ささやかな願いだけを抱えて孤独に生きてきた青年が、初めて愛し愛され幸せを手に入れる。しかしそんな透が見ている幸せは今にも消えそうで、永遠どころか少し先のことさえも信じられない。想い合う気持ちは本物なのに、言葉足らずなせいでなかなか上手くいかない。簡単にはハッピーになれないのが切ないけどリアルだ。恋は一瞬で全てを変えないし、愛は魔法ではないんだと改めて気付かされた。
でもそんな2人を追う物語は優しい。
愛を知らず、一番欲しているはずなのに信じられない透が悲しいけど、そんな透を見守るような応援しているような優しい筆致に心安らぐ思いがしました。
加賀谷が全然スパダリでもカッコよくもなく、ただ誠実なだけの男なのが良かったと思う。医者ではあるけど口下手でなかなか透の心を溶かすことができない不器用さが人間らしくてなんだかほっとした。
臆病でもどかしい2人の恋がたまらなく染みた。一生かけてじっくりとわかりあい、幸せになっていけばいい。