MW(ムウ)
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MW(ムウ)

手塚治虫

欲望の果ての破滅

ネタバレ
2026年1月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ 手塚先生こんな作品も描かれていたのか!
カラー版も同じ値段で買えるが、コミックスの雰囲気が味わいたくてこちらを購入。

とある島で起きた惨事、そこで生き残った2人の少年はいつしか神父と、妖艶な男性となっていた。
彼らの身近に起きる怪奇な事件から始まり、行方不明になった化学兵器、政府の隠蔽、在日米軍問題まで繋がる社会派作品。
性的マイノリティに対する描写もあり、当時として相当な意欲作ではないかと思う。

神父になり美知夫を悪の道から救うことを贖罪として生きる賀来、賀来が神父を辞めることへ異常な執着を見せる美知夫。
美知夫は手段として己の体も誰彼構わず使うので、正直胸くそ悪い気持ちになる部分もあったが、彼をそうさせてしまったのも、かつての賀来なのか。
残虐な犯行の数々には目を背けたくなるが、一方の存在が他方を生かしている不安定な愛の関係に目が離せなかった。
ラストは「してやった」感が強いが、バランスが崩れ今後どうなってしまうんだろう、と心配になってしまう自分がいる。

ところで、1巻では思いがけずビアズリーの「サロメ」のオマージュが登場する。
ビアズリー好きなので、まさか手塚先生のサロメが見られるとは。
突然のサロメに驚きつつも喜んでいたが、彼が挿絵をしたオスカー・ワイルドのサロメは、同性愛や倒錯的と知られていたとも聞く。
先生は作品の象徴として、この引用を行ったのだろうか。
欲望の果ての破滅が切り離せないこの物語には、読後はあのサロメが良く似合っていたと感じた。

使われなくなった兵器が戦後も人を悪魔に変えてしまうという皮肉さや、救われて欲しいと願う人が救われない理不尽。
何とも虚しくなるその容赦の無さも、この作品の魅力だと思う。
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