夕凪の街 桜の国
」のレビュー

夕凪の街 桜の国

こうの史代

どれだけ怖かったかと思います。

ネタバレ
2025年8月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 今年の広島の平和式典の式辞には思わず涙で、少ししてから気分を変えようと本棚にきたらこの作品を知りました。感謝です。地域によるかと思いますが、Y〜で「この世界の片隅に」が無料で観れたので、こちらも読んでみました。
作者の世界だから私も彼女達の隣にいる様に感じたこの物語は、人生で一番綺麗で若い時に、自然と誰かを想う事も躊躇ってしまう言葉にできない体調不良。あの日あの時に被害に遭った人にしか分からない恐怖と誰とも共有出来ない孤独は、どれ程のものだったんだろうと。今ならそれは感染るものでもないと分かるのだけれど、よく考えたらと。時代が変わっても彼女達はなるべく広島とは関わらない様にするその心理を思うと、あの日があの時だけでなく、それからずっと続いているものなのだと知りました。それは健康が当たり前の様にある人には分からない事で、もしかしたら私達まで…と思い続ける恐怖は、「この世界の片隅に」のその後の物語の様にも感じました。
彼はお見舞いに何度も来たのかなと思うと大泣きしてしまった。ただの爆弾じゃないんですよね。

戦後80年。原爆症の研究はもう形になっているのではと(戦後直ぐに研究所も出来ましたし)なのに今だにヨウ素剤を飲む事だけ。3.11の燃料棒の処理もまだ。あの日、横田横須賀座間は緊急避難(着の身着のまま)まで一時いったと。今ですら人が使うには無理があると思うのです。今年8月6日、タイタニックやアバターなどを撮ったジェームズ・キャメロン監督などの著名人が、ニューヨークタイムズ紙に「核兵器のない未来」を求める声明を掲載し、また監督は広島、長崎両市で原爆の被害にあった山口彊氏の体験を映画にすると。これが本当になったらすごいなと思いますが、広島、長崎の方々が、核のない世界をずっと訴え続けている(訴えるのも大変な事だったと思うのです)事の大きな意味を感じました。
「世界の…」にあった、すずの描いた絵が軍事施設に似ているとスパイを疑われ。スパイ防止法案、核保有論、流出の危険は無いとソーラーパネル内の重金属の一つカドミウムはイタイイタイ病の原因で。忘れた頃にやってくるなと。この作品を読んで当たり前にある平和、健康について思いました。あの戦争で死亡率が一番高かったのは、0~4歳児だったとも。
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