穢れのない人
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穢れのない人

虫飼夏子

美しくも悲しい対比

ネタバレ
2025年8月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ 目を背けたくなるようなテーマに挑む作者様の気概にやられた単行本、それに後日譚があると知り、7巻を購入。

ラストシーンの木場を照らす光が神々しくとても印象的なのだが、これを見て、ああ、木場はようやく赦されたのだと自分は思った。
そう言えば秋鷹も、かつて同じように光に照らされている。
その時の彼の目には十字架が宿り、まるで何かを悟ったように木場を赦すようになった。

顛末は因果応報とも言えるが、とにかく木場の、悟ったような穏やかな表情が印象的。
罪を償い、それでも消えない怯えから解放され、木場はようやく自らを赦し、赦されたのだろう。
一方で、同じく罪を犯した木場の父親はどうだ?
自らの過ちを認めず、人に罪をなすりつけ、光とはほど遠い暗い部屋に閉じこもっている。

赦す人、赦される人、赦されようとしない人、それぞれの描写に深く考えさせられた。

また、子供を想い罪を犯す被害者の母親と、見ないフリをし続けた犯罪者の母親の対比、これにも温度差がありすぎて恐ろしく感じてしまった。
ただ、彼女たちはおそらく、自らの罪を後悔することは無いだろう。

秋鷹と木場の、美しくも悲しい対比が頭から離れない。

クリスチャンの方はこの作品をどう読むのだろう、自分はそうではないのでとても気になり、聖書を読んでみたくなった。
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