ルックバック
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ルックバック

藤本タツキ

凄い作品!全ての漫画好きに読んで欲しい

ネタバレ
2023年10月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 漫画家の半生を描いた藤子不二雄の「まんが道」
漫画家になること、漫画家でいることを描いた小畑つぐみの「バクマン」
2つの大作をそう捉えるとすれば、本作は『マンガを描く人の性(さが)』の部分に照準をあて抽出して描いたのではないだろうか?

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前半を読みながら感じた事を羅列してみると、→→→
・“ストーリーを作るのが得意な人”と“絵(背景)が抜群に上手い人”が、まだ子どもの時に出会った奇跡。(尊敬←[羨望]→嫉妬)
・側から見れば無意味で地味と思われても描かずにはいられない衝動。
・2人で描くことの楽しさ。
・描き上げる達成感と認められることで得る至福→続ける原動力。etc.
→→→
漫画を描き続けるということは、強い「好き」の持続と、折れずに支え合うチカラと、それなりの褒賞が必要なほど困難で険しい道なのだ。
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「重大な事件」が起こる。
京アニ事件を彷彿させながら、狂ってしまうほど「描く」ことを突き詰めた犯人の哀れと愚かさを感じる。絶対に許せないあってはならない本当に悲しくてどうしようもない所に行ってしまうまで、誰しもが描くことに囚われる可能性がある事実だ。

主人公の脳内で「if」の物語が流れる。深い悲しみの中で、もしも…と振り返っている。
そのifでは相方の命は救われても、2人で頑張った楽しく充実した青春は無い。ストーリーを作るのが上手いプロの漫画家でも両方取りは出来ない絶望。
と言うか、絶望ですら【ネタ】にしてしまう作家魂。それが痛いとか悲しいとか思ってしまうのが凡人の限界で、魂を削って「描く」人の凡人には見えない高みに感じた。
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さてタイトルはlook backである。しかし最後はdon't look backで締めている。
本編1ページの黒板にさりげなくDon’tと板書されていたり。最後の4コママンガのツルハシだったり。漫画は黙々と描き続けるのだ!とかいろいろと繋がっている。
またたくさん描き込まれている作品のオマージュから、作家としてインプットし続けている姿勢を伺える。
藤本先生は本気で描いている本物の漫画家だと改めて感動した。存在が感動に繋がる人を偉人と呼ぶのかもしれない。
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