十次と亞一
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十次と亞一

コドモペーパー

亞一の脳内は白昼夢にも似て。

2025年9月4日
亞一の脳内は物書きの妄想で出来ていてまるで白昼夢のよう。それは追い求めるものではなく頭から口から漏れ出してしまうもの。その難儀すぎる亞一の妄想を、十次が手八丁口八丁でうまいこと受け流している。その懐の深さに物書き同士の愛を感じるんだなぁ。

物語は最初の説明とか経緯とか一切無しで始まるので(それが面白い!)読者の想像力は嫌が応にも刺激され、鍵の行方が気になったり、千鳥の鳴き声を想像したり、箱の中身を案じたり…と、思考しながら読み進めました。そしてクライマックスでは亞一という男の生い立ち、本性、心根、千鳥への愛が示され、そのどうにもならない理由と虚しさに絶句。どこかほのぼのと進んでいくお話ですが、ところどころの妖しさ、苦しさの正体はこれだったのか!と全て納得し飲み下しました。

コドモペーパー先生、お初でしたが、独創的なセンスと、あっさりした絵に組み込まれたセンシティブな表現が、刺さる人にはグッサリと刺さる稀有な先生だと思います。私は瀕死。

※ちなみに【亞】という文字には【次】という意味があるそうですよ。
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