君は春までぼくのいぬ 【電子限定特典付き】
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君は春までぼくのいぬ 【電子限定特典付き】

劣情

青く匂い立つ紅色の熱情

ネタバレ
2025年7月24日
このレビューはネタバレを含みます▼ 激しい情熱の青さが眩しい、高校生のオメガバース。
パワーバランスが絶妙で、なんとも可愛らしくて推せるふたりです。

生まれ持ったものに振り回されながら、自分を受け入れ成長していく思春期。そこにαやΩが条件として加われば、問題は更にデリケートなものとなり、周囲の対応はより慎重さが必要となる。
御園家のそれも、藤波家のそれも、故意ではなくとも少年の心に影を落とし、大きく影響を与えてしまった。

変わらずにいたかったという言葉に込められた藤波の複雑な心情は、たとえ賢く強い彼だとしても少年が抱えるには少々重い。バースからは逃げられない事実と、兄妹の手を引いて逃げた母のことを思えば、きっと尚更。
消えかけた藤波の身体も心も救ったのが、運命であり犬となってもなぜか品を損なわない御園の人間性。上に立つ者ゆえの傲慢さはあるが常識を持ち、強引だけど待てもできる。育ちが良く素直で忠実、そして実行力を持つ男。

感情の狭間を惑う不安定さと、それに足掻く青さが、会話と仕草からひしひしと伝わってきます。彼らの放つ真っ直ぐな言葉と、本能と欲望と恋の入り混じった熱情の魅せ方がとにかく印象的。

お互いがお互いを変え、後半は二人の魅力が倍増。ツンなところもダサいところも全部が可愛くて、かっこいいと可愛いが交互に顔を出してきます。
情熱的な絡みやお決まり事のアレコレも、どこか可愛らしいのは彼らならでは。重い部分も重くなり過ぎず、その辺りのバランスもお見事。

ラストもとても綺麗で、紅雄の涙が可愛すぎる。青の姿も美しい。その数年、どうか何処かで見せていただけないでしょうか…。
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