祖父の店舗兼自宅を引き継いでカフェを一人で切り盛りしている泰央と世界中を飛び回っているカメラマンの遼輔。高校からの付き合いで、言いたいことを言い、やりたいようにやって一緒に暮らしている二人。
遼輔の誕生日にケーキを作って待っていた泰央をすっぽかしてしまっても、「おかえり」と言って「久しぶり」と応え、遺恨を残さず暮らしていける心地好さが伝わってくる。
でも、同性と生きていくことの困難が降りかかり、人は一人で生きているわけではないという事実に真っ向からぶち当たる。
作者さんの絵柄は癖があって馴染むのに少し時間がかかるけれど、すっきりと美麗な絵柄でない分、泰央や遼輔に血が通い、物語がとてもリアルに感じられる。
ただ、好きな人と愛する人と一緒に生きていきたいだけなのに、同性同士であるだけでできないこと、やれないことがあまりにも多く、異性同士だっただけで許されるなんて不条理だとつくづく感じてしまう。
作者さんのpix○に二人の高校時代や泰央が祖父の店を継ぐ話などが載っていて、そちらも含めて前後編で読んでみたかったなと正直思う。ケーキで始まりケーキで終わるのも面白い。