親愛なるジーンへ
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親愛なるジーンへ

吾妻香夜

今の若者とかつての若者へ贈りたい物語

ネタバレ
2025年5月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 本当に力のある心を動かされる作品はレビューを書くときにそれを強く感じます。感情に言葉が全く追い付かない。読めば読むほど冷静になるどころか涙があふれてきてしまい、この作品実はしばらくの間レビューが書けませんでした。長文です。

アーミッシュという特殊な環境で育ち、そこを愛しながらも周りの人との間にある少しの違和感。アーミッシュであることを選ばず都会に出てきたものの何者にもなれない自分に幻滅し後悔するジーン・・どれほど絶望して心細かっただろう。
そんな都会でトレヴァーに出会えたことがジーンにとって最大の奇跡でした。そしてそれはトレヴァーにとっても同じ。トレヴァーはジーンを救い上げてゲイである自分も救われた。
どの時代のどこの国であっても残念なことにマイノリティは特異な目で見られ受け入れられないことは多い。
ジーンは将来に希望や不安を抱えながら年上の男性に恋をするどこにでもいる青年だけど、ジーン自身が故郷を捨てた自分を赦せていない。赦しって難しいんですよね。他人より自分を赦すことが何よりも難しいし、積もった後悔からはなかなか解放されない。大人になるとよくわかります。

そんなジーンにあっという間に惹かれるトレヴァー。与えられるものは全て与えたかったし、喜びも悲しみも共有したい最愛の恋人。それでもジーンをカナダに送り出すことを決意していて・・教会でのあのシーンは嗚咽するほど泣きました。

そして2人が離れていた時間はとても大切だったように思います。あのまま一緒にいることを選んでいたとしたら、トレヴァーにはジーンの可能性ややりたいことを諦めさせたという後悔が残り、ジーンは故郷を捨ててまでやりたかったことを諦めた自分をまた赦せなかっただろうと思うんです。

今若い時間を生きるジーンたちもみんなジーン・ウォーカーというかつての青年の生き方に何かしらの影響を受けて、自分で自分の人生を選んでいる。それだけでもジーンのやってきたことには意味があるし、そうさせたトレヴァーの器と愛の大きさを思い知ります。2人は永遠に一緒に幸せでいられると信じられる結末でした。
長いレビュー失礼しました。素晴らしい作品をありがとうございました。
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