遥か遠き家
」のレビュー

遥か遠き家

八田てき

彼らが出逢えたこと

ネタバレ
2021年5月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 紙版が発売日当日に重版が決まったという記事を見て、電子発売と同時に購入しました。
1990年代のアメリカ。信仰や罪、赦しといったテーマを背景に狂信的なカトリック信者の両親を持つアランと
壮絶な子供時代を過ごしたヘイデンとが、自分たちの居場所を求めて旅に出ます。
読み進めていけばいくほど、やり切れない思いで胸が痛み、周りの大人たちに憤りを感じます。
旅費を稼ぐ方法1つ見ても、こういった行為が彼らの生活のすぐ隣で当たり前のように行われていた光景だったのだろうと思うと、また辛い。
もしもあの時・・と考えるときりがないけれど、それでも彼らは出逢えた。
僅かな時間ながら愛し愛され、与え与えられ、心が満ち幸せを感じることができた。
もし神様に、出会う前からもう一度やり直させてあげるよ、と言われたとして
同じ結末を迎えると分かっていても彼らに出逢わないという選択肢はないだろうなと思います。
苦しい過去も犯した罪も全て二人で分け合って手を取り一緒に帰っていく。
それが幸せなのか不幸なのかは、彼らのものであって、
逃れられない無慈悲な現実の中で必死で足掻いた、彼らのその精一杯の生を、哀れむ事はしたくないと思いました。
きっと彼らにとってはハッピーエンド。私にはそう思えたお話でした。
願わくば、彼らの家路が温かく優しいものでありますように。
いいねしたユーザ24人
レビューをシェアしよう!