嫌い、大嫌い、愛してる。
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嫌い、大嫌い、愛してる。

ARUKU

消耗…魂持っていかれる…

ネタバレ
2021年9月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ フォローしている方のベスト5に入る作者さんということで(他のフォローさんもハマっていらっしゃいましたね)、今回の出版社クーポンにていくつか読んでみました。
まず、安心して読めそうな(ハッピーエンドぽい)『無恋愛紳士』と『毒王は棘姫を寵愛する』を読んで、「わ!面白い!」とARUKUワールドに引き込まれ、次にハードルの高そうなこちらを読みました。
最初に申しておきますと、作品として素晴らしいなと感じても、例えば、今回の凍月のような人は、「奏が許しても私はあなたを許せない」という気持ちを拭えず、☆5にはできないんです。今回もそんな気持ちが渦巻いて胸を悪くしながら読み返して、最終的に☆5を付けました。本当に消耗しました…。そして、クーポン対象のARUKU先生作品全買いです。
凍月について…、どこまでも残酷で身勝手で、あなたについては何も言葉が出てこない。それでも、描き下ろしの2人が、凍月の見る夢ではなく現実であればいいと願ってしまう。
☆5にできた理由は、奏の心情に因るところが大きい。孤独で不幸すぎる彼が(だからこそ)、絶望を増大させた凍月に対して複雑な気持ちを抱えていくことが、無理のない揺れを通して描かれていて、作品として白々しさを感じない。根底にある復讐心が生きていて、彼の壊れた心と血を流すような涙には、言葉を失う。しかも、復讐が自分が死ぬこととというのが…どこまでも発想が自己犠牲過ぎて凍月との対比が痛々しい。そして「白痴」の使い方に唸る。彼には「戦い続けてね」と言うのか…。ここで思い出すのか…。「愛のために」と…。
どうして出会ってしまったのかと思わずにはいられない。でも、出会ってしまった2人に何も言えない。そう、何度も書いていますが、付け入ることができないんです。
そして、これは2人だけの世界ではなく、印象的な女性が登場します。
奏の同級生璃子と凍月の妻、そして奏の母。璃子は本当は奏が好きだったのではなかろうか。母への接し方を見てそう思ってしまう。そして、妻への凍月の最後の言葉は、あまりにも残酷だった。どこまでも、凍月の自己中心性が際立つ。あぁ、本当にすごい。フォローさん、本当にありがとう。
ただ、私はこういう感想を持ちましたが、低評価の方の思いもよく分かりますし、万人受けはしないことが明白です。様々な思いあふれるレビューは、本当にありがたいなと思います。
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