このレビューはネタバレを含みます▼
秋が深まると外気温が冷えて、温かいものが恋しくなる。モフモフにくるまって、ハートを温めたい!癒されたい!そんなとき読み返すのがこちら。何度読んでも溜息と読後の幸福感でいっぱいになる。
ストーリーは、不幸な生い立ちの”砂かぶり”こと紅藍(こうらん)が西の外れにある色とりどりの花咲く国で雪豹の王様とおとぎ話を繰り広げる。
とてもよくできた構成。シルクロードの交易路に染料が絡んでいる。王様は神獣の血筋を持ち、綺麗な紋々をしょっている。全編とおして雪豹姿がメインだが、そちらの方が全然好み。立派な尻尾やネコ科独特のしなやかなラインが素晴らしくて、ツヤツヤしている毛並みも見事。紅藍との体格差も完璧。
王様が人の姿になるときの変化も見どころのひとつ。それで出てきた姿がギリシャ神話から抜け出したかのような美青年。これが雪豹とマッチしてて黄色い奇声をあげる。
設定はオメガバース。だけど、紅藍の生きざまや王様が国を建てていく内容が細かく根を張った木のように物語に根ざしている。番が前面でなくても抜群の面白さ。
見どころ満載の作品、魅力のひとつに各話の扉絵がある。モチーフの紅花やクチナシの装飾も美しい。しかも各話の重要なイメージを一枚の絵に落とし込んでいて、ドラマチックさに心を揺さぶられてしまう。もう、スタンディングオベーション!拍手!