自転車で衝突しポルノ作家の腕を骨折させてしまった大学生の男が、彼の仕事を口述筆記で代筆するという仕事をすることから始まるセクシャリティーな恋のお話。
ポルノグラファーシリーズ1作目、物語の全ての始まりであると同時に、このお話は序章にしか過ぎません。なので、これだけでは木島がどういう人なのか、城戸との関係性など、知りたいことは良く分からないまま終わってしまいます。
それでも物語に没入させてくれる力は見事です。妖しい雰囲気でセクシャリティーな魅力溢れる木島と、密室でポルノ文学に浸る非日常感はどことなくエロティック。真面目で純情な久住がその雰囲気に徐々に飲み込まれていく気持ちにも頷けます。ただ、そこで凄いのがこの展開全てが木島の思いつきと興味本位だということ。ハチャメチャで嘘まみれの木島への虚無感を、怒りというパワーでぶつけてきた久住の真っ直ぐさが、木島の心に温かな光として差し込んだところでこのお話は一旦終了してしまいます。この一連の妖しさだけでも物語としては面白いですが、やっぱりモヤモヤが残ってしまうのも事実。二人の行く末を見るためには続編も読むべき、素晴らしい序章だと思います。