この作品に出会ってすぐに思ったことは、「あぁ私はまさにこういうのが読みたかったんだよ…!」。
絵柄もストーリーもひっくるめて、全てにおいて硬派で骨太な戦後が舞台の物語です。
終戦から約一年、まだまだ戦禍の爪痕が残る東京。そこで再会したかつての戦友同士である二人の男たち・川島と黒田が紡ぐ人間ドラマ。
戦後の川島の荒んだ生活から始まり、黒田との邂逅・同居生活、直視し難い戦中の出来事も織り交ぜつつ描かれていく本作。フィクションだと理解してはいても、拝読するのにかなりの気力を要する内容でした。
当時のダークサイドがしっかり描写されている。見てきたかのような生々しさです。綺麗事だけで済まない日常を、どんな立場の人々も泥水啜る思いで必死に生きていたんですよね。
そんな悲喜交々な物語はもちろんのこと、作者様の画力の高さも凄まじい。もはや命が吹き込まれているような生き生きとした登場人物たち。試し読みの数ページだけで感動を覚えてしまいました。
作風にぴったりとマッチし、まさにこの作品のための絵柄じゃないかと感じるほど。自分は語彙力が乏しいので、ただただ素晴らしいとしか言えないのがもどかしくて堪らない。
久々に心に衝撃が走った作品であるとともに、これはもう自分にとっては傑作だなと。
焼け跡の中を藻掻きつつ泥臭く生きた彼らを、そして戦中戦後のリアルを。願わくば多くの方々に目にしてもらいたいです。
八十回目の終戦記念日に合わせ、レビューさせていただきました。