ヒーリングパラドックス 【電子限定特典付き】
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ヒーリングパラドックス 【電子限定特典付き】

昼寝シアン

執着と不穏がもたらす不安定さがクセになる

ネタバレ
2024年12月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ ずっとレビューで1位を独占するのも分かる、激重執着攻めと、ノンケ社畜リーマンの攻防を描く本作。
何が面白いのか、というと、2人の関係性の変化、異常と普通の境界が曖昧になってくるカズマのゆがみがナオトと読者を侵食する感覚、ナオトを独占したい、というだけではない感情が見えたかと思うと、不意打ちにやってくるカズマの独占欲とその暴走ぶりがもたらす不穏さと不安定さが、妙にクセになる感覚にあるのではないかと思う。

カズマとナオト、2人の関係性の変化は、出会ったときに、健全な魂は健全な身体に宿るを絵に描いたかのような、真っすぐな野球少年のナオトと、そのナオトで性癖をこじらせたカズマ。
社会人になって再会したときには、野球を辞め感傷的な気持ちをごまかしながら生きてきたナオトに対し、下剋上のように外観も社会的成功も上にいるカズマ。けれど、拗らせてきた思いでナオトを自分の手と身体で陥落させて、ナオトが心から自分を求める日を待つ姿が、欲望にまみれていて、凄くゾクゾクする。
薄々、カズマの自分に対する愛情や束縛がヤバイものだと感づいているのに、限界社畜だったナオトが、カズマの欲や愛情を独占していることで味わう優越感に心地よさを感じていくのも分からなくはない。でも、思わぬ言動で不穏になるカズマとビビったり興奮したりするナオトに「それ完全に〇トーカーのソレやん!」とツッコミを入れながら、純愛のかけらを探して、カズマの行動を自分の中で合理化しようとするナオトと、それに共感しかける読者の自分。
でも、ナオトが思い起こす幼い頃の天使のようなカズマの姿は、完全にナオトの主観を通してみた姿。カズマ自身は、もっとナオトに触れたい、いつか自分のものにしたいという、欲にまみれた感情に溢れていたわけで。そんな、元々が善良なナオトが自分の主観に合わせて理解しようとするカズマと、実際のカズマの埋まらないズレが、いつまでも収まらない不穏さを生んでいる。

そんな風に、カズマを自分が理解できる存在にしようとするナオトが、カズマの不穏な感情を内在化させるにつれて、普通と異常の境界が曖昧になり、むしろ一体化して吞まれてしまった方が幸せになるんじゃないか?と、自らカズマの沼に嵌っていく姿に自分の中の境界まで歪む気がしてゾクッとする。筋肉美、表と裏の表情、激しい交合のシーンと、絵で語る画力も抜群。驚愕の読み応え✨1位も納得
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