寄宿舎の黒猫は夜をしらない
」のレビュー

寄宿舎の黒猫は夜をしらない

鯛野ニッケ

秘密の檻に隠れた切ない恋の物語

ネタバレ
2021年8月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 好きな作家さんで、今回は上下巻の美しい表紙絵が印象的な吸血鬼のお話。
今まで目にした事のない世界観、構成になっていてとても読み応えがあり面白かったです。

人間同士であればそれはごくごく普通の恋の話で、想い、想われ、幸せを噛みしめる事が出来るのに。
ままならない想いに胸が詰まる異種族の切ない恋の話が綴られます。あまりネタバレせずに読んだ方が楽しめますので少しだけ。

良家子息の集う寄宿学校の代表監督性を務め皆の憧れの的のジーンと1年学年トップの奨学生ユキが主人公。前半は寄宿舎で起こる吸血事件の謎をメインに展開し、上巻後半から一気に話が動きます。否応なしに本能を引きずり出される恐怖、ただ、愛しい、それだけなのにこんなにも苦しい、という不条理にただただ胸が痛みます。そして主人公たちとは別の2人のお話も、それはもう物凄く苦しく切ないのです。一つ一つ振り絞るように吐き出される言葉に、溢れ出る涙に、目頭が熱くなります。3組目のお話もまた然り。

ユキの誠実さ、ジーンの覚悟、決して諦めない彼らの物語の結末、とても満足でした。
愛に満ちた描き下ろしも最高!
自分を愛してくれるその想いを目の当たりに出来るなんて、本当は物凄くロマンチックなこと。
それを幸せだと心から感じられるようになる未来が、彼らみんなに待っていますように。
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