俺がおまえに恋してやんよ
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俺がおまえに恋してやんよ

ARUKU

きゃわきゃわ

ネタバレ
2025年4月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ ホタルくんの生態がめちゃくちゃきゃわわです。ラップで包んだ塩むすびとお菓子が主食で、サメ型の寝袋兼部屋着でボロアパートなりに暖をとる。やることなすこといちいち可愛くて、人が良すぎる正直者。そして他人からの攻撃にも自分を責め、優しさと共感で返すような、弱くて自己犠牲が強い人。
恋してやろうかの刑部君も、一途な男のきゃわわです。努力家で、なんでも出来てカッコよくて、ホタルくんをずっと優しく見守っている。今日の雨は綺麗だねと言うホタルくんに、勝てないなと思うような心の持ち主。二人の関係は、とても綺麗で甘い。

かわいらしくて明るい語り口だけど、若者の寂しさがひしひしと伝わってきます。ルッキズム、他力本願、自己肯定感の低さ。優しい性根が更に自分を責めたて、追い討ちをかけてくる家庭の事情。疲弊していく彼を心配してくれる人はいても、踏み込んでまでくる人はそうそういない。何だかとても、足元に転がっていそうなリアル。

ぽっかり空いた人生の落とし穴を淵から覗いているようなホタルくんですが、頑張っていてもその方向が間違っていては落ちる未来もあったはず。傷に向き合い努力を始めることで好転しますが、やはり自己犠牲の性分が出てきてしまうのはとても悲しい。

弱さも含め、ありのままを受け止めてくれる刑部君はホタルくんのヒーローで、窮屈な世界で戦っていた刑部君にとっても穢れのない笑顔で全肯定してきたホタルくんはヒーローだった。拗れてしまったとしても無敵だった頃の記憶は温かく、鮭の川上りになぞらえた人生の語りがとても心に残りました。

刑部君の無償の愛がとにかく深くて純情で、読後の心の大半を持っていかれてしまった。物語に出てくるボサツファイブよのうに、最後まで傷や痛みを見せずに戦うかっこいいヒーロー。ホタルくんを愛し、助け、笑顔が見たいからと奔走する、智慧のある純情な男。不安だからと彼女を欲しがったホタルくんに、ちゃんと愛して欲しかった一途な男。
結局おちんをどうにかすることはありませんが、ドアから覗く二人が可愛かったからいいかな。とても綺麗な終わり方でした。

ちょっと、他の方のレビューで張り紙に気付いたら泣いてしまった。家族も、枷なだけではない。うん。感謝のいいねポチ連打(気持ちの上で)。
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