迷エル黒羊【単行本版】【シーモア限定特典付き】
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迷エル黒羊【単行本版】【シーモア限定特典付き】

椛嶋リラコ

黒い血と天界の残滓

ネタバレ
2025年12月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 椛嶋ワールドすごい!BLなのにその枠を超えてる作品。290頁 ページをめくると産業革命で賑わう大英帝国の時代が開く

BB〇制作の重厚な映像を彷彿とさせるガス灯と石畳の街並み。スリーピースにボーラーハットの紳士たち。巡査アラン・クランシーはイン靡な夢にうなされている。彼を抱きしめるのは同僚のジャレット・ルシアン(通称:ジェリー)ギリシャ彫刻のような面立ちの、胸に秘めた相手だった。

偽りの仮面で夢をみせているのは天界から堕ちた天使。糧と選んだ男を夢に連れ込みセイを貪る悪魔。黒い羽を広げてアランの日常に現れる。

正義感つよく善良なアラン。体は贋のジェリーに翻弄されても心はジャレットだけのもの。彼をとらえた瞳が恋慕う喜びにきらめいている。

悪魔は冷酷かつ残忍。その悪魔が巡査を守り、自らを危険にさらす。哀しみに暮れるアランを受けとめるシーンは声にならない歓喜の遠吠に。偽りの仮面はしだいに重くなり、剥がれていく過程は息を忘れてしまうほど巧い(ああ、語彙が溶けていく)悪魔は元天使。その残った資質が無垢な魂を求めようとしている。後半はアランに不条理な試練が待っていた。

妖しい悪魔に引き込まれたのはアランだけじゃない。黒い翼が遠ざかるような締めくくり。空気が震えている。

(小さな呟き:悪魔の黒い爪。オシャレで良く目にするけど生気が感じられなくて好きじゃなかった。今回は違う。黒真珠のような艶でくぎづけになった。美しさに、隙がない)
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