このレビューはネタバレを含みます▼
作品がとても好みで、幾つも本を買わせてもらった。ほんとに平喜多先生ありがとう。
物語は仕事に悩んで迷っていた織部純と活動を休止していたミュージシャンの伊瀬情和がアパート胡桃荘で出会った所から進み始める。
金髪にピアスで大きな体の織部はペットサロンを持つ夢がある。対して胡桃荘に越して来た伊瀬は母親の介護で音楽から離れていた。
このストーリーで心ときめいたのは織部の献身的な愛。
ミュージシャンとして成功の階段を登る伊瀬を理解して待つ風情に大人の男を感じた。彼はトリマーとして一人前になることや服装に縛られない生き方を選んでいるのに、好きな人のためには我慢する。もちろん音楽に再チャレンジする道を決めた伊瀬も大人になっていく。夢を叶えて人生はそれで終わりじゃない。壁もあり谷底へもくだる。織部は伊瀬のことを考えて居場所をのこし、伊瀬は織部のために音楽をのこす。互いを想い合うのは愛だろう。
最後に平喜多先生の訃報を目にした時に、もう新作は読めないのかと絶望感におちる。しかし残してくれた作品に先生の心が宿っている。
この作品には「俺の心に灯した火は時の流れに負けずにいる」のセリフがある。それを先生の言葉と思って受け取っておく。