紙の舟で眠る【単行本版】
」のレビュー

紙の舟で眠る【単行本版】

八田てき

本当に恐ろしいものは何かを考えさせられる

ネタバレ
2025年7月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 世の中で一番恐ろしいのは死神でも呪いでもヒロポンでもなく、生きている人間でしたというお話。
本牧のチャブ屋崩れが序盤の舞台だったり明らかに昭和の某文豪の最期をオマージュしていたり冒頭の鉄道事故が物語の最重要キーだったりと、個人的に滾るエピソードが多くて没入感がありました。戦後の国鉄三大ミステリーとか大好きなの、敗戦国の闇しかなくて。
こんだけ詰め込んだら取っ散らかって収集つかなくなりそうなのに、2巻以降の終盤に向けた伏線回収で物語の奥行きと厚みをマシマシにしながら最後までダレない疾走感のある神展開に作者様の力量と熱量とセンスを感じました。
本作にピンと来なかった方は横浜のチャブ屋や黄金町を代表とする赤線、青線の歴史とか民俗学とかこれを機に少し気にしてみると人生の引き出しと話のネタは増えるかも。もちろん鉄道事故史も。実際に進駐軍の信号無視トレーラーと衝突した鉄道事故があります。
個人的な感想でアレですが久しぶりに昼から野毛飲みしたくなりました。少し京急側に歩くと本作序盤の舞台となった雑多混沌殺伐とした街並みを令和の現在でも肌で感じることが出来ます。
いいねしたユーザ11人
レビューをシェアしよう!