宇田川町で待っててよ。
」のレビュー

宇田川町で待っててよ。

秀良子

タイトルが秀逸すぎる

ネタバレ
2025年5月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 渋谷で、じゃなくて宇田川町で、っていうところにすごく情緒を感じます。
渋谷と言われると雑多で多様で大勢人が集まっているイメージなのに、宇田川町といわれるとなんとなく大勢の中にいる孤独感というか2人だけの世界もそこにある雰囲気。あの界隈の古いものと新しいもの、綺麗なものと汚いものがすり鉢状の土地で一体になってるカオスな雰囲気がとても好きなので「宇田川町で」という響きがささります。

DK2人の無自覚な恋心とつい暴走しかける抑えきれない本能にグッときます。
自分のコアな部分の秘密を握られてしまった八代は、百瀬にはまってはいけない、と本能がアラートを鳴らすもそれに抗えない自分もうっすら感じている。八代の「はなせよおぉ、こええよお~」が大好き。
対して百瀬もノンケのはずだったのに女装姿の八代への恋心を自覚してからたびたび暴走しそうになるんだけど、その時「じゃあどうしたらいいんだ?」って八代に聞くところが凄く好き。お互いにちょっとどうしたらいいかわからない空気感がすごく良く表現されていて何ともいえない情緒を生み出してるな~と思いました。
ふわっとしてるようで生々しく、テンプレのようなセリフもほぼ出てこなくてすごくリアル。とてもいい小説を読んだような気持になりました。

※最近の渋谷は開発で整備がどんどん進んでしまって正直ちょっと寂しい・・あのごちゃごちゃのハチ公前とか治安悪そうな高架のトンネルとか綺麗になっちゃうのかな・・でも色んな作品の渋谷区宇田川町は残りますもんね。心の中に記憶しておきます。
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