「同居人シンドローム」の主人公の一人、響の過去のトラウマを描いたお話。本編と同時進行です。
とにかく暗く、ツライ響の過去を、本人の独白で振り返るお話です。朔は勿論最低最悪ですが、父も最低で、誰も味方のいない響の過去が本当に悲しいです。
両親に裏切られ、自分の本能にも裏切られ、心と体がバラバラになりそうな程ツライ日々。ともすれば読み進めるのがキツく感じるほどのツライ状況を一つ一つ言語化し、適切な言葉で表現しているのがこの作品の最大の魅力だと思いました。残酷な状況や叫びだしそうなほどの狂気。ギリギリの精神状態で活路を見出す為にフル回転させた思考。全てが地獄なのに、その過酷な現実でも何とか自分を見失わずに、必死で闘う響の強さに胸が押しつぶされそうでした。この地獄からどうやって抜け出したのか、一刻も早く響が救われてほしいです。
内容的に苦手な方もいると思うので、注意が必要だとは思いますが、地雷がない方にはぜひ読んでもらいたい。ただのサイコホラーではなく、そこで何を感じ、何を考え、どう生きてきたか。漫画ではなく、文学的にたくさんの感情に触れられることが出来る素晴らしい作品だと思います。