奈落の星
」のレビュー

奈落の星

豊田悠

天才型の物書きに執着する美形若手作家

ネタバレ
2025年7月31日
このレビューはネタバレを含みます▼ ピックアップで目に留まった作品。舞台が大正時代ということですぐに惹かれ、まず試し読み。
後から気付いたのですが、“パパと親父のウチご飯”、“30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい”を描かれている作家様でした。

時代は大正、小説家を目指していた烏丸すばる。しかし今は書くどころか借金取りに追われる日々。そんな生活が嫌になり、練炭を使い自ら命を終えようと隣家に火鉢を借りに行ったところから、物語が動き出します。

そこでは若き小説家たちが同人誌の執筆の真っ最中。すばるの目はほんの一瞬ですが、締め切りを前に鬼気迫る彼らを動物の姿でとらえます。
が、もちろん彼らは正真正銘の人間。しかしすばるにだけ感じられた熊や猫や犬での姿、おそらく彼らの内なる性質を動物で表現した描写なのかなと思いました。

そして間もなくその場に現れたのが主催者の柳楽幻歩。若手作家の星。すばるの目は例のごとく、幻歩も一瞬だけ動物の姿で映します。それは山羊でした。
山羊といえば私がイメージするのは悪魔。まさか…!?と思いましたがその“まさか”。幻歩の悪魔っぷりはぜひ本編で。
この幻歩に見出されたことで、すばるの運命が大きく変わっていくことになるのです。

すばると幻歩、若き物書きたちが織り成す大正浪漫。作中では眩しいほどの輝きを放つ幻歩ですが、実は彼には暗い過去が。やはり順風満帆なだけでない人生はキャラの魅力をより引き立てます。
そして女性漫画のカテゴリではありますが、ほんのりとブロマンス風味を感じてしまった…。地味なソバカス眼鏡青年と王道の美形のコンビ、良いですね…!

近代に興味がある方には特にオススメ。当時の雰囲気を存分に感じられる作品です。
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