ヒロインはもちろん、ヒーローも可愛げがあり、応援したくなってしまいます。男性側が主体で物語が進みます。
ヒーロー(騎士:子爵五男ベルナール)は名前の意味が「熊の様に強い男:熊男」であり、ちょっと恥ずかしい思いもしてきました。ヒロイン(伯爵令嬢アニエス)との出会いは5年前、自己紹介の挨拶だけで、目を細められ、理不尽に蔑まれたと感じ、印象は最悪になります。
2度目の出会いも絡まれていたところを助けたのに、睨まれ、3度目の出会いも睨まれます。ゆえにヒーローの印象はますます悪化。そして事件。ヒロイン父が汚職で投獄され没落。社交界の花であったヒロインの行方が噂されるばかりになります。
そんな中、4度目の出会い。ヒロインがヒーローを訪ねて来ます。ヒーローからするとほとんど関わりのなかったヒロインから、さらにまた睨まれ、気に障ります。今は生活に苦労していると聞き、嫌味で「使用人として雇ってやる」と申し入れますが、もう修道院に行くしかないと追い詰められていたヒロインにとっては、願ってもない救済となります。まさかヒロインが本気で雇われると思っていなかったヒーローは戸惑いながら屋敷に連れ帰り、ヒロインの使用人生活がスタートします。
しかしながらヒロインは国王の不興を買っている罪人の娘であり、不埒な噂の的でもある…使用人として、結果的に匿っていることは秘匿されます。
ヒロインを匿っていることにより、こじれれば騎士の地位を失いかねませんが、弱きを助ける騎士道に従い、リスクはあえて受け止める男気をみせるヒーローです。
それから結婚を迫る母親を抑える為に、ヒロインに婚約者役を頼む事になります。気難しい母親にたちまち気に入られ、早速婚礼衣装の準備まで始められ、焦るヒーローでした。
ヒロインは控え目でおしとやか、元々ヒーローに好意を抱いていましたが、立場もあり積極的な意思表示は出来ません。ヒーローの方も朴念仁で恋愛に不慣れ、ヒロインの事は気になるし、女性的魅力に惑わされ、度々赤面しますが、自身の恋心を自覚するには遠い。ふたりとも純情可憐で、とっても可愛い。
ただヒロインを巡る不穏な動きがありヒーローも巻き込まれて騒動となります。それでもヒロインを見捨てたりしないのでした。けしてハイスペックではない、持つものがそう多くないヒーローがすべてを賭けて愛する女を守る…その心意気が魅力です。