けだもののように
」のレビュー

けだもののように

比古地朔弥

間違いなく忘れられない作品の一つ

2026年3月25日
【期間限定読み放題】
田舎の町に東京から魅惑的で婀娜っぽい中学生が転校してくる。
「婀娜」なんて言葉さえ存在しないような中学生の中にだ。
思春期真っただ中の汗臭いような甘酸っぱい泉にポツンと一滴、得体のしれない芳醇な何かだ…。
芳醇な何かの波紋がその近くにいた人々を次々に溺れさせてゆくのだが、勝手に溺れてゆくのだ…。
芳醇な何か「ヨリ子」は何も知らず何もせず何も求めない。
勝手に溺れて沈んでゆくのだ…。

3巻丸ごと、ヨリ子の声はあまり出て来ない。
読みすすめていると、己の中の嫌悪感や貞操観念や倫理観、道徳心に直面する。
その線引きは千差万別だとすまし顔で思った自分の頭を鈍器で殴りたい。
自己を主張するために勝手に作りだした体の良い文字の羅列がヨリ子の前では何の鎧にもならないからだ。
反転、不思議なものでヨリ子に対して神聖なものを探し求める自分がいたりして。
本当に自分の勝手さをまざまざと見せつけられる作品です。

3巻まとめて非常に厳しい表現が続きます。
ヨリ子によってあらゆる欲望を剥き出しにされた人々がこぞっておぞましい。
彼女とともに居たいと思った二人でさえ常に葛藤を抱えざるを得ないだろうから。
ヨリ子は純真無垢であるとは思えないが、生まれたばかりの赤子や生きるための狩りをする動物のように、剥き出しの「生」にかなう美しさはないのだ。

壮絶なシーンがかなり多く、読み手の方の中には精神的にダメージを負うかもしれないので大々的におススメはできない。
そのため途中下車してしまう方もいらっしゃると思いますが、どうか最後までご乗車ください。
エンディングをむかえても尚、自分一人の思いですらままならないという事をかみしめてしまうのではないかと思います。
しかし記憶に残る作品であることには変わりないと思っております。

是非。
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