感があります。BLであり幸福論でもあるような。こういう作品と出会えることもBL沼から出られない理由です。
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