赤松とクロ
」のレビュー

赤松とクロ

鮎川ハル

こういう作品からしか得られないものがある

ネタバレ
2025年7月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 沁みるBL。大事件は起きないけれど心の中はそういうわけにはいかない。
ノンケとゲイのじんわり進んで行く恋物語。ノンケ赤松くんのおおらかさと広島弁が、キュッと構えたクロの心を溶かしていくのがすごく良かった。心が穏やかになれます。

以下ネタバレです

友達と一緒にごはんを食べてるだけでも相手がどう思っているか、周りにどう思われるかつい気になってしまうクロの日常が切なかった。なんてことない日常の中にちょっとした生きづらさがあって、ノーマルの人間であれば考えることがないような些細なことも彼らにとっては小さな棘のようにチクチク刺さってくる。
これが積み重なれば初めから諦める癖がつくかもしれないし、いろんなリスクを予め避けてしまいたくなる気持ちにふと共感してしまいます。

そんなクロを自前の明るさとおおらかさで「そがいなこと気にせんでもええわ」とばかりクロを包み込んでいく赤松にはきっとクロでなくても惚れてしまう。
赤松もすごく大人なわけではないけれど、自然体で愛されて育ってきた人の底力すごいなと思いました。ノンデリというほどではないけど、それ口にしちゃう?な素直さも魅力のひとつ。個人的にはひねくれの先輩も嫌いじゃないです。きっと彼はリバいける・・

淡々と続いていくようで微妙に変化していく2人の関係とその空気感がじんわり心に響いて、なんだかめちゃくちゃいい作品だな~って思える単館シネマ系の名作でした。
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