最初は少年が犯罪を犯す背景とはどんなものかという興味で読み始めたけれど、読み進めるうちにだんだん大人の自分の心理についても気になるようになりました。ストレスを抱えた時に自分はいったいどういう行動に走ってしまうのか。子供の頃の体験が影響してはいないか。自分の行動ひとつひとつの裏にどういう心理が働いているのか。犯罪こそ犯していないけれど、果たして自分は本当に「問題のない」人間なのか。そんなふうに、立ち止まって自分を振り返るきっかけになりました。たとえ知能の問題や発達障害を抱えていなかったとしても生きにくいこの時代、それでも生きていかなければいけない私たちにヒントを与えてくれるような作品かもしれないと感じます。