死のうとする男とそれを助けた男の性と生のぶつかり合いを描いたお話。
最初の展開からストーリーの構成までとても斬新で、細部まで丁寧に作り込まれた素晴らしい作品です。生きることを放棄した柏木が、抗えない性の快感から自分が生かされていることを実感していく様子は、その手法こそ乱暴ですがまさにタイトル通りの劇薬であり、全てにおいて芯の通った物語であることが伝わってきます。
柏木が与えられる恐怖や快感、恥ずかしさや屈辱、孤独といった感情が、彼の生きる糧になり、また反射するように余田にも影響を与えていく過程は、人間の生命のエネルギーの根源を見せつけ、私たちが存在していく上で必要な人との関わり合いを痛々しい程に表現されていて、生きるということの意味を深く考えさせられました。こんな重いテーマを、無駄を一切省いて、研ぎ澄まされた作品に仕上げられていて、本当にすごいと感嘆するばかりでした。