イグナートの花嫁【単行本版(シーモア限定描き下ろし&特典付き)】
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イグナートの花嫁【単行本版(シーモア限定描き下ろし&特典付き)】

もりもより

ひたすら繊細で美しい

ネタバレ
2025年5月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 高評価ピックアップで表示された作品。ファンタジー物はハマる作品とそうでない作品があるので、こちらはどうかな?と試し読み。
そして見事ハマらさせていただきました…!
竜の花嫁に選ばれた少年リタと、雪山の竜イグナートの物語。

キャラも、衣装も、そして動物たちも。繊細な作画と物語の世界観が見事にマッチしており、まず冒頭から素晴らしいです。
生け贄のしきたりのストーリーは王道ではあるけれど、どこまでも真っ白な雪の世界の美しさに魅了され、どんどん読み進めてしまいました。
少し驚いたのが、イグナートの性格の淡泊さ。姿は端正ながらもどこか陰があり、哀愁さえ感じます。今まで私が見てきた物語の、エネルギッシュな人外キャラたちと正反対。そこにもすごく惹かれました。
リタとイグナートの、淡々としながらも穏やかなやりとり。外は一面雪景色にもかかわらず、二人を見ているだけで心がほわっと温かくなるんです。
そしてイグナートの静かで包み込むような優しさ、どこか物寂しげな表情。リタの悲しい過去の描写も相まって、胸が締め付けられました。
しかし、リタもただの薄幸の少年というわけではない。怖い物知らずとさえ思える行動力には、時々びっくりさせられます。もし彼が自分の人生を憂うだけの不幸キャラだったら、私は絶対ハマらなかったはず。

孤独な人間と半竜が互いを想い合う、ふと涙が出てしまうような優しいお話。
二人とも、どうかどうかずっと幸せであって…!
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