当方、大学で哲学を学んでいる学生です。
作中で2人が翻訳しているのは、デカルトが愛などの情について論じた『情念論』の一文ですね。
始めは正直、物語の彩りとして哲学を使っているんじゃないかと斜めな見方をしていましたが、最後まで読むときちんと哲学の「善く生きるとは?」という問いに向き合いながら、作られた物語で、非常に奥深さを感じる素晴らしい作品でした。哲学専攻に刺さる哲学者の好みの話や小ネタも非常に面白かったです。正孝がこの性格と人生観でニーチェ専攻(全ての価値を否定する考え方が強い)でプラトン(彼岸に価値の源泉を見出す)あんま好きじゃないの解釈一致です!!!
ただ、夢の語り方として教授になりたいとはあまり言わない気がします。研究者になりたいと言うのが一般的です。教授は研究者になれてもその一部しかなれない一番上の立場なので…。一方で研究室の様子が結構、リアルで驚きました。作者の方の経験なんでしょうか、取材力なのでしょうか。
この作品をきっかけに哲学に興味を持ってくれる方、更に言えばその哲学の中でクィアについて考えているクィア理論や日本哲学にも触れてくれる方がいれば、嬉しいなぁ〜と一読者ながら思います。
最後の、友人と恋人の違いの話もよく考えていることなので、読むことができてよかったです。