はみ出しもののインキュバスと欲望に鈍感な青年がかけがえのない関係に発展していくまでをコミカルに描く、ファンタジックなラブストーリー。
インキュバスといえばむせかえるような色気を纏った美男設定が定番だと思うのですが、この作品に登場する美男=リリンの正体はなんと、ケサランパサランみたいな毛玉なのです。お目目も独特だしモフ好きにはたまらない形状をしているのだけど、同族からは醜いと忌み嫌われておりそのため自己肯定感がどん底であるという珍しいタイプのインキュバス。それが所構わず毛玉に戻ったり泣いたり笑ったり鼻血を出したりと縦横無尽に暴れ散らかすものだから、たとえ色っぽいシチュエーションは2巻までおあずけだったとしてもそれだけでもう癒されてしまっちゃうところがあります。
受けのアシャムもリリンに負けじと可哀想なやつで、親の顔も知らずに育ち誰にも頼れない境遇だった関係上、性欲うんぬんの前にとにかく自らの欲求にとことん疎い。食べられるならなんでもいい、寝られるならどこでもいいなどと執着を見せない世捨て人のようなアシャムに拾われてしまったリリンはさあ大変。ほとんどついばむようなキスだけで1巻をまるまる過ごすこととなるのです……
そんなどこか足りない2人がお互いの望みを叶えようと西へ東へ旅をする、笑いとラブと希望に満ちたとっても素敵なお話でした。
不意なノリツッコミなどのギャグセンスも非常に素晴らしいので、その点も必見です。