お伽噺BLとでも言いましょうか、美しい絵本の中に入った様な気持ちになります。精霊や人魚、一角獣など幻想の生き物が暮らす、まさにファンタジーの世界。生け贄として差し出された太郎に情が湧き子育てしちゃう心優しい狼男のウル。マナーや教養を身に付けさせ、美味しいゴハンとたっぷりの愛情を与えて大切に育てる。それは太郎が大きくなったら美味しく食べる為の下ごしらえだと言い、太郎も美味しく食べて貰える様にとボディケアは念入りに… という不思議な関係。生け贄としての立場を理解していて「食べないの?」と何度も聞く太郎。この「食べる?」「まだ食べない」の問答は太郎の成長で違った意味を持つ様に。「生け贄」のもう一つの意味を知ると、自分好みに育て上げる光源氏と紫の上の様な関係性にも見える… 少年特有の色気と誘い気な様子は無自覚とはいえ、ウルには甘い毒。手放したのは太郎に選ばせる為だったのかな?人間界で生きるか、自分と生きるか。太郎の幼少期は純粋無垢なキョトン顔でも良かったですが、成長するにつれ美少年に脱皮して欲しかったな。森ではウルに溺愛されて守られて平和に暮らしていたけれど、人里で色んな経験を積んで成長した顔になって再会し、そんな太郎にドキッとするウルを見たかった。大人になってからもあの風貌だとショタ臭が強くてキュンが無いんですよね… ウルは素敵だけど。
森の不思議な力なのか太郎が10歳分?成長する間に100年経っていたと言う浦島太郎的な設定。ファンタジーだからそれはOK!ただ、太郎が生け贄にされた時には誰も髷を結っていないから、少なくとも1868年の明治元年。(断髪令は1871年だが) 猟銃も持っているし。そこから100年後と言うと1968年の昭和になる。1964年に東京オリンピックがあり、高度成長期に着物姿で生活し、袴姿の女学生とはどう言う事?明治~大正時代の様な描写がどうも解せない。仮にそうだとしても男女共学が認められたのは1947年以降、20円切手は1966年以降だし??太郎の身の安全を考えて平和な世の中になるまで森に置いていた事を考慮すると、忌まわしい風習が無くなり、関東大震災や数々の戦争など不幸な時代が終わりを迎えた、やはり戦後だろう。江戸時代~明治大正期 or 明治~昭和どちらにしても時代描写がおかしいのが気になる。P.170のビルは幻ではなく、あの村も第2のファンタジーなのか?…ま、それはさておき 美しい絵の美しいお話でした😊