もんでん先生の作品では“エロスの種子”をずっと拝読しており、その中でも特に戦中戦後のエピソードが心に残っていました。
自身がその時代に興味があることも勿論なのですが、しっとりした妖艶な絵柄が当時の雰囲気にぴったりなんですよね。
この作品も舞台は戦後。女衒のキリオと殺し屋の裕也、彼らと二人の女・シロと美都を交えた物語。
オムニバス形式を取っていますが、読み進めていくと、それぞれのエピソードには繋がりがある部分も。
また時系列通りのストーリー展開ではないことも“エロスの種子”と同様。過去と現在とを行き来しながらラストへ向けて進むことに。
女衒に殺し屋、売り買いされる女たち。戦中戦後のお話を多数描かれているもんでん先生だからこその、重厚でハードボイルドな世界が広がります。
戦後のアンダーグラウンドが圧倒的な筆致で描写され、また男女の肉体も匂い立つように艶めかしい。表情一つとっても生々しく、どのシーンも目が離せません。
戦後の荒廃の中で闇の仕事をこなす男たちの生き様、そんな彼らが心から大切にした女たちの行く末とは…。
全編通して命の重さ、儚さについて考えずにはいられませんでした。