オメガバースでこんなにも理性にフォーカスを当てた作品を今まで寡聞にして知らなかったので、本当に本当に感動しました。ずっとこの視点を求めていたので。
オメガバースって人間の性欲の醜く奔放な本能を肯定しようという観念を含む世界観設定だと思っているんですが、でも人間って本能だけで生きてるわけではなくて、世界観が本能の作用を増幅させるならそれ以外の部分(例えば理性や社会、生活の部分)も釣り合うようにその世界はできているはずなんですよね。それが奴隷制であれそうでないものであれ、世界として人権の部分をどう処理するかという部分の濃度は本能の濃度と相対しているはずなので。
この作品はそこをものすごく真面目に考察していました。オメガバースという世界で現実の我々と同じような社会に生きる個人がどのように感じながら生活するのか。特にアルファ側の恐怖感や閉塞感が拾われていたのと、「噛む」ことの暴力性を取り扱っていたのがとても真摯だなと思いました。
違う常識のある世界を描いたものとして、かなり高度なSFなのではないでしょうか。大好きな味でした。
それはそれとして、キャラクターの面でもめちゃくちゃ刺さりました!!! 私は、真摯でやや臆病で力の強い成人男性の攻めが、大好きなので!!!!!(大声) そして支配を悪とし安きに迎合しようとしない理性の強いキャラクターが本当に大好きなので、出てくるキャラクターが全員美しい魂をしていて素晴らしかったです!!!!!
全員幸せになって欲しい。カバー裏で強くそう思いました。素晴らしい作品を世に出してくれた作者先生と編集部に深く感謝します。