絵はあまり好きではありませんでしたが、ストーリーが本当にすてきです。表題作ともう一編入っていて、あまりにも表題作が良かったので、一冊丸々それでお願いしたかった。消しゴム工場に勤める口のきけないねずみちゃんと、そこの御曹司の悠馬の恋物語。悠馬の友人の柏原がいいポジションにいて、話がおもしろくなっています。ねずみちゃんは自分に自信がなく、傷つきやすくて、一途な子。悠馬は傲慢で思いやりがなく、自分の道を邁進している自信家。全く接点のない2人が「出会う」ところからがおもしろいのです。人魚姫をオマージュしている作品ですが、私はどちらかというと「このガラスの靴を落としたのは誰?」と王子が姫を探すシンデレラをイメージしました。とはいえシンデレラと違って待っているだけで王子は来ないし、そもそも王子が人として未熟だし、でもそこがいいのです。完璧な2人では惹かれ合わなかった、互いのさみしさを温め合うような関係に胸が熱くなりました。