東京-臨界点-
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東京-臨界点-

ハル

臨界点を迎えた想いとその結末

ネタバレ
2025年7月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ IQ値測定範囲外、ギフテッドだった幼い神宮寺にとって家庭は地獄、図書館が天国。
頭脳は桁外れでも情緒や心の部分を養われることがないまま成長し、初めて自分のものにしたいと望んだのが恭平。近くから遠くからじっと恭平を観察し続け、その心の変化を一瞬でつかんで絡めとっていくさまは獲物を狙う鷹のようにみえるけど、きっと彼自身それらすべてが愛ゆえだということに全く気付いてない。

一方自分自身でいっぱいいっぱいの恭平も神宮寺の心や意図は汲めないまま、目的を達成した後に関わりを絶ってしまう。あまり詳しく語らないで心情を想像させるので、チョコのシーンは特にグサッときました・・蓮と同じように恭平も傷ついている。何重にも罪を犯す毒親に腹がたつものの、愛を知らないからこそ孤独な神宮寺の魂に共鳴できたのかもしれません。
そして神宮寺の存在が恭平の中に何も残さなかった訳じゃないんだなというのが後の劇的な展開で表現されていて、いやほんとにこのプロットすごいなって何度も思いました。

愛を知らない2人が初めてそれを感じた時の気持ちってどんなだっただろうか・・免疫のない大人が麻疹やはしかにかかると大変だけど、免疫のない2人が初めて感じた愛ならばそれはとてつもない幸福感で満ちていてほしい。

最後に3CPの全てがつながる結末は興奮しました。その先はいよいよ!と最大限匂わせて終わるストーリーに、ページの先がないか何度も進んでは戻って確認してしまいました。読者に委ねる形で終わっていますが、いつかどこかでこの先のお話を読ませてほしい!と切に希望いたします。
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