無名戦士の物語
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無名戦士の物語

渋染かずき

もしかしたら、どこかの戦場で…

ネタバレ
2025年6月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ 高評価ピックアップで表示された作品。戦争がテーマの作品が表示されるのは珍しいな、と思いつつクリック。試し読みで気付いたのですが、以前pixivでお見かけしたことがある作家様でした。
主な舞台は第二次世界大戦。日本だけでなく、様々な国の名も無き兵士たちを主人公に据えたオムニバス作品。私は日本兵がメインで登場する第1話と第2話をまず拝読してみました。
一つのお話が100ptですので、かなり短めのショートショートのような感じかな?サクッと読めそうだな。
そう思い、1話目を始業前の空き時間に読んでしまい本当に後悔!朝から鼻水出るほど泣いて顔面グシャグシャになってしまった…。

1話目は『一兵卒と猫』。南方の戦地で一匹の迷い猫を拾った日本陸軍の兵隊。何と上官が猫好きだったために特別に許されて、“めばちこ”と名付けられたその猫は隊のマスコット的存在になります…。
2話目は『孤島録』。日本軍の攻撃で輸送艦が沈没し、ひとり孤島に流れ着いた米軍の衛生兵。そこで、機体の故障で不時着していた日本海軍の零戦パイロットと出会います。やがて二人は敵味方の垣根を超えて打ち解け、互いに友情すら抱くように…。

両方とも、この穏やかでいとおしい時間がずっと続いてくれと願ってしまうような物語。
短いけれど、心をギュッと掴まれるような切ないお話です。フィクションですが、もしかしたらどこかの戦場でこういった出来事が起こっていたかもなぁと思いを馳せてしまった。
また、軍の装備等もしっかりと調べた上で描かれておられるのがわかります。そこも素晴らしいと感じた点の一つでした。
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