このレビューはネタバレを含みます▼
これはちょっとすごい熱量の本。
画力はもちろんのこと、ストーリーも素晴らしくて没頭しました。
読んでる間ずっと歯を食いしばってたんじゃないかと思うくらいこちらも力が入ってしまった。
以下盛大にネタバレしています。
模写の天才。でもこんなのもうオリジナルを制作するよりもずっと苦しいじゃないかって思えて、とてもじゃないけど『まがいもの』なんて言えない。もちろん贋作は犯罪で、他人の仮面を被った絵に価値はないけど、じゃあ内海が描いた絵そのものに価値がないかと言われると…倫理の向こう側に純粋で本物の世界があるからこそ苦しいです。内海の一流の才能が内海のものとして評価されない現実が悔しいなぁと思ってしまいます。
そしてその内海自身の才能を理解し評価してるのがクロサギができるほどの詐欺師の能力を持つ男、蜂谷。そんな彼もまた一流の審美眼を持つ男だというのがたまらない。
画商や画壇、昭和初期の美術界。才能や派閥、玉石混ざり合う世界からはみだした一流の才能たちの目にはそれらがどう映っていたのだろうか?幽霊絵いいのになぁ・・内海の才で描かれたものなら時代が違えば評価されてただろうに、と思ってしまう。
切実に生きているからこそ贋作に手を染めた内海の生き様が胸に迫ります。
それを幼いながら肌で感じ協力する撫子と杏子の聡さがまた素晴らしくて。
このストーリーの行方も想像つかなくて、ドキドキハラハラこの3人に幸せになってほしいと願うばかり。絶対に最終巻まで読み切りたい作品です!