配信されてから怒涛の如くレビューが増えていき、早く読みたい! という気持ちがこんなにも沸き上がる作品は初めてかもしれない。そして、その期待を裏切らなかった作者さんと作品に感謝しかない。
高校生のときに優しく慰めてくれた宝と同じ大学に入学した大進。再会した当初は塩対応だった宝だけれど、真っ直ぐに自分を見て傍にいたいと言う大進を邪険にしたりせず、絶妙な距離感で世話を焼いてくれる宝にこちらまでドキドキ。
福岡から上京した大進をよくある田舎者みたいに描いていないのも凄くいい。初めての東京に少し気後れしてしまう感じや、宝の隣にいても浮かないように洋服に気を遣ったり、警戒心はきちんとあるのに優しさと下心の違いに疎かったり、大進の人の良さと危うさの描かれ方が上手だなぁと思わず唸ってしまう。
宝と大進の育み愛だけでなく、友人たちとの関わりや家族の話も自然とストーリーに組み込まれ、嫌な人は殆ど出てこないから気持ちを削がれることなく読み進められるのも良い。
書き下ろしの宝と大進の姿に愛おしさが更に増し、完結表記が本当に寂しい。可能ならば続編が読みたいと心から思う。