さよならタマちゃん
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さよならタマちゃん

武田一義

ネコの話ではないペリリュー作者デビュー作

ネタバレ
2025年12月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 映画「ペリリュー楽園のゲルニカー」が話題になり、気になりつつも戦争ものか…と読む前に覚悟がいるな、でもあまりにも作者武田一義さんの人生がドラマティックで何か読んで見たい。と思っていたとき、一巻もので読みやすそう…と手にしたのが本作。
 一見「ネコの話?」と思うタイトルだけれど、実はこれ作者様の実体験を元にした、精巣ガンの闘病記なんです。
 が、これが主人公の目線を通してではあるけれども、患者、医療関係者、その家族、といった沢山の人間ドラマが詰まった作品で、普通なら一巻に納まる内容ではないほどの重みと読後の充実感を感じる出来栄え。
 作者は、28歳で漫画家になりたいという思いを抱えて状況し、GANTSの奥浩哉先生のところでアシスタントとなったものの、最初の夢を失いかけていたところで、発病…。普通なら、なぜ自分が、と気弱になりそうなところ、どこか明るく病気自慢をし合う入院しているガン患者の先輩たちとのやりとりがユニーク。日常が一変する中で、気付いていなかった家族の愛、仕事仲間の愛を描く一方、抗がん剤の副作用の辛さや、死と隣り合わせの日々の中でも人が見せる心の温かさに感じ入ったかと思うと、次の瞬間命が失われる、という現実の残酷さ。

 けれどもその日々で得た数々の人との出会いの中で感じたことを伝えたい、という作者の一念が、本作に結実し、デビューに繋がったという実話自体が、実に感動的。そして、このデフォルメした絵柄も、闘病記を読む辛さを和らげるために、と作り上げたものだそうで、それが、ペリリューに繋がったのか、と思うと感慨深くて。

 客観的に自分を俯瞰しつつ、他人に対する視線は優しい。人間っていいものだな、じんわり感じる読後感が秀逸。

 インタビュー記事で受けた印象通り、いい作者様だなぁとしみじみ。よーし、今からペリリュー、読んできます!
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