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今月(4月1日~4月30日)
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シーモア島


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失恋から始まる、片思いの1年間2018年6月14日“文学少女”シリーズ完結後の外伝作品。私は“文学少女”シリーズの愛読者だったため、その後の作品世界に触れることができたのは大変嬉しかったです。
本編ほど個々のエピソードに構成に厚みはないものの、本作にはまた別の魅力があると思います。
まず新主人公の菜乃は、登場したそのときから失恋を余儀なくされた少女です。
彼女は自分の恋に向かってまっすぐに、本当に頑張りますが、その想いが叶うことはありません。
彼女が彼と過ごした1年間、彼女が全身全霊で恋をした1年間にどれだけの意味があったのか、それをどれだけ彼女が価値あるものに成し得たか……。
大切な人との別れを予感したとき、実際に道が分かれたとき、私は何度もこの作品のラストシーンを繰り返し読んだものでした。
誰かを好きになったことや、大切な人と過ごした日々がどんなにかけがえないものであるか。
そしてそれを失った新しい世界に踏み出していく勇気を与えてもらいました。
“文学少女”シリーズと共に、私にとって大切な作品です。 -
ユニークなパートナー探しの実例2018年6月10日「結婚」に対する価値観が多様化した現代において、ユニークな視点でパートナーを探す作者の活動を記録したエッセイです。
自身の活動や結婚、家庭などに対する考え方を赤裸々にユーモアを交えて表現していて、テンポよく軽い気持ちで読むこととができます。そして、一口に「結婚」や「パートナー探し」と言っても、人の数だけ様々な形があり、一人ひとりの人生に正解はないということを実感させてくれるような面白みがあると思います。
「私の結婚観はおかしいのかも?」「私とパートナーになる人なんて世の中にいるのか」といった不安を抱える人にとっては、「こんな人もいる」というひとつの提案になり得る本かもしれません。 -
他人とうまくいかない少年少女のための青春2018年5月27日主人公は、好きな女の子を目の前で失うという痛ましい経験をした少年です。
それまでの自分の世界が全て崩れ去るような想いをした彼は、それ以来、人との関係の構築を避けています。
しかしあるとき、そんな彼の前にとある“文学少女”が現れます。彼女は、人間関係の複雑にもつれた感情や意思を物語のように読み解きながら、主人公ひとりでは見えない世界の扉を開いてくれるのです。
友達とうまくいかなかったり、好きな人と傷つけあったり、家族に見捨てられたり、信じた人に裏切られたり、大切な人を失ったり……それでも私たちは生きていかなくてはならない。
そんなときにページをめくると、苦悩を感じて生きているのは自分だけではないと、そっと勇気づけてくれるような優しさのある青春小説だと思います。
一方で、作家の孤独や、作品が他人を傷つけることの業にも踏み込んだ作品でもあります。
自分が描くことで誰かが傷つくことに苦悩したことのある人間なら、主人公の苦悩に共感するところがあるかもしれません。
それでも尚、この作品はそういった愛憎の全てを含んだうえで、物語を生み出すことを信頼を込めて肯定しています。
その信頼は、読むたび私の心をあたため、小さくとも確かな灯を胸に抱かせてくれます。