蟷螂の檻
」のレビュー

蟷螂の檻

彩景でりこ

一つの物語として秀逸

ネタバレ
2025年6月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ レビュアー様方が揃って“重い話”と書かれているので最初は躊躇したのですが…。
昭和前期という自分の好きな次代設定に負け、試し読みだけでもしてみようかなと。そしてズブズブはまってしまった…!

地方の名家が舞台の物語冒頭は、どこか横溝○史作品を彷彿とさせるような仄暗い雰囲気。しっとりと湿り気があって、それがドロッと纏わり付いて離れないような…。
まず初めに、育郎母の突然の奇行に色んな意味で鳥肌。実を言うと、私が一番に心を鷲掴みにされたのはそのシーンなんです。これBL作品だよね?ホラーじゃないよね!?と思わされるほど衝撃的だったので…。
彼女が精神を病むほどのことが、座敷牢の中で行われている。それは一体何なのか。幼かった育郎はまだ知るよしもありません。
そこから徐々に始まっていく、孤独な育郎と使用人・典彦、そして妾腹の兄・蘭蔵も絡んだいびつな愛のお話…。拍手したくなるような秀逸なストーリーで、遠い時代の官能的な長編映画を観ているような気分にさせられました。
確かに物凄くヘビー…。しかし他の激重作品で耐性が付いてしまったせいか、そこまで酷く気持ちが沈み込むことはなかった。むしろたいへん面白く拝読させていただきました。
次代設定も登場人物も◎。実に深い、深すぎる物語。ストーリー重視の私が一番好みな、しっかりBLでありながらBL枠を超えた作品でした。
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