同級生の恋人と心身共に満たされるお付き合いをしていた男が、たった一つの心配事に気が付いてしまう。出会いから思春期の葛藤を描いたお話。
五月と藍理の幸せな日々。そこに横たわる一つの不安が表面化し、それを乗り越えていくお話です。藍理は兄に特別な感情を持っていたけれど、自分に真っすぐに気持ちをぶつけてくる五月と付き合います。そんな藍理の葛藤がとても上手く描かれていると思いました。雄一のことが好きでも、どうにも出来ないことが分かっているし、気持ちを伝えたいとか分かってほしいとも思っていない、身動きの取れない状態に苦しんでいました。そんな日々に明るい希望の光を差し込んだのが五月で、そんな彼に惹かれ、彼と前を向いて付き合っていこうと思った藍理の気持ちにも嘘はなかったと感じました。だからこそ雄一への気持ちには蓋をしていたのに、バレてしまったことで藍理は自分の気持ちを見つめ直すことに。最悪の展開だったかもしれないけど、この出来事を乗り越えて藍理と五月はより深く想い合う恋人になったと思います。
何よりも素敵だと思ったのは、いつも明るく真っすぐに気持ちを伝え、藍理を想い続けた五月の思いの強さです。ブレることなく、深く思ってくれていた五月が側にいたことが藍理にとって一番の幸せだと感じられました。最終的にとても幸せな結末が迎えられて良かったと思います。