手が触れる、手を繋ぐ、それだけで高鳴る心臓の鼓動が伝わってくるような描写がほんとに大好きです。
長浜って妖精の国なのかな?と思うぐらい、周囲も優しくて平和な世界。家族も友達も先生も世間も、変な目で見たり嫌なことを言ったりしない。自由に生きて、素直に恋をする二人を、ストレスフリーに眺められる作品です。
ただ、あまりにも綺麗にさらさらと流れすぎて、あまり後に残るものがない……というのが物足りなくも感じてしまいます。
これから大人への道へ踏み出そうという時期の二人にしては、あまりに葛藤が無い。あるにはあるけど薄い。狭い世界しか知らない高校生なりの「To Be, or Not To Be」があるのはわかるけど……彼らの心持ちひとつでサラリと解決してしまう。
もうちょっとグダグダしちゃうぐらいの方が、人間らしさを感じられて個人的には好みなんです。
でも、これはこれで意図的に上澄みだけを掬い取った作品だと思うので、とても貴重な存在。癒しが欲しい気分のときにまた読みたいです。