佐伯は真っ直ぐ当たって行動表現しており、それから率直に意思表示している。その後、居直ったように歯の浮く様な台詞を口にすることを厭わない。(渉のおかげではある。)
それでも全てを言ってなかった時期はある。逃げ前提で自己満足に済ます予定で。
そんなに簡単には、ことは運ばないものだし、二人同時に同じ想いとなるのもなかなかないこと。そういう意味で現実的な要素を、キツく傷つけ合うようなハードゴーイング無しに、乗り越える。
ストーリーや二人の設定にありきたり感を見てしまう読者もいるようだが、あくまで日常の延長に起きている事なのだとの印象付けにはなっているのだ。その二人の関係進展が、こじれすぎず、淡々と日々が流れていく安易さは、友や仲間、同僚を大切にし合う登場人物達の姿勢で帳尻が合わされてる。二人だけに限らず普通に周囲と溶け込む平和な人間関係を描いて、BLにありがちな一足飛びのいん靡な関係深化が無い作風。二人に、激しい辛さ苦しさはない。大きな事件を設けず、主人公戸田が緩やかに感情を募らせて行く恋愛感情を受け、佐伯が一歩ずつ大切に進めることを、こちらは見守っている感じ。
英会話の綴り等の誤り散見。校正は? 出版前に見直しを。
性的描写が淡泊なのは、作品全体の性格としてそうだと思えるが、殺し文句を佐伯が口にする時(「こういうときはちょうどいい」という場面など)もう少し色気を滲まして欲しかった。イケメン設定納得の絵を。
盛夏より、初夏のカラリとした空気、晩夏のグズグズした空模様が感じ取れた。戸田に暑いと言わせているのに、夏休みの真っ盛りの暑さはそれほど感じ取れなかった。
心模様を割に文字に頼っている点、絵でもっと綿密に見せて欲しい気はした。絵全般には伝わってきてる。聖地巡礼する時の映画の粗筋説明は文字に1頁全部を使うのは冗長と思う。映画好きが二人でどこか行く、それが聖地巡礼、というのは、二人のこれ迄を総括するようで私には円滑な筋運びに見えた。だが「聖地」に「二人で」行く、ということが重要だろう。粗筋よりも、幾つかの場所と映画との結びつきを見せた方が余程二人の心情の旅に呼応したのではないだろうか。
迷子ネタも利用され過ぎと感じた。7~10才時の話は7歳上限でいい気がするし、携帯の件は演出過剰に思う。
価格値下げ且つ3~5冊迄20%引の期間中にシリーズ5作一気買いした。その価格帯での4星評価。