音楽、香り、小説の一生節…ふとした拍子に触れただけで感情が引き出されるきっかけとなるものってありますよね。
私は、大人になって漫画を再読するようになって、その中に漫画が加わりまじた。
最近では圧倒的にこの作品がその感情の引き出しになることが多いのです。
この作品は、一応の終戦を迎えた国で戦勝国の兵士と敗戦国の少年が出会って起こる出来事を描いています。
『戦争が終わった日に、戦争は終わらない…終戦になれば、全てが元通りになるのではなく、憎しみの連鎖は残る』
『戦争は8月になったら振り返れば良いものではなく、日常になった』
そんな言葉に触れる度に、この作品を読んだときに感じたツキンと来る胸の痛みを感じます。
人類が繰り返してきた過ちと愚かさと哀しさ。
本当の意味の終戦とは、いつ迎えることができるものなのか。
読んだら色んな感情が渦巻きます。
読むと、彼の国で起きていることを、絵と交わされる会話と視線とでその場に自分がいるような気持ちになる。映画だと長すぎる。小説でもここまで端的に感情に訴えるのは難しい。大人になると様々な媒体を通じて同じテーマを扱った作品があることは知っているけれども、漫画だからこそ、無駄のない描写で情感に訴えることができる。漫画というメディアの素晴らしさを実感する作品です。
読むと、本来善良な人々がなぜこのような思いをしなければならないのか、という気持ちにとらわれてしまうかもしれない。私は、その受けた衝撃の重さに読んですぐレビューを書くことができませんでした。
でも、私はこの作品に出会い、そのお陰で彼の国で起きていることに胸の奥で痛みを伴って考えることができるようになったことに感謝しています。
まだ読んでいない方には、ネタバレなしで読んでみて欲しい。私は、読んでから皆様のレビューを読んでこの作品の素晴らしさを再確認しました。様々な想いを共有できることも、漫画というメディアの良さだなぁ、と改めて実感したのもこの作品でした。
西田先生の作品はいくつか読んでいますが、この短編は心に残る作品としておススメです。